ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第28回 NASU WINE@「キャッチ The 生産者」

2009-03-08 10:05:36 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年11月11日)

第28回  渡邊 嘉也  <NASU WINE>

今回は久しぶりに日本の生産者の登場です。
それも、“こんなところで?”(失礼)、と思うほど意外や意外の北関東のワイナリーを、残暑厳しく真夏を思わせる9月に訪問してきました。



<渡邊 嘉也>(わたなべ よしなり)
NASU WINE(渡邊葡萄園醸造)現当主。
国立醸造試験場を経て、25歳の時に(1993年)渡仏。
ボルドー大学で醸造を学び、シャトー・ロングヴィル・ピション・コンテス・ド・ラランドをはじめ、同グループのシャトーでワインメーカーを務める。
2002年、帰国。
NASU WINE(渡邊葡萄園醸造)の当主になる。


観光地“那須”にワイナリー発見!

栃木県那須塩原市といえば、皇室の那須御用邸を抱え、避暑地としてはもちろん、新緑や紅葉の時期には人気の観光地。
そこに、明治の頃から120年以上も続くワイナリーがあっただなんて・・・。
しかも現当主の渡邊嘉也さんは、ボルドーの著名シャトーの第一線でワインメーカーとして活躍していたというのだから驚きです!



NASU WINE(渡邊葡萄園醸造)
1882年 初代、渡邊謙次が現在の地を開拓
1884年 西那須野町遅沢に「下野葡萄酒株式会社」を創業し、醸造所を設立。
1903年 現在の場所(那須塩原市共墾社)に醸造所移転
2002年 現当主として初めて収穫、醸造を行う
2003年 欧州ブドウ品種を植樹




Q.なぜボルドーへ?家業を継ぐための研修として?
A.昔は、実家のワイナリーは潰してもいいと思っていました(笑)。だいたい、時代が違います。ここでワインをつくっても良いものができないし、日本はワインを生産する場所じゃないと思っていましたから。

Q.では、なぜ実家を継ぐことに?
A.父が亡くなったからです。潰してもいいと思っていましたけど、ブドウ園もワイナリーも歴史あるものですし、それをなくしてしまうのは、やはり忍びないと思いました。

渡邊の家はかつて壬生藩の家老をしていて、この地には開拓のために入り、多くの土地を開拓しました。ここの地名の“共墾社(きょうこんしゃ)”という名前の名付け親も、実は祖父なんです。

そんなわけで、父が亡くなった2001年はボルドーと那須を行き来していましたが、2002年には那須に戻ろうという決心をしました。

Q.すると、あなたが那須で最初に手がけたヴィンテージは?
A.2002年のワインです。その後、03年、04年とリリースし、今は05年が樽に入っている状態です。

Q.この地でのあなたのワインづくりのコンセプトは ?
A.まず “飲みやすい酒質のものをめざす” ということです。
みんなに喜んでもらえるワインであればいいかな、と思っています。

ただ、日本であっても日本でないようなワインをつくりたいと思っています。

というのも、日本とヨーロッパのワインづくりは根本的に違いますから。
ヨーロッパのようなワインをつくることは、今までの日本の中ではムリでした。

Q.ヨーロッパと日本では何が違うのですか?
A.ボルドーも雨が多い点は日本と共通していますが、きちんとブドウづくりがされ、素晴らしいワインが生まれている点が違います。

現在のフランスでは、薬剤の散布などの規制はかなり厳しくなってきていますが、“このタイミングでこれを使う”ということがピンポイントで実施できていることが良い結果を生み出していると思います。

日本の、特に個人経営のワイナリーでは人手も足りず、機械化をするには畑は狭く、投資負担も膨大になってしまいます。手作業では限界があるし、時間もかかり、ボルドーのような合理的なことができません。
よって、良いものを数多くつくることができず、それが日本での問題だと私は思います。外国のようなワインメーキングを日本で行うのは難しいですね。

Q.それでも那須でワインをつくり続けている理由は?
A.どんなブドウをつくればどんなワインになるのか、ボルドーでの経験から明確にわかっています。どこまでブドウから引き出せるのかは、ブドウを見て、食べた段階でわかります。

たしかに今は、天候や病気などの影響で安定して良いブドウが得られませんが、年を重ねて木に抵抗力が付けば・・・。
とりあえず、行けるだけ行こう。そんな気持ちでやっています。

でも、ボルドーにもう一度帰ろうとも思っているんです。客の希望通りのオリジナルオーダーワインをつくるなんてのも楽しいじゃないですか?(笑)

Q.手がけている品種は?
A.畑は約4haあり、白はナイアガラ、ホワイト・アリー、甲州、ポートランド、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、赤はベリーA、キャンベル、スチューベン、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、巨峰(生食用)です。

昔からあるブドウの樹齢は約40~50年ほどで、欧州品種は2003年に植えました。

1粒の濃さのあるブドウ、グミみたいに歯ごたえのあるブドウをめざしています。


ナイアガラ                    ベリーA

Q.このあたりの気候や土壌はブドウ栽培に向いているのですか?
A.標高は300mほどで、朝晩は涼しい環境にあります。が、雨が非常に多く、それが問題です。
土壌は石が多いので、カベルネなどには非常に向いているかと思います。

Q.ボルドーではどんな仕事をしていましたか?
A.ポイヤックの2級格付け、シャトー・ロングヴィル・ピション・コンテス・ド・ラランドのワインメーカーとして働いていました。また、ピション・ラランドが1997年に取得したシャトー・ベルナドットの立ち上げにも携わりましたしシャトー・ヴァランドローにも1年いて、2000年ヴィンテージの醸造を行いました。
その他にも、いくつものシャトー(ピション・ラランドのグループシャトー:シトラン、シャス・スプリーンなど)を経験しています。

Q.今後の予定は?
A.父の時代にはハウスで栽培していましたが、2年前にそれを取り払いました。
次は棚を取り払い、垣根仕立てに絞り込んでいきたいと思っています。

ですが、何よりも、毎年安定してブドウが収穫できるようにしたいと思っています。2005年は悪い年でしたが、2006年はそれにも増して悪い年で、6月から7月はずっと雨が降り続きました。そのせいで病気が出て、ほとんどダメになってしまった畑もあります。とはいえ、ナイアガラやキャンベルは無事でしたので、多少の仕込みはできますが・・・

Q.NASU WINE」をどのように販売していきますか?
A.うちのワインは観光地のお土産用ワインではありません。それなりの価格もします。現在はワイナリーでの直売が中心で、他にちょこちょこっと置いてもらっているくらいで、ほとんど販売網がない状態です。まずは首都圏の信頼のおける酒屋さんに取り扱っていただき、いいお客さんに買っていただきたいと思っています。


ナイアガラ種:ものすごーく太い棚の枝!


<テイスティングしたワイン>

マスカット・ベリーA (04年・05年)

04年は深みのある色合いで、非常に色素が濃く、香りも甘くて濃厚。ボディにコクがあり、アルコールのなめらかな口当たりと果実の甘みのある、まろやかな味わいです。

ベリーAのワインは日本ではポピュラーですが、今までに味わったことのないような深みと厚みがあり、ベリーAでもこんなワインになるんだ!とびっくりしました。



05年はまだ樽に入っていたので、樽からのワインをテイスティング。色調は04年よりも薄めで、酸の出方もかなり違います。05年の方が強めに出ていますが、バランスは良好。

「年によって、同じ樹からのブドウでもこんなに差が出ます」と渡邊さん。

05年は、樽熟成していないベリーAもあり、こちらは既に瓶詰めされて販売されています。こちらはちょっと若く、ややカドを感じるかも?


