リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

すごい女

2011-01-11 10:11:28 | オヤジの日記
昨日は、成人式。

二十歳の息子の記念すべき日だったが、息子は成人式には参列しなかった。

「だって、荒れたら嫌だからね」
平和なことが好きな息子は、荒れる成人式は嫌いなようだ。

そこで、記念に家族四人と中学3年の娘の友だちの居候さんとで、映画を観に行くことにした。
しかし、お目当てのハリー・ポッターは混んでいたので、観たのは「トロン」という映画だった。

できを星3つで表現したら、星1つ半といったところか。
要するに、普通だった。
面白いという視点で見れば面白いし、期待していたら「ハズレ」ということになる。

ただ、息子は満足していたので、良しということにする。

映画を見て、息子の大好きな焼肉を、と思いやはりお目当ての人気店に行ったら、そこも混雑。
では回転寿司にしようか、足を運ぶと「一時間待ちです」。

有名ラーメン屋も混んでいた。

苦笑いの息子が、武蔵境駅前のイトーヨーカ堂内リンガーハットでもよし、と言うので我々はヨーカ堂地下のフードコートに足を運んだ。

しかし、ここもけっこうな混雑。

ただ、息子の日ごろの行いがよかったせいか、運良く6人がけの席が空く場面に遭遇して、我々はそこに席を占めることができた。

しかし、「あら、これー!」という必要以上に大きいヨメの声。

それは、まわりのテーブルにお座りになられた方々が、思わず振り向くほどの無神経な大声だった。

ヨメの指さす先には、薄いピンクのポーチがあった。
当然、女性ものだろう。

ヨメがそれを手に取ろうとすると、隣のテーブルの上品な40年輩の女性二人組みが、「ああ、きっとそれ、日本人と外人さんご夫婦が忘れていったものだわ」と言った。
そして、もう一人が「きっと忘れたのに気づいて戻ってきますよ。それまで触らない方がいいですよ。ちょっと怖そうな奥さんだったから」と首を小さく左右に振りながら、話をつなげた。

怖そうな奥さん・・・・・?

それは、イヤだな・・・・・、そう思っていたら、ヨメと同じくらいの音量の声がした。

「それ! あたしの!」
背は小さいが、確かに目がきつくて、いかり肩をした30歳くらいの女が、190センチはあろうかという白人の男を引き連れて、立っていた。

そして、「中を見なかった!?」と、厳しい口調で言った。

わけがわからない私たちは、声も出せずにただ小さくうなずくだけだった。
いつもは、このような状況に強いはずのヨメも、相手の声の圧力に負けて声を出せずにいた。

全員が、迫力負けをしていた。

女は、固まった我々をひとまわり睨んだ後で、ポーチを手に取り、大男の白人を従えて遠ざかっていった。
そのときの白人が見せた申し訳なさそうな顔だけが、小さな救いだった。

嵐が去ったあとで、隣のテーブルの女性が言った。
「ね、すごいでしょ。すごい人でしょ。そこに座っていたときも白人の旦那さんに、一言も喋らせなかったのよ。すごいわよ。あのひと」
もう一人の女性も同じように「すごいすごい」と繰り返していた。

確かに、すごい。

それは、すごいとしか言いようがないひとだった。


我々5人は、同じように「すごいすごい」と言いながら、みな同じリズムでうなずくことを繰り返した。

ちゃんぽんを食っている間も我々は「すごいすごい」とうなずいていた。