印刷媒体の衰退と新型コロナウイルス禍の影響を強く受けていた:
先ずは「グラフィック用紙」という専門語の解説をしておかねばなるまい。これは平たく言えば「印刷用紙」のことであり、その範疇には新聞用紙、上質紙(模造紙)、コート紙、中質紙(ざら紙か藁半紙)、塗工された中質紙が入ってくる。私のように長い年月我が国とアメリカの紙パルプ産業界にいた者にとっては、印刷媒体の衰退は悲しい出来事なのである。
紙業タイムス社刊のFUTURE誌22年4月18号には
「グラフィック用紙の世界的な退潮が言われて久しいが、それでも2020年現在、世界全体では年間9,000万トンを超える生産と消費がある。前年までは1億トンを超えていたが新型コロナウイルスのパンデミックにより2020年は対前年比で16%前後、数量にして1,700万トン超の減少という大幅な落ち込みとなった。パッケージグ用紙が同じくコロナ禍に遭いながら生産・消費とも+0.4%、数量にして100万トン超の伸長があったのとは極めて対照的な結果だ。
情報という、もともと形のないものの伝達手段であるグラフィック用紙に対して、リアルな物流を支えるパッケージグ用紙は世界的なパンデミックの中で、むしろその有用性が再評価されたと言える。逆にグラフィック用紙は瞬時かつ大量の双方向コミュニケーションを可能にするSNSの出現と普及により、その役割が一段と限定されるようになった」
と解説されていたのだった。
次には具体的に統計面から世界の2020年の生産量を、以下に品種別に2019年と比較してみよう。なお、単位は1,000トンである。
新聞用紙は13,255で対前年比△23.6%、上質紙(塗工紙を含む)は62,771で△12.1%、中質紙(塗工紙を含む)は15,504で△20.4%だった。グラフィック用紙全体としては91,530で△16.0%となっていた。矢張り、新聞用紙の減少幅が最も大きいのが象徴的である。
この統計を地域別にも見ておくと、ヨーロッパが27,194で△18.0%と世界全体の減少幅よりも大きくなっていた。アジアは世界最大の製紙国中国があるだけに数量は大きく46,368だったが、対前年比△13.0%を記録していた。北アメリカは12,959だったが落ち込みは△21.3%とオセアニアの31.0%に次いで大きかった。
最後に国別の生産量に目を転じると、世界最大はここでも矢張り中国で23,720となっていて、対前年比△9.7%だった。世界全体に占める率は25,9%に達していた。第2位はアメリカで11,218、前年比では△22.9%、構成比は9.4%だった。次が我が国で9,934の△20.1%で構成比は8.7%だった。4位はドイツで7,291の△14.3%、構成比は6.8%だった。5位にはインドネシアが4,687で登場し△9.6%、構成比は6.1%となっていた。
以下20位までに、インド、カナダ、フィンランド、韓国、スウェーデン、ロシア、ブラジル、イタリア、ポルトガル、フランス、タイ、ベルギー、ノルウェー、ポーランド、英国と続いていた。
参考資料;紙業タイムス社刊 FUTURE誌 4月18日号