メルロ (02年・03年・04年・05年)

メルロ主体で、カベルネ・ソーヴィニヨンが35%ほどブレンドされています。

02年は、コショウ、グリーンペッパーなどのスパイシーな香りが若々しく香り、タンニンもクリーンで、まだフレッシュな状態。開くまでしばらく待ちたいところ。

03年は、酸の出方が非常にデリケートに感じました。

04年は、やはりグリーンペッパー系の香りは共通して感じるものの、口の中に入れると丸みがあります。コクがあってなめらかで、ボリューム、厚み、甘み、旨味があり、それらを酸が支えています。キレイなタンニンの存在感も感じました。

05年はまだ樽に入っているため、樽からテイスティング。

2年使用樽からのものは、果肉&果実の甘さ、モワモワした感じがあり、フルーツのアロマを濃厚に感じました。



ブラック・マホガニー (03年)

NASU WINEのフラグシップワイン。メルロ主体で、新樽を100%使用。
カスタード、ヴァニラの香りが甘く、口に含むと非常にキメが細かく、酸がエレガント。

「仕込んでから3年後のクリスマス頃から飲めるようにつくっています。今年のクリスマスにいかがですか?(笑)」と渡邊さん。

価格は10,000円・・・ クリスマスにこれが飲めたら、たしかに素晴らしい!



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インタビューを終えて

志を抱いて家を出たものの、やむを得ない事情で戻らざるをえなくなった、というのはよくある話です。ですが、そうしたことがあるとしても、まだずっと先のことだと思っていた渡邊さんにとって、お父さんの突然の訃報は大きな打撃だったはず。

良いワインなんてできるはずがない、と思っている土地でワインづくりをしていくのか?
それとも、那須でのワインづくりの歴史を途絶えさせてしまうのか?

かなり厳しい二者択一です。

そして、那須でワインづくりをしていくことを選択した渡邊さんに、2006年、メルロはほぼ壊滅という試練の波が訪れました。

あと1ヵ月もしたら収穫ができるはずの9月の畑に、私はブドウの房を見つけることはできませんでした。まるで収穫後の畑のようです・・・

これはヒドイ・・・、と複雑な思いで渡邊さんに顔を向けると、

「なんとかなるでしょう!」と、笑顔を返してくれました。

たしかに、農園として他の農作物からの収入はあるでしょうが、2002年以来つくり続けてきたメルロが仕込めなくなるとしたら、どんなに無念なことか・・・




1ヵ月後、再会した渡邊さんに「メルロの収穫、どうなりました?」と尋ねると、

今度も「なんとかなるでしょう!」という答えが返ってきました。

逆境を逆境とも思わないなんて、この人、只者じゃない!

“日本のNASU WINE”、そして、“NASU WINEの渡邊嘉也”の名が広く知られるようになる日が、近い将来きっとある!
そう強く思わずにはいられない、渡邊さんとの出会いでした。




『NASU WINE』
テイスティングルームでは、無料試飲および購入が可能です。

(JR東北本線の黒磯駅から車で5分ほど) TEL.0287-62-0548
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第27回 Vina Ventisquero@「キャッチ The 生産者」

2009-03-08 10:02:44 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年10月11日)

第27回  Aurelio Montes  <Vina Ventisquero>

前々回のアドルフォさんもそうでしたが、
チリはどうして若いイケメンのワインメーカーが多いんでしょ?と思わず頬が緩んでしまうくらい、これまたステキな、 ヴィーニャ・ベンティスケロのアウレリオ・モンテスさんが来日しました。



<Aurelio Montes > (アウレリオ・モンテス)
チリの首都サンチャゴ生まれの31歳。
カトリック大学卒業後、オーストラリアなどでの研修を経てベンティスケロ入社。
現在は同社のワインメーカーとして活躍中。
チリの名門モンテス社のオーナーで醸造長のアウレリオ・モンテス氏は実父。

注)外国では父と息子が同じ名前ということがよくありますが、アウレリオさん父子も同じ名前です。



アンデスの氷河の懐に抱かれて

ベンティスケロは、チリの農産業のリーダー的存在のアグロスーパー社が1998年に設立した新しいワイナリーです。食肉やサーモンなどの加工で培われたアグロスーパーの完璧で衛生的な管理システムのもと、計1500haという広大な畑から1500万ケースの高品質ワインを生み出しています。

“ベンティスケロ”とは、スペイン語で“氷河”、“雪渓”の意味。
なるほど、ラベルにはアンデス山脈の壮大な氷河が描かれています。

この氷河の雪解け水がブドウ畑に恩恵をもたらし、豊かな実りを約束します。
ベンティスケロのワインは、まさにこの氷河が育んでいるのです。




Q.ベンティスケロ設立に当たってのコンセプトがあると聞きましたが?
A.ベンティスケロでは“環境への配慮、環境とのバランス”を大事にすることを企業コンセプトとしています。
当社は非常に近代的かつ大きなワイナリーですが、まず外観は周りの自然に溶け込むようにしています。また外観だけでなく、そこに生えていた木はそのまま残したり、鷹を使って害鳥を追い払うなど、環境とのバランスに最大の注意を払い、排水を浄化して水の再生利用も行っています。さらにはISO9001、ISO14001、HACCPなどの国際規格も取得しています

Q.では、ベンティスケロのワインづくりのコンセプトは?
A. “偉大な醸造家はいない。あるのは偉大なブドウだ” です。
良いブドウがないと、いくら腕の良い醸造家でも良いワインはつくれません。
ブドウは畑で育ちますから、良いワインというのは畑から始まっているわけです。

そこで、当社では所有する畑の土壌を調査し、それぞれの土壌の性格を把握してマッピングを行っています。それによって、どの区画にどの品種のブドウを植えたらいいのかがわかります。土壌の質を知ることで、質の高いワインを生み出すことができます。

このようにして、我々は各ヴァレーの最高の区画の中からそれぞれのブドウに最適な畑を自分たちで選んでいます。

Q.各ヴァレーに合うブドウ品種を教えてください。
A.カサブランカ・ヴァレー:冷涼な気候ですので、白ワインに理想的な土地です。シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、赤のピノ・ノワールにも適しています。

マイポ・ヴァレー:地中海性気候で、赤品種、特にカベルネ・ソーヴィニヨンに適しています。

アパルタ・ヴィンヤード:コルチャグア・ヴァレーの中にあります。赤品種に適しています。小さい区画ですが、特にプレミアムワインをつくることのできる最高の品質の畑です。

ロロル・ヴィンヤード:ここもコルチャグア・ヴァレーの中にあり、当社の新しい区画です。現在は土壌の調査中ですが、白ワイン用のブドウを植えています。

Q.ベンティスケロは非常に高いテクノロジーを誇っているということですが?
A.はい、テクノロジーにおいては世界NO.1ともいえる設備が整い、最高の環境でワイン生産を行っています。
しかし、テクノロジーだけではありません。我々従業員全員が、品質についてきちんと理解しながら働いています。ブドウづくりから醸造、瓶詰め、出荷、営業を含め“優秀なチームの力”があるからこそ、クオリティの高いワインが生まれます。

Q.なるほど。高いテクノロジーと素晴らしいチーム力で、過去3年のチリ国内のコンクールでは最多受賞(メダル数180)だそうですね?
A.メダルは、ワイナリーにとってもワインメーカーにとっても大切なものです。我々が正しいワインづくりをしていることの証明になりますからね。

今後も、競争率の高い世界のワインの中で常に選んでもらえるようなワインづくりをしていきたいと思っています。
ですが、個人的には、ワインというのはやっぱり“楽しむもの”だと思っています(笑)

Q.ウルトラプレミアム級のワインの噂を聞きましたが?
A.現在のトップレンジはプレミアムワインの“グレイ”ですが、この秋に、
ウルトラプレミアムワイン“パンゲア”(PANGEA)2004年をリリースします。

パンゲアは“超大陸”という意味です。2億5千万年前、地球上の5大陸はすべてひとつの大陸にまとまっていたといわれ、“超大陸”と呼ばれていました。

このパンゲアには、オーストラリアのペンフォールドで28年間働いていたワインメーカーのジョン・デュバル氏を招聘しました。デュバル氏はオーストラリアの最高峰ともいえるシラーズの“グランジ”を生み出した人物です。
パンゲアはシラー種を使ったワインであること、また、デュバル氏はシラーの最高の造り手であり、私の父の友人でもあったことから、彼がこのプロジェクトに必要だと思ったのです。

