武蔵境駅前の交差点で、自転車にぶつけられた。
後輪に、かなりの衝撃。
信号待ちで油断をしていたので、衝撃をもろに受けた。
しかし、左足で踏ん張って、倒れることだけは避けた。
危ないところだった。
右後ろを振り向くと、うつろな目をした50歳くらいの女が、両ハンドルを懸命に握って、私ではない何かを凝視していた。
それは、心がどこかに、行ってしまっている目だった。
文句を言おうとした私の気が殺がれた。
夕闇迫る交差点。
暗くなりかけてはいたが、大手のスーパーの前だから、明るい。
相手の存在は、確実にわかるはずだ。
それなのに、ブレーキもかけずに、ぶつかってきた。
わざと、か?
人様から恨まれるおぼえはないのだが。
それに、私は、この女のことは知らないし。
そう思っていたら、信号が青に変わった。
面倒くさいので、このまま行ってしまおうか。
なんか、危なそうなオバさんだし、かかわりになるのは面倒だな。
そう思って、自転車を漕ごうとしたとき、「大丈夫ですか」と声をかけられた。
声の方を見ると、若い警官が走ってくるところだった。
おそらく、私がぶつけられるところを見ていたのだろう。
若い警官は走ってくるとすぐ、私の自転車の後輪を覗いて、「異常はないみたいですね」と言った。
そして、警官の姿を見た途端、ハンドルの向きを変えて逃げ去ろうとする女の自転車のハンドルをつかみ、「危ないことをしますね」と語気を強めた。
私の方からは、女の顔は見えなかった。
だから、表情が読めない。
ハンドルを握る手に力が入っているのはわかったが、今もうつろな目をしているかは、わからなかった。
若い警官が、女に言う。
「自転車は危ないんですよ。しかも交差点でブレーキをかけずにぶつかるなんて、おかしいですよ! 前を見ていなかったんですか? もし、この人が倒れていたら、頭を打ったかもしれない。そうなったら、あなた、どうします?」
警官の強い口調に押されたのか、あるいは、まったく何も考えていないのか、女は警官のことばに反応せず、ハンドルを強くつかんだまま、前を見ているようだった。
ここで、時間を取られるのは嫌なので、私は警官に向かって「俺は大丈夫ですから。自転車も壊れていませんので」と言った。
警官は、「まあ、あなたが、大丈夫なら」とうなずいて、私を解き放ってくれた。
だから、そのあと女がどうなったかは、知らない。
おそらく、厳重注意をして、無罪放免ということになったと推測する。
自転車事故は、怖い。
もし、ぶつけられた側が小さい子やお年寄り、力の弱い女性だったりしたら、倒されていたかもしれない。
その場合、どこか怪我をするか、最悪の場合は死ぬこともありうる。
これは、誰にでも怒りうることである。
そして、意味不明のオバさんも、どこにでもいる。
そんなオバさんにも、気をつけなければいけない。
後輪に、かなりの衝撃。
信号待ちで油断をしていたので、衝撃をもろに受けた。
しかし、左足で踏ん張って、倒れることだけは避けた。
危ないところだった。
右後ろを振り向くと、うつろな目をした50歳くらいの女が、両ハンドルを懸命に握って、私ではない何かを凝視していた。
それは、心がどこかに、行ってしまっている目だった。
文句を言おうとした私の気が殺がれた。
夕闇迫る交差点。
暗くなりかけてはいたが、大手のスーパーの前だから、明るい。
相手の存在は、確実にわかるはずだ。
それなのに、ブレーキもかけずに、ぶつかってきた。
わざと、か?
人様から恨まれるおぼえはないのだが。
それに、私は、この女のことは知らないし。
そう思っていたら、信号が青に変わった。
面倒くさいので、このまま行ってしまおうか。
なんか、危なそうなオバさんだし、かかわりになるのは面倒だな。
そう思って、自転車を漕ごうとしたとき、「大丈夫ですか」と声をかけられた。
声の方を見ると、若い警官が走ってくるところだった。
おそらく、私がぶつけられるところを見ていたのだろう。
若い警官は走ってくるとすぐ、私の自転車の後輪を覗いて、「異常はないみたいですね」と言った。
そして、警官の姿を見た途端、ハンドルの向きを変えて逃げ去ろうとする女の自転車のハンドルをつかみ、「危ないことをしますね」と語気を強めた。
私の方からは、女の顔は見えなかった。
だから、表情が読めない。
ハンドルを握る手に力が入っているのはわかったが、今もうつろな目をしているかは、わからなかった。
若い警官が、女に言う。
「自転車は危ないんですよ。しかも交差点でブレーキをかけずにぶつかるなんて、おかしいですよ! 前を見ていなかったんですか? もし、この人が倒れていたら、頭を打ったかもしれない。そうなったら、あなた、どうします?」
警官の強い口調に押されたのか、あるいは、まったく何も考えていないのか、女は警官のことばに反応せず、ハンドルを強くつかんだまま、前を見ているようだった。
ここで、時間を取られるのは嫌なので、私は警官に向かって「俺は大丈夫ですから。自転車も壊れていませんので」と言った。
警官は、「まあ、あなたが、大丈夫なら」とうなずいて、私を解き放ってくれた。
だから、そのあと女がどうなったかは、知らない。
おそらく、厳重注意をして、無罪放免ということになったと推測する。
自転車事故は、怖い。
もし、ぶつけられた側が小さい子やお年寄り、力の弱い女性だったりしたら、倒されていたかもしれない。
その場合、どこか怪我をするか、最悪の場合は死ぬこともありうる。
これは、誰にでも怒りうることである。
そして、意味不明のオバさんも、どこにでもいる。
そんなオバさんにも、気をつけなければいけない。