ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ルイ・ジャド 仏ブルゴーニュ2015年バレルテイスティング

2017-04-05 18:18:44 | ワイン&酒
2月23日、仏ブルゴーニュのルイ・ジャド社 2015年ヴィンテージ バレルテイスティング&セミナーが都内で開催されました。
遅ればせながらなのですが、リポートします。

今回は、まだ瓶詰めされていないブルゴーニュ2015年ヴィンテージのワインを、2016年11月に樽から取り出し、フィルターヲかけずにひとまず瓶に詰め、低温の船便で運んだもののテイスティングになります。
バレルテイスティングは、まだ正式な商品ではない上、今回のサンプルはひとつの樽から取り出したものになります。
それらを考慮しながらテイスティングしなければなりません。

その際に必要なのが、ヴィンテージ情報です。
今回もルイジャド社の輸出部長オリヴィエ・マスモンデ氏が来日し、セミナーを行いながら、紹介してくれました。


オリヴィエ・マスモンデ氏

2015年ヴィンテージは、ブルゴーニュ全体でもルイ・ジャドでも素晴らしい年

2014年も2013年もいい年で、いい年が続いている。
2015年は量が少ないが、自然な状態で濃縮感があり、酸もあり、タンニンのストラクチャーも存在しているのが特徴。

「実際に飲んでみると、びっくりする。すでにストラクチャーがしっかりある。タンニンも酸もしっかりあるのが2015年の特徴」と、マスモンデ氏。

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2015年の冬は暖冬から始まり、後半は厳しい冬になった。その厳しさをブドウの樹が記憶に留め、タンニンのストラクチャー、しっかりした骨格を樹が覚えている。
3月は少し雨があったものの、普通に推移した。
4月は非常に暑く、植物の生育サイクルを加速させることで早い収穫を予想させた。
5月、6月は普通の気温に戻った。わずかな雨が朝降ったことも、いい影響を及ぼした。
この雨量ではまだ少なく、水分が足りない状態であった。
7月は、35~40℃の暑い日が3週間続き、果皮が焼けるのでは?収穫が8月に早まるのでは?と、生産者を不安に陥らせた。
しかし、8月に奇跡が起きた。22~25℃と涼しくなり、植物の生育サイクルが緩まり、また、雨が降ったことで、根が土中から酸、ミネラルを吸い上げる活動をしてくれた。この8月が2015年の素晴らしいヴィンテージをもたらしてくれた。

収穫はやや早目で、白は9月1日、赤は9月7日からスタート。
2014年より10日、2013年より3週間早い収穫となった。

幸運だったのは、ブドウに病気が出なく、健康だったこと。
太陽をいっぱい吸収した力強いブドウだった。
ワイナリーに届くブドウはとても状態が良く、ピノ・ノワールは選果で除けるものがほとんどなかった。

発酵は、大きなエネルギーとともに早く始まり、非常にアクティブな発酵だった。
ルイ・ジャド社では長い発酵を好み、プルミエ・クリュで21日間、グラン・クリュで30~35日間の発酵を行なう。
99%天然酵母で、人工酵母はほとんど使わない。が、中には自分で発酵できないものがあるので、発酵の手助けをするために使用することがある。

ルイ・ジャドではわざと濃縮させることはしない。
30%が新樽で、およそ18~19カ月熟成させている。

ルイ・ジャドの白ワインの2015年の収穫量は、例年より25~30%減。
ブドウの粒が小さかったが、ワインにとってはいいことだった。
長熟の可能性を大きくしてくれるリンゴ酸を残すため、マロラクティック発酵は100%行なうことはない。約20%。補酸を行なうこともしない。
白ワインについては、2月の段階でいくつかをボトリングし始めている。

赤ワインは、冬の寒さにより、酸と果皮の厚さをもたらすことになった。

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セミナーでテイスティングしたのは、以下の4アイテム。
もちろん、すべて2015年ヴィンテージのバレルサンプルになります。


左より)
Volnay 1er Cru Clos de la Barre Monopole 2015
Gevrey-Chambertin 1er Cru Clos Saint-Jaques 2015 Domaine Louis Jadot

Chablis Grand Cru Blanchots 2015
Puligny-Montrachet 1er Cru Clos de la Garenne 2015 Domaine ddu Duc de Magenta


ヴォルネイ1級 クロ・ド・ラ・バール(赤)は、北は粘土、南は石灰が多くなるヴォルネイ村の真ん中にあるモノポール(単一畑)。
ミネラルの香りがクロ・ド・ラ・バールの持ち味。
バレルサンプルだが、すでに、アルコール、酸、ミネラル、タンニンのバランスが整っている。
※輸入元希望小売価格:10,500円(税抜、以下同様)

ジュヴレイ・シャンベルタン1級 クロ・サン・ジャック(赤)の区画をルイ・ジャドは1ha強を所有。土壌の35%に含まれている鉄分が、ワインにイキイキとした感じを与える。今は閉じている状態で、最後の判断を待つ必要がある。
生産量は350ケースのみ。世界中から欲しいと望まれるが、なかなか難しい状況。特に2015年はコレクターにとって価値ある年になりそう。
※輸入元希望小売価格:25,000円