パンゲアは、長い間かけて生み出した、良いブドウと良いワインメーカーの産物です。
それが分かれている大陸が融合した元の姿と重なり、“パンゲア”という名前が生まれました。

パンゲアはアパルタ・ヴィンヤードのシラーから生まれたウルトラプレミアムワインです。
チリでウルトラプレミアムと呼ばれるワインはいくつかありますが、シラーからつくられるウルトラプレミアムはパンゲアが初めてです




* 熟成期間18ヶ月。
* わずか800ケースのみの限定品で、2004年が初ヴィンテージ。

Q.あなたは、チリがのようだと言いますが?
A.首都サンチャゴは南米で最も近代的な都市ですが、その他の土地に目を向けると、チリは多くの自然に囲まれています。北の砂漠、南の南氷洋、東のアンデス山脈、西の太平洋と、四方を自然の壁で囲まれて孤立しています。まるで島のようじゃありませんか?(笑)そのおかげで病気も入ってきません。

また、四季がはっきりし、雹害もなく、昼夜の温度格差が大きい、といった好条件が整っています。そこにさらに磨き抜かれたテクノロジーも加わるのですから、チリにはプレミアムワインが生まれて然るべき充分な条件が揃っているのです。





<テイスティングしたワイン>

Vina Ventisquero Classico

“クラシコ”シリーズは、シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーの4アイテム。

どれも素直な果実味が生きているワインで、ほどよい凝縮感とコクのある味わいが楽しめます。
中でも、スッキリとしたクリーンなシャルドネが好きな人は、このクラシコのシャルドネがオススメ。

この価格(標準小売価格1000円)で楽しめてしまうクラシコは、毎日飲みたい人には嬉しいシリーズでしょう。




Vina Ventisquero Reserva
ソーヴィニヨン・ブラン、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルメネールの5アイテム。

レゼルヴァの中で私のイチオシが “ソーヴィニヨン・ブラン”
爽やかで心地良く、ソーヴィニヨンの個性をやさしく感じながら、1杯、また1杯・・・と、自然とグラスが進みます。
週末、ちょっとしっかりとしたワインを飲みたいなという時には、レゼルヴァが満足させてくれるはず。


Vina Ventisquero Gran Reserva
ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルメネールの6アイテム。

グラン・レゼルヴァ以上は手摘みで収穫します。
フレンチオーク(シラーはアメリカンオークも併用)で12ヶ月前後樽熟成させているので、重厚感があります。オークのニュアンスがまだちょっと勝ち気味なものもありますが、時が解決してくれることでしょう。

このグラン・レゼルヴァは、 次から“Vina Ventisquero Queulat”(ケウラ)という名前&新ラベルになります。




Vina Ventisquero Grey
メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルメネールの4アイテム。

パンゲアがリリースされるまでは、このグレイがベンティスケロのトップワインでした。フレンチオークで15ヶ月熟成後、さらに12ヶ月瓶熟成させています。
その分、グラン・レゼルヴァよりも落ち着いたエレガントさが備わっていて、
手の込んだ料理と合わせて特別なときに飲みたくなるワインです。

“Grey”(グレイ)は パイネ国立公園にある氷河の名前から
“Queulat”(ケウラ)は ケウラ国立公園(やはり氷河が有名)から
名付けているそうです。



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インタビューを終えて

チリの名門ワイナリーのオーナーを父に持つアウレリオですから、お坊ちゃまかも?と思っていたのですが、会ってみると とてもエネルギッシュな好青年でした(外見はたしかに“王子系”ですが・・・)。

偉大な父の元を離れ、超巨大で超近代的なワイナリーのワインメーカーとして手腕を発揮しているアウレリオのバランス感覚は最高で、きちんとした理論に基づきながら、情熱的なワインメーキングをしていることがヒシヒシと伝わってきました。 
ベンティスケロには6人のワインメーカーがいます。彼らのチームワークが非常に良いのはもちろん、栽培や営業などの他のスタッフとの信頼関係もかなり厚く、アウレリオが何度も「チームの力」と繰り返し語っていたのが印象的でした。




チリへの回帰

一時のブームが去って以来、日本でのチリワインの人気はいまひとつという状況が続いていますが、この『キャッチ The 生産者』ではもう何度もチリワインが登場しています。そして、毎回「また素晴らしいチリワインに出会えた!」と、驚かされています。

それは、アウレリオのような若い世代のワインメーカーがチリワイン界の中心になってきたからでしょう。彼らは近代的な技術や理論をしっかりと学び、世界の銘醸地で修行を積み、世界の味や消費者の嗜好も知っています。

“チリワインといえば濃いチリカベ”という時代はもう終わりました。

チリの風土を見据え、そこに合ったブドウから土地の個性、ブドウの良さを最大限に引き出そうというワインづくりがされるようになってきました。
我々も、そうした新しいチリワインともう一度しっかりと向き合ってみようじゃありませんか。

取材協力:アンデス・アジア株式会社   

(ホームページ http://www.ventisquero.com/english/

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印象に残ったバウムクーヘンたち

2009-03-07 09:55:37 | 甘いもん
遅ればせながら、1月にバウムクーヘン27個を食べた際のレポート(2009/1/30, 1/31, 2/1にアップしきれていないものの中で、印象に残ったものを紹介したいと思います。




黄金バウムの耳  ラ・ファミーユ (高松)

貴重な貴重なバウムの耳(はしっこ)は、Oさんの持参品
ここのバウムは食べてみたかったので、しかも耳とは嬉しい限りです。

黄金というだけあって、黄色が濃い!
見た通りのしっとりとした質感のバウムで、甘さもしっかりして、かなり好み~



フランス人パティシェが四国の高松で作るドイツ菓子・・・なんだか不思議な感じですが(笑)、HPを見ると、やっぱりフランス菓子がメインのお店。そのうち、他のお菓子も試してみたいです。




五感重巻 阿波和三盆糖バウムクーヘン  五感(大阪)

大阪の北浜に本店がある店で、「ごかんえまき」 という銘柄名のバウムは、
和三盆と抹茶の2種類あります。



こちらは和三盆糖を使っているバウムで、和三盆特有の繊細でしっとりとした甘さがあり、層のキメ細かさ、なめらかさが楽しめました




黒糖バウムクーヘン  黒船(自由が丘)

好みのみっちり系ではないけれど、黒糖の風味がよく、味的には好きです。



最近はデパ地下でもけっこう見るので、手軽に買える点がマルでしょうか。




栗の木バウムクーヘン  見波亭 (千葉県富津市)

見波亭(みなみてい)の名前は、このときに初めて知りました。

ベーシックな 「のこぎり山」バウム もあり、それは好みの“みっちり系”だったので、まずこの店自体が気に入ったのと、

モンブラン好きとしては、栗フレーバーは実に嬉しく 、秋限定だったという「栗」のフレーバーのこのバウムは本当にちゃんと栗の風味がして美味しいと思いました

栗は、フランス産、イタリア産のものに加え、熊本産を使っています。



食べたバウムはまだまだあり、別企画で食べたものもありますので、また近いうちに紹介したいと思います。


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期待の会津ワインでしたが・・・

2009-03-06 10:00:05 | ワイン&酒
昨年の秋、福島の磐梯熱海温泉に行った時に購入し、飲まずに置いておいた甘口の白ワインを、ひなまつりに作ったのり巻きに合わせようと思って開けたところ・・・・

思いっきり 「ブショネ」 (コルク異臭)でした



マンズ 会津(白) マンズワイン

本来であれば、福島の契約農家で栽培したリースリングとシャルドネからつくられた、爽やかな口当たりで、上品な香りと豊かな風味が楽しめたはずなのですが、コルクを抜き、コルクの匂いを嗅いだ時点で、もうダメ。

カビ臭い! 

