昨日は、成人式。
二十歳の息子の記念すべき日だったが、息子は成人式には参列しなかった。
「だって、荒れたら嫌だからね」
平和なことが好きな息子は、荒れる成人式は嫌いなようだ。
そこで、記念に家族四人と中学3年の娘の友だちの居候さんとで、映画を観に行くことにした。
しかし、お目当てのハリー・ポッターは混んでいたので、観たのは「トロン」という映画だった。
できを星3つで表現したら、星1つ半といったところか。
要するに、普通だった。
面白いという視点で見れば面白いし、期待していたら「ハズレ」ということになる。
ただ、息子は満足していたので、良しということにする。
映画を見て、息子の大好きな焼肉を、と思いやはりお目当ての人気店に行ったら、そこも混雑。
では回転寿司にしようか、足を運ぶと「一時間待ちです」。
有名ラーメン屋も混んでいた。
苦笑いの息子が、武蔵境駅前のイトーヨーカ堂内リンガーハットでもよし、と言うので我々はヨーカ堂地下のフードコートに足を運んだ。
しかし、ここもけっこうな混雑。
ただ、息子の日ごろの行いがよかったせいか、運良く6人がけの席が空く場面に遭遇して、我々はそこに席を占めることができた。
しかし、「あら、これー!」という必要以上に大きいヨメの声。
それは、まわりのテーブルにお座りになられた方々が、思わず振り向くほどの無神経な大声だった。
ヨメの指さす先には、薄いピンクのポーチがあった。
当然、女性ものだろう。
ヨメがそれを手に取ろうとすると、隣のテーブルの上品な40年輩の女性二人組みが、「ああ、きっとそれ、日本人と外人さんご夫婦が忘れていったものだわ」と言った。
そして、もう一人が「きっと忘れたのに気づいて戻ってきますよ。それまで触らない方がいいですよ。ちょっと怖そうな奥さんだったから」と首を小さく左右に振りながら、話をつなげた。
怖そうな奥さん・・・・・?
それは、イヤだな・・・・・、そう思っていたら、ヨメと同じくらいの音量の声がした。
「それ! あたしの!」
背は小さいが、確かに目がきつくて、いかり肩をした30歳くらいの女が、190センチはあろうかという白人の男を引き連れて、立っていた。
そして、「中を見なかった!?」と、厳しい口調で言った。
わけがわからない私たちは、声も出せずにただ小さくうなずくだけだった。
いつもは、このような状況に強いはずのヨメも、相手の声の圧力に負けて声を出せずにいた。
全員が、迫力負けをしていた。
女は、固まった我々をひとまわり睨んだ後で、ポーチを手に取り、大男の白人を従えて遠ざかっていった。
そのときの白人が見せた申し訳なさそうな顔だけが、小さな救いだった。
嵐が去ったあとで、隣のテーブルの女性が言った。
「ね、すごいでしょ。すごい人でしょ。そこに座っていたときも白人の旦那さんに、一言も喋らせなかったのよ。すごいわよ。あのひと」
もう一人の女性も同じように「すごいすごい」と繰り返していた。
確かに、すごい。
それは、すごいとしか言いようがないひとだった。
我々5人は、同じように「すごいすごい」と言いながら、みな同じリズムでうなずくことを繰り返した。
ちゃんぽんを食っている間も我々は「すごいすごい」とうなずいていた。
二十歳の息子の記念すべき日だったが、息子は成人式には参列しなかった。
「だって、荒れたら嫌だからね」
平和なことが好きな息子は、荒れる成人式は嫌いなようだ。
そこで、記念に家族四人と中学3年の娘の友だちの居候さんとで、映画を観に行くことにした。
しかし、お目当てのハリー・ポッターは混んでいたので、観たのは「トロン」という映画だった。
できを星3つで表現したら、星1つ半といったところか。
要するに、普通だった。
面白いという視点で見れば面白いし、期待していたら「ハズレ」ということになる。
ただ、息子は満足していたので、良しということにする。
映画を見て、息子の大好きな焼肉を、と思いやはりお目当ての人気店に行ったら、そこも混雑。
では回転寿司にしようか、足を運ぶと「一時間待ちです」。
有名ラーメン屋も混んでいた。
苦笑いの息子が、武蔵境駅前のイトーヨーカ堂内リンガーハットでもよし、と言うので我々はヨーカ堂地下のフードコートに足を運んだ。
しかし、ここもけっこうな混雑。
ただ、息子の日ごろの行いがよかったせいか、運良く6人がけの席が空く場面に遭遇して、我々はそこに席を占めることができた。
しかし、「あら、これー!」という必要以上に大きいヨメの声。
それは、まわりのテーブルにお座りになられた方々が、思わず振り向くほどの無神経な大声だった。
ヨメの指さす先には、薄いピンクのポーチがあった。
当然、女性ものだろう。
ヨメがそれを手に取ろうとすると、隣のテーブルの上品な40年輩の女性二人組みが、「ああ、きっとそれ、日本人と外人さんご夫婦が忘れていったものだわ」と言った。
そして、もう一人が「きっと忘れたのに気づいて戻ってきますよ。それまで触らない方がいいですよ。ちょっと怖そうな奥さんだったから」と首を小さく左右に振りながら、話をつなげた。
怖そうな奥さん・・・・・?
それは、イヤだな・・・・・、そう思っていたら、ヨメと同じくらいの音量の声がした。
「それ! あたしの!」
背は小さいが、確かに目がきつくて、いかり肩をした30歳くらいの女が、190センチはあろうかという白人の男を引き連れて、立っていた。
そして、「中を見なかった!?」と、厳しい口調で言った。
わけがわからない私たちは、声も出せずにただ小さくうなずくだけだった。
いつもは、このような状況に強いはずのヨメも、相手の声の圧力に負けて声を出せずにいた。
全員が、迫力負けをしていた。
女は、固まった我々をひとまわり睨んだ後で、ポーチを手に取り、大男の白人を従えて遠ざかっていった。
そのときの白人が見せた申し訳なさそうな顔だけが、小さな救いだった。
嵐が去ったあとで、隣のテーブルの女性が言った。
「ね、すごいでしょ。すごい人でしょ。そこに座っていたときも白人の旦那さんに、一言も喋らせなかったのよ。すごいわよ。あのひと」
もう一人の女性も同じように「すごいすごい」と繰り返していた。
確かに、すごい。
それは、すごいとしか言いようがないひとだった。
我々5人は、同じように「すごいすごい」と言いながら、みな同じリズムでうなずくことを繰り返した。
ちゃんぽんを食っている間も我々は「すごいすごい」とうなずいていた。