シャブリはルイ・ジャドが長年、しかも慎重につくり続けてきたアペラシオン。
5年前から大きな計画がスタートし、ワインメーカーのフレデリックがシャブリ地区に多くの友人を持つこともあり、ブドウ生産者との関係がより緊密になり、ブドウの買い付けを増やすことができた。
シャブリ・グラン・クリュ ブランショ(白)は樽で熟成させているが、樽香のついたワインをつくるのではなく、繊細でフルーティー、フィネスを持ったワインをめざしてる。
※輸入元希望小売価格:13,000円

シンプルなAOCシャブリはステンレスタンクのみで醸造し、色々な食べ物に合わせやすい万能ワイン。20歳になるマスモンデ氏の娘さんもルイ・ジャドのシャブリがお気に入りで、AOCシャブリはルイ・ジャドしか飲まないとか。
日本市場ではどのカテゴリのシャブリも伸びており、ルイ・ジャドでは日本市場を重要視している。

ピュリニー・モンラッシェ1級 クロ・ド・ラ・ガレンヌ ドメーヌ・デュック・ド・マジェンタ(白)は、長期契約の畑のブドウをルイ・ジャドが醸造、販売してるもの。
南向きの日照のいい場所で、風から守られ、母岩は石灰、表土は厚い泥灰土。
熟した果実とミネラル感があり、15~20年の熟成が可能なワインになる。
マロラクティック発酵は20%、新樽は30%で、18~19カ月熟成。
※輸入元希望小売価格:15,000円


Puligny-Montrachet 1er Cru Clos de la Garenne Domaine ddu Duc de Magenta

エチケットデザインは、ルイ・ジャドのバッカスの顔ではなく、ドメーヌの紋章になっています。


「完成品は、バレルサンプルよりもよりよくなっている」とマスモンデ氏が言っていましたが、今の状態でもキレイに整っているものも多く、期待大です。

個人的には、赤では、優美で繊細な“シャンボール・ミュジニー1級レ・ボード”が気に入りました。


Chambolle-Musigny 1er Les Baudes 2015 (同:17,000円)



しかし、ブルゴーニュワインの値段、やはりお高いですね。
いいものだとわかっていますが、庶民派の私は、二の足を踏むことも…

そんな方にオススメなのが、ブルゴーニュの南のワインです。
マスモンデ氏は、ルイ・ジャド社がブルゴーニュの南でつくるワインも取り上げてくれました。

ルイ・ジャド社は、ボージョレ地区「シャトー・デ・ジャック」を所有し、ボージョレのワインも生産しています。
2015年のボージョレ地区はまったく雨が降らず、考えられないほど濃縮感のある年になったといいます。収穫は8月27日から始まり、収穫をはじめてすぐに、しゅばらしいワインになることがわかったそうです。しかし、収穫量は50%減。ブルゴーニュのグラン・クリュと同じです。


Morgon Cote du Py 2015 Chateau des Jacques

厚みがあっておいしい!これは食と楽しみたいと思いました。
輸入元希望小売価格5,000円と、お買い得!



コート・ドール地区の南のプイイ・フュイッセを代表するドメーヌのひとつ「ドメーヌ・J.A. フェレ」を、ルイ・ジャドが2008年に引き継ぎました。

プイイ・フュイッセの2015年は春先に少し雨があり、8月にも少し雨がありましたが、コート・ドール地区ほどは降らずに済みました。南の地域は雨で病気が出やすく、8月にベト病が少し見られたものの、気温が涼しかったために広がらず、いい収穫を迎えることができました。
収穫は素晴らしかったものの、量は例年の25%減。


Pouilly-Fuisse Tête de Cru Le Clos 2015 Domaine J.A. Ferret

キメ細かく、なめらかで、酸があって、シルキーな白ワインです。
さすがにおいしく、当然ながら気に入りました。
※輸入元希望小売価格:7,500円



2015年は、ブルゴーニュのどの地区も収穫量は少なくなりました。

ブルゴーニュでは、ここ7年連続して収穫が少ない状況で、7年間で通常年の2年半分しかなかったといいます。
原因は「自然」です。
よって、ブルゴーニュでは、自然、天候にナーバスになり、緊張感が高まっています。

ワインの質は高いのに、量が少ないものですから、当然、価格が上がります。
これは人気アペラシオンだけでなく、ブルゴーニュのすべてのアペラシオンで見られます。
7年の間にストックは底をつき、売るものがなくなりました。
世界中からの需要に追い付かず、ワインが値上がりするわけですが、ブドウ自体の価格も値が上がります。ブドウ栽培者からブドウを買っている小さな生産者は、生産量が50%減となり、大打撃を受けています。
自然が相手とはいえ、深刻な問題です。

2016年のブルゴーニュの収穫は、2015年よりも少なくなりました。
春先の霜のせいで、40~50%減です。
ただし、春先に霜が降りた年は、ブルゴーニュでは、1947年や1969年のような素晴らしい年になることも多いそうです。

さて、2017年はどうなるでしょう?
天候の恵まれ、収穫量も含めていい年になることを期待したいですね。

[参考]

■2014年バレルテイスティングリポート → コチラ

■2013年バレルテイスティングリポート → コチラ



マスモンデさん、今年もありがとうございました

(輸入元:日本リカー株式会社)

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