大きめのグラスに注ぐと、カビの香りがぷ~んと華やかに匂い立ち(変な表現ですが、まさしくそうだったので)(苦笑)、口に含むと、うっ・・・!という悲惨さ・・・

テイスティンググラスに注ぐと、異臭はやはり残りますが、味わい的には、大きめのグラスよりもカビの風味は弱くなります。

と、グラスによる香りと味の広がりを、ブショネのワインで体感しました

デリケートな白ワインはブショネの影響が深刻に出ますね・・・



1,000円台半ばと、それほどお高いワインではないものの、せっかく会津で買ってきたものでしたし、お寿司に合うに違いないと意気込んで開けたのに、本当にガックリです。

このワインだったら、スクリューキャップの方がクリーンでクリアな味わいが絶対に約束されるはず。
コルクにする理由が「雰囲気」だけだったら、早急にスクリューに変えてほしいと思いました。

マンズさん、ご検討よろしくお願いします。


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ドイツ春のお祝いケーキ♪

2009-03-05 09:33:29 | 甘いもん
ドイツ菓子の 「ユーハイム・ディー・マイスター」 では、2月1日から

「ドイツの春のお祝い」 をテーマにしたコラボケーキを発売しています。

このコラボケーキは、ドイツのデザイナー集団であるペーター・シュミット・グループがデザインがを描き、それをユーハイムの安藤明マイスター先日バウムでたっぷり紹介しましたね)を中心に実際のケーキに仕上げる企画で、今回で18回目を数えます。



今回のコラボケーキは5種類あり、どれも、イースター(復活祭) をイメージしたデザインとなっています。




うさぎへの手紙   Hasenpost (525円)

イースターといえば、うさぎ です。

 

ホワイトチョコムースの中にイチゴのムース、イチゴソース、が入っていますが、全体的にはものすごく「ミルク」っぽい味が全面に出た、やさしい味わいのケーキで、食べた中ではこれが一番好みでした。




イースターエッグ  Osterei (504円)

イースターには「卵」も欠かせない存在です。



ということで、ホワイトチョコで作った卵のオーナメントが添えられたケーキで、土台はパイ生地。
中にはバニラムースが詰められ、ラズベリージャム、カカオニブも隠れています。
バスケットに盛られたフルーツの姿もキュート




フラワーダンス  Blumentanz (504円)

甘酸っぱいラズベリーが主体で、外側のグラッサージュはもちろん、中にはラズベリーのソース、ムース、粒のラズベリーも入っています。



パンナコッタやマンゴーグラッサージュも隠れ、台はチョコレート生地と、何層にも重なった複雑な、そして見た目も華やかな、ロマンチックなケーキです




春の羊  Laachen (504円)

子羊もイースターのモチーフによく使われるそうで、子羊の形のケーキを焼いたり、ラム肉を焼いたりするそうです。
このケーキは、チョコレート生地の台にジョコンド生地を重ね、アプリコットムース、アプリコット果実をサンドし、チョコレートムースで包み込んでいます。




生まれたよ! Ein Kuken schlupft (525円)

なんとも可愛いヒヨコで、非常に気になったのですが、これは食べていなくて残念!
黄色いマンゴームースの中にオレンジムース、チョコレート、ジョコンド生地、ホワイトチョコト粒々のピスタチオが重ねられ、「うさぎ」とともに、子供が喜びそうなケーキです。



秋冬のテーマ「魔女」とはまったく違い、今回は本当に春らしいほわっとした雰囲気と明るい色合いが特徴で、味わいもフルーツの酸味がより爽やかで軽やかな感じを出していると思いました。

卒業や入学などのお祝いの席にもふさわしいと思いますので、このケーキのことを頭の隅にでも置いておくと役立ちそうかも?



ちなみに、ドイツの2009年のイースターは4月12日(日)だそうです。



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4/4は鎌倉でワイン&ライブ♪

2009-03-04 09:19:12 | ワイン&酒関係雑記
春らんまん ワインとボサノヴァ 桜色の午后

先日すでにご案内しましたが、開催までちょうど1カ月となりましたので、進捗をお知らせしたいと思います。



4/4(土)、鎌倉の「西御門サローネ」で
ワインを飲みながらボサノヴァのライブを聴くイベントを開催します。

定員40名ですが、先週スタッフの方たちと打ち合わせした際に、
すでに10数名がお申し込みされている状況とのこと。

まだ時間がありますが、検討中の方はお早めにお申し込みください。



ライブの曲目も候補がたくさん挙がってきていて、初心者でも耳になじみやすい曲、日本語の曲など、色々考えた構成になりそうで、私もとても楽しみにしています。


ワインですが、自分で飲みたい!と思うものを探している段階です。
春の宵にふさわしいワインを用意したいと思いますので、どうぞお楽しみに~




春らんまん ワインとボサノヴァ 桜色の午后

桜の花で満たされる鎌倉で、春にぴったりのワインを飲みながらボサノヴァのライブを楽しみましょう。

ワインは桜の季節の午後にふさわしい、ロゼ・スパークリングワイン、白ワイン、赤ワインの計3種がお飲みいただけます。

【日 程】 2009年4月4日(土) 15:00~17:00

【会 場】 西御門サローネ(鎌倉市)

【出 演】 DOIS MAPAS (ドイス・マパス)

【ワイン語り】 ワインジャーナリスト 綿引まゆみ

《主催》 西御門サローネ 0467-23-7477(要予約)

【お問い合わせ】 inquire@nishimikado-salone.jp

http://www.nishimikado-salone.jp/event/20090404.html


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3/26汐留シティーセンター42Fでワインイベント

2009-03-03 09:28:58 | ワイン&酒関係雑記


一般消費者向けのワインイベントの案内をいただきました。



“100種を超える世界のワインのフリーテイスティングと夜景を楽しみながらのビュッフェスタイル”
ということで、

窓からの夜景がとてもキレイな、汐留汐留シティーセンタービル42Fにある「オレゴンバー&グリル」で開催されます。
私もこのロケーションはとても気に入っています

会費6,000円とまずまずお手頃ですし、ワインも色々飲めそうです

しかも、以前「キャッチ The 生産者」第28回で紹介した
渡邊葡萄園醸造/NASU WINE(那須塩原市)も出展します。
(キャッチ・・・は現在第26回まで移行中、第28回を急がないと!)


参加には申込が必要ですので、下記URLからアクセスして確認してくださいね。

http://ivent.tokyowinecomplex.com/


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Tokyo Wine Complex world Wine Fair 2009

日時:2009年3月26日(木)18:45~21:00

会場:オレゴンバー&グリル  汐留シティーセンタービル42F 
http://www.wonderland.to/pc/oregon/top/index.html

チケット:¥6000/人

チケット問合せ先:「Tokyo Wine Complex事務局宛」
            info@tokyowinecomplex.com

<出展会社>

1.三ツ星貿易株式会社(フランス)
2.有限会社三幸蓮見商店(フランス)
3.株式会社日野屋(フランス/ドイツ)
4.マヴィ株式会社(フランス/スペイン他)
5.株式会社オーバーシーズVinArte(イタリア)
6.株式会社ワインショップ西村(イギリス)
7.カリフォルニアワインセラーズ(カリフォルニア)
8.フイルコンサービス株式会社(ワシントン/オレゴン)
9.株式会社kp オーチャード(オーストラリア)
10.渡邊葡萄園醸造/NASU WINE(那須塩原市)

※数に限りのあるワインがございます。ご了承願います。

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確定申告の準備中です

2009-03-02 16:16:51 | 雑記
確定申告 はできるだけ2月のうちに済ませてしまおう、と思っていたのですが、協会機関誌の原稿の締め切りと校正作業で2月は多忙を極め、まったく手が付けられませんでした。

なんたって、 「キャッチ The 生産者」の移行も、前回の更新(2月2日)から昨日まで、ほぼ1カ月空いてしまいましたし・・・

当初の予定では2月中に移行完了したいと思っていたのに、ようやく半分ですから、少しピッチを上げねば!



疲れたときは 桜餅 でほっとひといき~



さて、話は 確定申告 に戻って・・・

いつも紙ベースで申告していましたが、
e-Taxで電子申告すると5,000円がバックされるということなので、国税庁のHPから挑戦しようとしましたが、そのためには、

役所で「電子証明書」(ICカード)を発行してもらわねばならない(有料)

ICカードリーダーをPCに繋げる必要がある(購入必須、いくらするの?)

よって、5,000円戻ってくるといっても、実質いくら手元に残るんでしょう?


