ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

多彩で魅力的なワイン「ガルナッチャ/グルナッシュ」

2020-02-21 16:26:45 | ワイン&酒

南フランスのワインの話題が続いたので、南仏のブドウ品種のひとつ

「グルナッシューGrenache」を取り上げてみたいと思います。

 

グルナッシュ、スペインでは「ガルナッチャGarnacha」です。

Garnacha Origen Association(ガルナッチャ・オリジェン協会/スペイン)とRoussillon Wine Committee(ルーションワイン委員会/フランス)が合同で立ち上げた「European Garnacha/Grenache Quality Wines」(ヨーロッパ産ガルナッチャ/グルナッシュ ファインワイン)プログラムの日本プロモーションが始まり、昨年10月に都内でセミナーが行なわれました。

なお、このプロジェクト自体は4年前に設立されたそうです。

 

同プロジェクトから副プロジェクトマネージャーEric Aracil(エリック・アラシル)氏が来日し、講師を務めました。

エリックさんはルーションワイン委員会サイドの方で、私は以前モンペリエのViniSudという試飲商談会でエリックさんのルーションワインセミナーを受けたことがあります。

 

ガルナッチャ/グルナッシュの起源は、スペインのアラゴン地方と言われています。

アラゴンはスペイン北東部にあり、マドリッドの東、バレンシアの北、バルセロナの西のエリアです。

 

現在、ガルナッチャ/グルナッシュは世界の97%がヨーロッパ周辺で栽培され、うち半分以上がフランスのルーションで、45%がスペインです。

他の国を見ると、3位がイタリア、4位がアルジェリア、5位アメリカ、6位チュニジア、7位オーストラリア(西オーストラリア)、8位モロッコ、9位に南アフリカ、10位クロアチア、という順位。

アルジェリア、チュニジア、モロッコは北アフリカで、地中海に面していますので、伝播ルートが想像できますね。

 

いずれにしても、ガルナッチャ/グルナッシュが多く栽培されているのは、スペイン北東部からフランス南部です。

特に栽培面積の大きいルーションは、中世の時代にはアラゴン・カタルーニャ連合王国の領地でしたから、ガルナッチャがルーションに広がるのは当然といえます。

なお、ルーションは今もカタルーニャとのつながりが強い地域で、カタルーニャ語を話す人もいるそうです。

逆に、ルーションと接しているスペイン側の方でも、以前レストランに行ったときにフランス語のメニューがあり、フランス語が通じたので、この2つの地域は本当に近いんだ、と思ったことがあります。

 

このエリアがガルナッチャ/グルナッシュの最大の産地ですが、アラゴン側の生産者は大きいところが多いのに対し、ルーション側は小さい栽培家が多い(約2500軒)とのこと。

 

ルーションのブドウ畑は22,000haで、うち40%がグルナッシュだそうです。

ルーションは三方が山に囲まれ、3つの川が流れ、地中海にも面しているという、多彩なテロワールがパッチワークのように存在するエリアで、24のブドウ品種を栽培しています。

ルーションは地形や土壌、気候が多彩なので、同じグルナッシュを使っても、非常に多彩なワインがつくられています。

有名なものとしては、バニュルスやリブザルド、モーリーといった天然甘口ワインがあり(他の品種とブレンドしていますが)、フランスの天然甘口ワインの80%がルーションで生産されています。

 

スペイン側では、アラゴン州南西部のCalatayud(カラタユ)、西部のCampo de Borja(カンポ・デ・ボルハ)、ほぼ中心やや西寄りのCariñena(カリニエナ)、北西部のSomontano(ソモンターノ)、カタルーニャ州の南西にあるTerra Alta(テラ・アルタ)がガルナッチャの主産地になります。

 

ガルナッチャ/グルナッシュの房と実はとても繊細なため、酸化のリスクが高いブドウです。

よって、収穫をていねいに行なうのはもちろん、除梗や破砕もゆっくりと行なうことが求められます。

 

ガルナッチャ/グルナッシュは果皮の色でいくつかに分類されます。

(注意)「赤」となっているのは「グレイ」で、右端は「赤」です

果皮の色が青みを帯びた黒っぽい「赤(Noir/Tinto)」、黄色い果皮の「白(Blanc/Blanca」、ピンク色の果皮の「グレー(Gris/Gris)」、葉の裏側に繊毛(有毛)が見られる「Garnacha Peluda(ペルーダ、スペイン語で毛深いという意味)またはHairy(ヘアリー)」Alicante Bouschet(アリカンテ・ブーシェ)と呼ばれる「Garnacha Tintorera(ティントレラ)」があります。

 

「赤」はチェリーやプラムの風味のワインになり、土壌によっては、ブラッドオレンジの風味、血液っぽさが出るものもあります。また、ブルーベリーのように青い果皮になると、より濃いワインになり、イチジクのような風味も出てきます。

「白」は、アニスやフェンネル、白い花のエレガントなアロマがあり、アロマから来る新鮮さも感じられます。

「グリ(灰色)」は、白の特徴に加え、より色味や口に含んだ時のテクスチャーが強くなり、火薬のようなミネラル感、シトラス系のフレーバーも感じることがあります。

 

スペインとフランスの多彩な産地でつくられるガルナッチャ/グルナッシュのワインは本当にバリエーション豊か

生産者によっても個性がありますから、飲み飽きることはありません。

 

個人的にも、実はグルナッシュ好きです。

果実味がジューシーで、伸びやかなスタイルの赤、ほどよい厚みと服雑味のあるグリが特にお気に入りですが、美しいカラーのロゼワインも、もちろん忘れてはいけません

 

価格面でも、お手軽に手に入るものがたくさんありますから、ワイン選びに悩んだ時には、ガルナッチャ/グルナッシュを選んでみるのはいかがでしょうか?

 


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