新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

今昔の感がある我が国の経済の現状

2024-12-23 07:00:00 | コラム
回顧談でもあるのだが:

ホンダと日産の経営統合の話し合いが本格的に開始されるとかだ。今昔の感に堪えない。戦前の我が国の経済を僅かながら聞き及んでいただけに、鮎川義介氏が1928年に創立した日本産業株式会社の名残である日産自動車が消えてしまうとは思っていない。だが、そういう形になっていくのが時の流れなのだろうが、誠に残念だなと感じている。

現代人に「日本産業」が現代の日立製作所、日本鉱業(ENEOSの前身)、日産自動車の基礎だと言ったら驚くだろうか、知らなかったと言うだろうか。彼等が「戦前には凄い経営者がいたものだと受け止めるか、戦前だからこそ力量がある個人が日本の産業界というか製造業の基を築くことが出来たのだ」と解釈するだろうか。

平成や令和の時代の人たちに「戦前に芝浦製作所と東京電気という二つの会社を夫々個人が開業され、1939年に東京芝浦電気株式となったのだ」と聞かせても「それって何の事」と言い返されそうな気がして怖い。この戦前からあった我が国の電気(電機または電器)産業を代表するような会社が「東芝」になって、今日に至ったのである。

1990年代の末期から我が国の経済が新興国に圧倒されたかの気配が出てきて、一部には「経営者の劣化」を云々する声も出始めていた。かく申す私も大手企業の当時の若手から「現在の部課長級が役員になる頃には、我が社の経営基盤が危うくなる」と聞かされるようになって来始めていた。後難を怖れずに言えば「彼等の予測は誤っていなかった」のである。

ところで、話題を日産に戻そう。シャープという会社はもとはと言えば「シャープペンシル」を創造された早川徳次氏の会社で、誰もが知る電気機器製造会社にまで発展したのである。その2016年に経営状態が悪化したシャープを救ったのが、台湾を代表すると言える鴻海精密工業(FOXXCON)である。その鴻海が日産に興味を示して、買収を企図していると報じられている。「だからホンダと」という事か?

話を更に台湾に向けていこう。世界最大級の半導体メーカーのTSMC(=臺灣積體電路製造股份有限公司、英語ではTaiwan Semiconductor Manufacturing Company、 Ltd.略称:台積電)が事業を拡張すべく選んだ場所が熊本県だった。その理由が「労務費が安いこと」だったと聞いたBSフジの反町理氏は震えが来るほど嘆いたと語っていた。「これが我が国の経済の位置なのか」とショックを受けたのだそうだ。

私はアメリカの労働力の質に問題があることを再三取り上げて指摘して、その際に引き合いに出してきたことはと言えば「我が国の労働力の世界に例を見ない質の高さと均一性」だったのだ。その高い労働力の質を台湾に「安価である」と言われたのでは、立つ瀬がないのではないかと言葉を失わさられた。

UAWの質に問題がある為に、アメリカでは国産車が没落し、我が国の労働力の高質さが故に、アメリカで日本車、特に乗用車があれほど好まれて普及しているのだ。それにも拘わらず、TSMCには労働力の経済的価値の方を評価されてしまったのである。我が国のように賃金を低く抑えてしまえば、経営が悪化するという例を見せている気がしてならない。

これだけ言えば十分だと思うので、ここまでにしようと思う。だが、私は「我が国の経済を再度活性化させる為には何をすべきか」がハッキリしていると思うのは誤りだろうか。


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