ということが判明した上、e-Taxの説明ページをよく読んでもやり方がいまいちよくわからないし、こんなに手間も時間もお金もかかるのならパスです。
(国税庁は、もっとわかりやすい方法をガイドしてほしいですね)

紙の申告書はもうほとんどできているので、明日にでも税務署に提出しに行こうと思います。

コメント (4)
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第26回 Mt.Langi Ghiran@「キャッチ The 生産者」

2009-03-01 09:59:04 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年9月11日)

第26回  Dan Buckel  <Mt.Langi Ghiran>
 
オーストラリアはヴィクトリア州、グランピアンズ(Grampians)から、ユニークな経歴を持つワインメーカー、ダン・バックルさん が初来日しました。



<Dan Buckle >
元フェンシングの選手。
仕事をしていたワイン・バーでワインに開眼。
その後、醸造学校に進み、オーストラリアやフランス等で修行を重ねる。
1999年にヤラ・イェーリングステーション(ヴィクトリア州)にワインメーカーとして入社。
3年前から同系列のマウント・ランギ・ジランに移り、ワインメーカーとして活躍中。


黄色い尻尾を持った黒いオウム

ランギ・ジランはアボリジニの言葉で“黄色い尻尾を持った黒いオウムのふるさと”の意味。実際、グランピアンズには国立公園に指定されているランギ・ジランという花崗岩の山があり、黒いオウムが山の斜面を飛ぶ姿を見ることができるそうです。

ランギ・ジランのエリアはアボリジニのロックアートをはじめとした文化遺産の重要スポットでもあり、周囲にはブドウ園や農園が広がり、人々を惹き付けて止まない魅力ある土地です。

なお、この黄色い尻尾の黒いオウムは、ワインのエチケットにも鮮やかに描かれています。



Mt. Langi Ghiran
1963年 フラティン兄弟がグランピアンズにブドウを植え始める
1969年 フラティン兄弟によりマウント・ランギ・ジラン設立
1979年 トレヴァー・マスト氏がワインメーカーに就任(彼は現在もダンさんとともにワインメーカーを務める)
1987年 トレヴァー・マスト氏がフラティン兄弟からワイナリーを譲り受ける
2002年 ロスボーン・ファミリーがオーナーとなる



Q.ダンさんがワインメーカーになったキッカケは?
A.1995~96年頃に『ジミー・ワトソンズ・ワイン・バー』という、メルボルンで有名なレストラン&ワイン・バーで働いていた時に、創始者の孫に当たる人と一緒にワインセラーの管理をしていました。
歴史ある店なので古いワインが多く、リコルク作業をする時に古いワインを味見する経験をさせてもらったのですが、
「50年経ってもしっかりしたワインがあるなんてスゴイ!自分もそういうワインをつくってみたい!」と思ったのがワインづくりに興味を持ったキッカケです。

すぐに醸造学校に入り、卒業後はヴィクトリア州ヤラ・ヴァレーにあるコールド・ストリーム・ヒルズで2年間修行し、フランスのボルドーやブルゴーニュでも経験を積みました。

Q.『ジミー・ワトソンズ・ワイン・バー』には面白いエピソードがあるそうですが?
A.1930~40年代、創始者が自分の店で出すためのワインを樽で買い付ける際、できるだけ良い樽を選んでいたことにちなみ、“ジミー・ワトソンズ・トロフィー”というアワードが1962年に誕生しました。メルボルンのワインショーにおいて、樽に入れられて1年目の最高のワインに贈られる名誉ある賞で、オーストラリアでは特別なアワードとなっています。

Q.マウント・ランギ・ジランのあるグランピアンズというのはどのような土地ですか?
A.ここの地層は5億年前の古いグラニット(花崗岩)で、標高は350~650mとオーストラリアにしては高く、また、南から冷たい風が吹き、オーストラリアで最も寒い地域です。

1963年にブドウが植えられ、その後1980年代に樹齢の高いシラーズからのワインが有名になりました。“冷涼気候のシラーズ”として知られ、スパイシーで、潰したコショウの風味がするといわれています。

Q.冷涼というのは、どの程度ですか?
A.夏(1月)の平均気温が18.2℃で、吹く風も冷たく、冬(7~8月)は雪も降ります。
マウント・ランギ・ジランでは西に山があるので午後の日照時間が短くなり、夕方5時には暗くなってしまいます。

Q.ワインづくりで心がけていることは?
A.オーストラリアでは、ワインの85%が購入後24時間以内に飲まれてしまいます。ワインを熟成させて飲むことが少ないので、すぐに楽しめるようなワインをつくろうと心がけています。

オーストラリアのワインといっても、山地のワイン、崖のワイン、小川のワインetc…と、さまざまな場所でつくられています。オーストラリアにもテロワールが存在します。ブドウの育つ土壌や場所をぜひ見てください。
ワインメーカーはその土地のブドウを生かしたワインづくりをすべきで、自分の色を強く出すべきでないと考えています。

Q.今後どのようなワインをつくっていきたいですか?
A.2001年にブルゴーニュのドメーヌ・コンフュロン・コトティドに研修に行ったのですが、そこでは14haの畑から16のAOCワインをつくっていました。
小さい畑から異なる個性を持つワインができるのは面白く、マウント・ランギ・ジランでも、そんなワインをつくってみたいと思っています。小さいシングル・ヴィンヤードのワインは、近々実現できるかもしれません。

Q.日本の印象は?
A.日本に来るのは初めてですが、外国に来てみると面白いですね。我々のワインは冷涼な気候でつくられているためにエレガントですから、特に日本人に、また日本の料理に向くと感じました。

世界的に、ここ数年でヘビーなものからデリケートで食事に合うワインに人気が移ってきました。そうしたこともあり、涼しい気候でつくられたワインは、今後の人々の嗜好に合うといえるのではないでしょうか



<テイスティングしたワイン> 

White Wine

1)Billi Billi White 2004
2)Riesling 2004

思わず笑ってしまいそうな「ビリ・ビリ」という楽しい音を持つ名前は、ランギ・ジラン山に棲んでいたというアボリジニの王様の名前だそうです。植民地支配をしていたイギリス権力と戦ったとても強い王で、彼の名は川の名として残っています(ビリ・ビリ川)。

どちらも、冷涼な気候ならではの、酸がキリッとした心地良い白ワインで、
1)はセミヨンとリースリングのブレンド、2)のリースリングはミネラル感がたっぷりとしています。  

*いずれもスクリューキャップ使用




Red Wine

3)Billi Billi Red 2002
4)Cliff Edge Shiraz 2002
5)Shiraz 2003
6)Cabernet Merlot 1999

3)~5)はシラーズで、3)にはグルナッシュとムールヴェドルがブレンドされています。

2002年はとても良い年で、ペッパーの香りが特にエレガントに出ているのが特徴。
2003年は暑かった年なので、ペッパーの感じは弱めな代わりにナツメグぽい感じが出ています。

4)のクリフ・エッジはその名の通り(クリフは“崖”でエッジは“縁”の意味)、急な崖っぷちにある畑です。風が非常に強いため、1993年からは畑の70%をネットで覆っていますが、このネットはカンガルーからもブドウを守ってくれます。

5)はワイナリーのトップとなるシラーズで、古い花崗岩土壌の畑からブドウを選別し、100%フレンチオークを使用しています。

どの樽会社を使うかも非常に大事で、4つの会社を選び、緊密な連絡を取り合っています」とダンさんは言います。

6)はだいぶ熟成されつつあり、ユーカリっぽいスパイシーさも味わえます。




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インタビューを終えて


古いワインとの出会いでワインの虜になってしまったダンさんですが、その行動力とバイタリティはフェンシング仕込みの“攻め”の精神から来ているのかも?

どっしりとした体格と少年のような笑顔がとても親しみを感じさせますが、彼のつくるワインは、その容姿に似合わず(失礼!)、とてもデリケートでエレガント。

ダンさん自身も、アグレッシブなタンニンを持つワインは苦手で、エレガントなタイプが好きと言っていました。



オーストラリアのシラーズというと、濃厚でパワフルでスパイシー、というのがかつての印象でした。
しかし、オーストラリアで最も南に位置するヴィクトリア州は冷涼で、その中でもグランピアンズは夏の平均気温が18.2℃という涼しい地域ですから(日本じゃ考えられません!)、マウント・ランギ・ジランのシラーズに涼しげな上品さが感じられるのは、当然といえば当然なのかもしれません。

グランピアンズのシラーズは、ガツンとしたシラーズは苦手・・・という人にオススメです。

エレガントで酸のしっかりした白ワイン2種も、オーストラリアワインを選ぶときの幅を広げてくれそうです。

現在、単一畑でのワインも準備中ということですから、今後のマウント・ランギ・ジランの動向を見守りたいところです。


取材協力:ヴィレッジ・セラーズ株式会社

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第25回 Vina Cono Sur@「キャッチ The 生産者」

2009-03-01 09:55:39 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年8月11日)

第25回  Adolfo Hurtado  <Vina Cono Sur>

チリのコノ・スル社から、チーフワインメーカー兼CEOのアドルフォ・フルタード
さんが来日。 コノ・スル社の新しい取り組みについて語ってくれました。



<Adolfo Hurtado >
1970年生まれ。
チリのカトリック大学農業学校を卒業後、カチャポアル・ヴァレーのVina La Rosa(ヴィーニャ・ラ・ローザ)にワインメーカーとして入社。26歳の時(1997年)にコノ・スルのチーフワインメーカーに就任。
現在はコノ・スル社のCEOでもある。


止まらない快進撃のヒミツとは?

日本市場でチリワインが不調といわれる中、2006年に入って4ヶ月で前年比147%と好調なコノ・スル社。
特にオーガニックワイン では、200%の伸びを見せる絶好調ぶりです。
その秘密はどこにあるのでしょうか?



Cono Sur  VINEYARD & WINERY
1993年 チリのラペル地区コンチャグア・ヴァレーのチェンバロンゴに設立
1998年 オーガニックワインに取り組み始める
1999年 ピノ・ノワール・プロジェクト発足
2006年 スクリューキャップを本格導入



Q.コノ・スルのワインは日本で非常に伸びていますが、どうしてでしょうか?
A.当社が設立された1993年当時のチリでは、伝統的なワインばかりがつくられていました。しかし、我々は新しいコンセプトのワイン、つまり、より品質の高いワインを発信していこうと考え、イノベーションのパイオニアとして、短期間に急激に成長してきました。
このようにして高い品質を保ちながら良いものを安定して供給してきた結果、我々のクオリティが日本の市場で受け入れられたのだと思います。

Q.イノベーションの具体例は?
A.1997年にはチリで初めてシンセティックコルク(プラスティック樹脂コルク)を採用し、その後、いち早くスクリューキャップを導入したのも当社です。2006年から、白ワインとピノ・ノワールの一部でスクリューキャップを本格的に採用することになりました。

Q.なぜスクリューキャップの本格採用に踏み切ったのですか?
A.コルク臭のトラブルをほぼ100%回避し、酸化のリスクを減少させることができるからです。さらに、ワインをよりフレッシュに保ち、よりよい状態で熟成させることもできます。これは実験でも確認できました。

Q.スクリューキャップに対する反応はいかがですか?
A.イギリスや日本では非常に受け入れられています。しかし、チリ国民は保守的ですので、国内での認識はこれからですね。
チリでは海外から他国のワインが入ってくることがほとんどなく、新しいものに目が行くというような環境にありません。国内市場で流通しているのは自国の伝統的なワインで、その大半が天然コルクです。2年前の段階では、スクリューキャップはほぼ拒絶されていました。ところが、ようやく国内でも少しずつスクリューキャップが受け入れられるようになってきました。
その他のワイナリーでもスクリューキャップを導入し始めていますが、まだトライアル的で、当社のように大々的に導入しているところはありません。

Q.オーガニックワインが順調のようですね?
A.1998年からオーガニックに取り組み始めました。ワイナリー内の化学物質をできるだけ排除し、自然のサイクルに従った栽培を行っています。ただし、当社の管理する畑は1000haと広いため、すべてをオーガニックにしようとすると手が回りません。
現在はチェンバロンゴの300haだけがオーガニックですが、そのほかの畑もオーガニック同様に厳しい規制の下、消費者にとってヘルシーなワインづくりを行っています。残りの畑の今後のオーガニックへの切り替えは、段階的に進めたいと考えています。

なお、現在オーガニックワインは1アイテムのみですが(赤ワインブレンド)、ピノ・ノワール、シャルドネでもつくる予定です。

Q.ドイツのオーガニック農産物認定機関“BCSエコ”の認定を受けているそうですが?
A.BCSエコはかなり厳しい認定基準の機関です。我々は、南米ということだけでなく、インターナショナルスタンダードとしてのオーガニックの認定を取得したかったので、評判の高いBCSエコを選びました。

Q.チリ国内でのオーガニックへの意識はいかがですか?
A.現在のチリではまだまだ環境への意識が低い状態ですので、オーガニックワインへの関心もほとんどありません。これからですね。

Q.貴社のアイコンワイン“OSIO”(オシオ)“ピノ・ノワール・プロジェクト”から誕生したということですが?
A.チリNo.1のピノ・ノワールをつくることを目的とし、ブルゴーニュのドメーヌ・ジャック・プリュールのマルタン・プリュール氏の協力の下、1999年にこのプロジェクトを発足させました。
他のワイナリーと違うものをつくりたいと努力した結果、ワインの品質が飛躍的に向上し、オシオが生まれました。
冷涼で良い区画の樹齢の高いブドウを選び、収穫量を抑え、より凝縮した味わいに仕上げています。昨年度はチリのベスト・ピノ・ノワールにも選ばれました。



Q.チリワインの特徴と魅力は?
A.南北に長いチリにはさまざまな気候があるので、各地に最適なブドウ品種があり、多様性のあるワインをつくることができます。当社でも、北はエルキ・ヴァレーから南はビオビオ・ヴァレーまで42の農園に適した品種を栽培し、最終的にはブレンドを行って良いものをつくる努力をしています。

また、チリは四方を自然の要塞に守られているので、他から病原菌の進入がなく、フィロキセラ禍もありませんでした。チリがブドウ栽培の楽園といわれるゆえんです。

Q.地域による特徴には、どんなものがありますか?
A.例えばチェンバロンゴのあるコンチャグア・ヴァレーとカサブランカ・ヴァレーで比較すると、チェンバロンゴの成長期の気温は28~29℃ですが、カサブランカは23~24℃と冷涼で、収穫時期も異なります(チェンバロンゴは3月中旬、カサブランカは4月の第2週頃)。
同じピノ・ノワールでも、チェンバロンゴではカシスやブラックベリーの濃い香りのするワインになりますが、カサブランカでは、フレッシュで花のような華やかな香りを持つワインになります。




<テイスティングしたワイン>   (S)はスクリューキャップ

White Wine

Cono Sur Chardonnay Varietal 2005(S)
冷涼地からのブドウを使用しているため、しっかりとした酸がフレッシュで心地良く、非常にコストパフォーマンスのよいシャルドネ。
バラエタルシリーズには、シンセティックコルクとスクリューキャップが使われています。

Cono Sur Vision Sauvignon Blanc Single Vinyard “Loma Roja” 2005(S)
ソーヴィニヨン・ブランのアロマと味わいが楽しめるワイン。
ヴィジョンシリーズは、シングルヴィンヤード(単一畑)からのブドウを使い、ワインメーカーが自由につくっているワインとのこと。


Red WIne

Cono Sur Organic Cabernet Sauvignon Carmenere 2005
紫の色が鮮やか。スパイシーさとやわらかさ、まろやかさが相俟って、飲み口良好。
チェンバロンゴのオーガニック栽培によるカベルネ60%、カルムネール40%をブレンド。

Cono Sur 20 Barrels Limited Edition Cabernet Sauvignon 2004
タンニンが豊かで、しっかりと凝縮した素晴らしいカベルネ。

20 Barrelsは、1995年にイギリスからのリクエストで品質の高いピノ・ノワールを20樽選んだことに始まるシリーズ。
実は“ピノ・ノワール・プロジェクト”はこのために始まったもので、ブドウを厳しく選別し、収量を落とし、樽熟成の期間も長くしています。
アドルフォさん曰く、「6~7年熟成させて楽しめます」とのこと。



Pinot Noir

Cono Sur Pinot Noir in Transition to Organic 2005
果実味が豊かで、酸味もしっかりとしたチャーミングなピノ・ノワール。
100%チェンバロンゴでオーガニックに転換中の畑からのブドウでつくられています。
08年ヴィンテージから正式にオーガニックワインとしてリリースします。

Cono Sur Reserve Pinot Noir 2005(S)
果実の甘さがありながらも引き締まったアタックで、凝縮感があり、余韻も長め。
リザーヴシリーズは、樽熟成させたキュヴェを高い比率でブレンドした、比較的クラシックなレンジに仕上がっています。

Cono Sur OSIO Pinot Noir 2004
深いガーネット。少しモワモワ感があり、スモークベーコンのような燻したニュアンスと豊かな果実味、濃縮感があります。年間3000本という超限定品。
“OSIO”はスペイン語で“余暇”の意味。「家族や友人と一緒にゆっくり飲んで、リラックスして過ごしてほしいということから名づけました」とアドルフォさん。


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インタビューを終えて

弱冠26歳という若さでチーフワインメーカーに就き、その実力を発揮してきたアドルフォさんは、2005年度のチリのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれました。
そのワインメーカーとしての腕もさることながら、経営でも手腕を発揮し、コノ・スル社の業績をどんどん伸ばし続け、スクリューキャップや新プロジェクトにも積極的に着手し、確実に成果を出しているやり手です。

「スクリューキャップはマーケティング的な側面から始めましたが、テクニカル面でも効果があることがわかってきて、今後は非常に期待しています」とアドルフォさんは言います。

ニューワールドと言われながらも、実は古い体質を持っているチリで、さまざまな革新を行ってきたアドルフォさんとコノ・スル社は、クオリティの高いワインをコストパフォーマンス抜群のプライスで提供しています。これはコノ・スル社と彼の努力の賜物で、私たち消費者にとっては大歓迎です。

今後は、どんなことで私たちを驚かせてくれるでしょうか?

まずは、オーガニックに移行中のピノ・ノワールとシャルドネの本格リリースが待たれるところです。



右はアジア担当輸出マネージャーのゴンザロ・マリナさん


取材協力:株式会社スマイル

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第24回 Dominio del Plata@「キャッチ The 生産者」

2009-03-01 09:51:57 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年7月11日)

第24回  Susana Balbo  <Dominio del Plata>

今回のゲストは、アルゼンチンのドミニオ・デル・プラタのオーナーであり、チーフワインメーカーであるスザンナ・バルボ さんです。
スザンナさんと夫のペドロさんは、日本で初めて開催されるアルゼンチンワイン試飲会のために来日しました。



<Susana Balbo>
1956年4月9日生まれ。
1981年に醸造学科を卒業後、さまざまなワイナリーのワインメーカーを経て1999年にドミニオ・デル・プラタ設立を決意。
2001年にワイナリー完成。現在はドミニオ・デル・プラタのオーナー兼チーフワインメーカー。
2006年3月、アルゼンチンワイン協会会長に就任。

夫のPedoro Marchevskyさんとは1994年に出会い、1995年に結婚。ペドロさんはドミニオ・デル・プラタのオーナー兼ヴィンヤードマネージャーを務める。


アルゼンチン初の女性ワインメーカー

スザンナさんはアルゼンチン初の女性ワインメーカーとして知られています。
数々のワイナリーで活躍し、また、アルゼンチン人として初めてヨーロッパのワイナリーのコンサルタント を務めてきましたが、ペドロさんというパートナーと出会い、2人のワイナリー、ドミニオ・デル・プラタが誕生しました。

その一方で、スザンナさんは2006年3月からWines of Argentina(アルゼンチンワイン協会)の会長に就任し、アルゼンチンワイン界の発展に努めています。

スザンナさんは、まさに現在のアルゼンチンワイン界を代表する人物といえます。


Wines of Argentinaについて

Q.Wines of Argentinaはどんな組織?
A.12年ほど前、アルゼンチンワインのブランドを確立するために設立されました。アルゼンチンワインを世界中のみなさんに飲んでいただくこと、品質の高さを知っていただくことを目的として活動しています。

Q.参加しているワイナリー数は?
A.仲の良い10のワイナリーで“Top 10 Association”をつくったのが始まりで、その後のAVA(Argentine Viticulture Association)を経て、Wines of Argentinaになりました。現在は、小さいところから大手まで、さまざまな規模の約100のワイナリーが参加しています。

Q.この3月に会長に着任したということですが?
A.それまでも取締役ではありましたが、前会長の退任により私が会長職を引き継ぎました。取締役会では女性は私一人だけでした。

Q.アルゼンチンでは、ワインづくりにかかわっている女性は少ないのでしょうか?
A.25年前は女性は私1人でした。今は女性のワインメーカーは30人くらいいると思いますが、まだまだ男性社会かもしれませんね。

Q.男性社会のアルゼンチンのワイン業界で、女性であるあなたが協会の会長に選ばれた理由は?
A.私はこの25年、真面目に正しい姿勢でワインづくりに励んできました。もちろん夫の助けがあったからですが。

得た知識や情報は惜しみなく他のワイナリーとシェアしてきましたし、そのオープンな姿勢と偏見を持たない態度、品質の高いワインをつくってきた実績が認められたからではないでしょうか。

アルゼンチンワインには“変革”が必要だといわれています。そのためには、ワイン以外のさまざまな業界を巻き込んで実施する必要があり、それには私が適任だと思われたことも、理由のひとつのようです。

Q.それはどのような変革ですか?
A.アルゼンチンワインを国際市場で受け入れられるような商品スタイルにしたいと考えていますので、そのためには、品質向上を目的とした技術革新が必要です。

Q.現在の輸出の状況は?
A.Wines of Argentina に参加するワイナリーの生産量の90%が輸出向けで、アメリカ、イギリス、ブラジル、カナダ、ロシア、ラテンアメリカ諸国、ヨーロッパ・・・と続き、日本は第9位です。

Q.アジアのマーケットについてはどのように考えていますか?
A.今回、香港と中国と日本で試飲会を行いました。毎年、世界25都市で試飲会を行っていますが、アジアでは初めての試みでした。非常に手ごたえがありましたので、今後アジアでも定期的に開催していけたらと考えています。

Q.国内市場の現状はどうなっていますか?
A.アルゼンチンでは、政治的かつ経済的問題から他国との国際交流がほとんどできなかった時期がありましたので、ワインは国内の嗜好を中心に、昔ながらの、古臭くてちょっと酸化したようなものがつくられてきました。

ですが、7年前くらい前からだいぶ様子が変わってきました。まず、インターナショナルなワインが好まれるようになり、安いワインをガブ飲みするというスタイルから良いワインを少しずつというように、飲み方も変わってきました。

70年代の終わり頃の国民一人当たりのワイン年間消費量は95リットルでしたが、現在は30リットルという数値がそれを物語っています。これは世界的な傾向(量より質)とも一致しています。

Q.ワインの消費量が減ったことについて、なにか対策は?
A.ワインを飲むためのさまざまな機会を提案したいと考えています。例えば、ゆっくり食事をしながら良質のワインを飲むディナータイムとか、考えれば色々ありますものね。

Q.アルゼンチンで人気の品種は?
A.アルゼンチンに昔からあるトロンテスは、かつては低い品質のワインが多かったのですが、現在はクオリティが向上し、再発見されている品種です。

他には、白ではソーヴィニヨン・ブラン、赤ではマルベックはもちろん、メルロが人気です。

Q.確かに、アルゼンチンといえばマルベックですが、その特徴は?
A.非常に恵まれた栽培条件にあるため、ブドウの房を完熟した状態で木に付けておくことができ、タンニンがよく成熟したブドウが得られます。色に深みがあり、ワインになった時点ですでに心地良く飲むことができ、長く熟成させることもできます。

早く飲みたい人にとっては、フルーティで甘さのあるタンニンのワインとして楽しめ、長く熟成させてワインのストラクチャーを楽しむ、ということができる品種です。



Dominio del Plataについて

Q.ドミニオ・デル・プラタのコンセプトは?
A.1)正確なヴィティカルチャー、2)継続可能であること、3)醸造における高い品質、4)愛と情熱です。

1)まず、確実な技術と知識に基づいてブドウを育てることです。畑はヴィンヤードマネージャーである夫のペドロがブドウの成長をフォローしています。自分の目で見て細かくチェックし、プロセスの確認をすることが大事です。

2)子供たちに今のきれいな環境を残したいので、それを守るために長く続けられるプロジェクトが必要です。すべてオーガニックだから良いというわけではなく、不意のアクシデントにも対応できなければなりません、オーガニックよりも幅の広い統合的なコンセプトで継続していければ、と思っています。

3)品質の高いワインをつくるには、まず醸造知識が必要ですが、20数年の経験でそれは実現できるようになってきていますし、最新の技術にも対応したいと思っています。

4)ワインづくりには愛と情熱が欠かせません。自分ひとりだけでなく、家族一丸となって取り組んでいくことが大事だと思っています。

Q.ワイナリーのあるAgrelo(アグレロ)はどのような土地ですか?
A.地域はメンドーサで、標高は1000mあり、湿度20%くらいの半砂漠です。非常に乾燥しています。冬は寒く、夏の日中は暑いですが、夜になると14~18℃くらいまで気温が下がります。1日の気温の差が激しいので、ブドウの色付きが良く、黒ブドウに最適な場所といえます。「アグレロ」は「粘土」の意味で、実際ここの土壌は粘土質です。

Q.ワインづくりで重要な要因はテロワールでしょうか?品種でしょうか?
A.メンドーサでは雹が降ることがあり、場合によってはすべてを失うこともあります。そのため、テロワールも品種も大事ですが、人的な要因も大きな影響を与えます。

例えば隣り合った土地で、手のかけ方の違うブドウからワインがつくられた時、それは同じテロワールを持つワインといえるでしょうか?ワインは人がつくるものです。材料が良いか悪いかはもちろんのこと、生産者のパーソナリティが反映されます。これが“作者のワイン”で、“場所のワイン”という考え方とは対立するでしょう。私は良いパーソナリティを持ったワインを目指しています。

Q.ドミニオ・デル・プラタでは、アルゼンチンでは珍しいプティ・ヴェルドとカベルネ・フランを栽培しているようですが?
A.私のつくるワインにこの2つの品種が必要だったからで、ボルドースタイルの“ブリオーソ”にブレンドしています。カベルネ・フランは2ha、プティ・ヴェルドは1haですが、2001年に自分たちで植えました。植樹率は8000本/haです。

Q.普段はどのようにワインを楽しんでいますか?
A.アルゼンチンの料理はヨーロッパ風や地中海風のものが多いので、白ワインのトロンテスなどはサラダや野菜料理に合わせています。

アルゼンチンの主食は“肉”といっていいほど、1人あたり年間90kgも牛肉を食べます。肉にはマルベックの赤ワインですね。パスタ類もよく食べます。肉、サラダ、シチュー、パンやパスタ、といった組み合わせの食事が多いです。

Q.アルゼンチンワインと日本の食事との相性はいかがですか?
A.私は初めて日本に来ましたが、素材の自然の香りを生かして調理され、また、魚介料理がとてもきれいに作られていたことに感心しました。日本の食事はバラエティ豊かなので、アルゼンチンのワインともピッタリ合うものがあるはずと思いました。

アルゼンチンワインは薀蓄を語るためのワインではなく、飲むためのワインですから、色々な料理に合わせて楽しんでほしいと思います(ペドロさん談)。


<テイスティングしたワイン> 

Crios


Crios Trrontes 2005
Crios Malbec 2005

“Crios”は“子供たち”のこと。“Susana Balbo”シリーズのレベルに達しないキュヴェや若木からのワインがCriosになります。

ラベルにはスザンナさんの大きな手と子供たちの小さな手が描かれていますが、

「ラベルの子供たちの手は小さいですが、今では子供たちの身長は私よりはるかに大きく、手も大きくなりました」と笑うスザンナさん。

トロンテスはフレッシュで爽やか、マルベックはやわらかくチャーミングな味わいで、Criosシリーズは全体的にやさしい印象があります。毎日飲みたくなるワインです。


Susana Balbo


Susana Balbo Malbec 2004
Susana Balbo Cabernet Sauvignon 2003
Susana Balbo Brioso 2003

スザンナさんの手がけるシリーズ。その年の最高のブドウを選び、より複雑かつ繊細な味わいとアロマを追求したワインです。

マルベックもカベルネもエレガントなタンニンが素晴らしく、フィネスを感じます。

ブリオーソはカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、マルベック、プティ・ヴェルド、カベルネ・フランをブレンドしたボルドータイプ。ブドウは完熟したものを使っているので、タンニンに丸みが出ていて、飲みやすく心地良いワインです。まだ若いですが、長期熟成が期待できそうです。


Ben Marco


Ben Marco Malbec 2004
Ben Marco Cabernet Sauvignon 2004
Ben Marco Expresivo 2003

ペドロさんの手がけるシリーズで、ブドウ本来の味とアロマをそのままワインに表現することを目指しています。

マルベックはやわらかく、カベルネにはしっかりしたタンニンを感じます。

エクスプレシーボは、マルベック、カベルネ・ソーヴィニヨン、ボナルダ、シラー、タナの5種類のブドウをブレンドしたもの。ボナルダは70年という樹齢の木(ラベルに描かれているもの)のブドウも使われています。まだまだ固いものの、酸味が大変しっかりとしているので、もうしばらく辛抱すると素晴らしい味わいになりそうです。


 ブドウ園とシエスタ
“シエスタ”とはランチ&お昼寝休憩のこと。
ブドウ園では朝の8時から12時まで働き、12時から16時までがシエスタタイム。
その後16時から20時までもうひと働きします。お昼休みが長いのは、日中は暑くて仕事にならないからだそうで、なるほど合理的なシステムです。
休憩時間が4時間とたっぷりあるので、ランチにワインを1杯飲んでも、お昼寝すれば全く問題ありません。
ブドウ園で働く人たちはお昼になるといったん家に帰り、ゆっくりとシエスタをむさぼります。

一方、ワイナリー(ファクトリー)で働く人たちの勤務時間は朝8時から夕方17時までで、お昼休みは1時間。都会のオフィスと全く同じで、これでは昼休みにワインを1杯というわけにはいかないようです。



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インタビューを終えて


スザンナさんと夫のペドロさんはどちらも離婚経験者で、それぞれ2人ずつ子供がいました。1994年に出会い、1995年に結ばれた2人と4人の子供たちは一緒に暮らし始めます。



家族で集まった時の写真を色々と見せてもらいましたが、本当に仲の良い家族で、2人が4人の子供たちに分け隔てない愛情を注いできたことが手に取るように伝わってきます。そうした2人の愛情を一身に受けて成長した子供たちは、ドミニオ・デル・プラタのワインのラベルデザインを手がけたり、農業技術者になったり、醸造学や経営学を大学で勉強中と、両親の志を継ぎつつあります。

スザンナさんがワインづくりで得た知識や情報を惜しみなく他の人に提供してきたことは、4人の子供たちに愛情を注いできたことと通じるものがあります。彼女の母性による深い愛情は、これからのアルゼンチンワイン界の力強い支えとなってくれること間違いなしです。

もちろん、夫と子供たちという家族の愛情に支えられたスザンナさん自身の今後の活躍も期待大ですね。

今回、日本で行われたアルゼンチンワインの試飲会では、かつてのイメージを覆す素晴らしい品質のワインが目白押しでした。

変革を遂げつつあるアルゼンチンワインは、今後要チェックです!

    
取材協力:アルゼンチン大使館


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