静岡県の地場産品を積極的にPRする県の関連団体「静岡県産品愛用運動推進協議会」で、『静岡こだわりの逸品ガイド』というホームページを作っています。
私はここで、県内の体験施設の紹介と、「しずおかの味創作クッキング」というコーナーを担当しています。後者は女子栄養大学講師の仁科悳代(のりよ)先生の料理工房におじゃまして、まぐろや桜えびなど静岡の特産品を使った6品ほどの創作料理を教えてもらいます。
取材の記録程度の写真しか撮れない私にとって、調理方法を聞きながら、手順と完成品を美味しそうに撮るというのは至難の業ですが、デジカメの性能になんとか救われています。原稿はほとんど先生が用意してくださるので、こちらは原稿料をもらって料理写真を撮る勉強をさせてもらうようなもの。なんとなく申し訳ない気もします。
現在、サイトに掲載されているレシピは、ちょうど去年の今頃、取材したものです。『朝鮮通信使』の脚本執筆で疲労困憊していたときで、この仕事はつかのまの清涼剤のようでした。ただし、せっかく先生にマンツーマンでご指導いただいたのに、自分で作る時間も気持ちの余裕もなく、映画が完成するまでは悲惨な食生活が続き、体重が落ちたのはよかったものの、虫歯や抜け毛、視力減退、肩こり偏頭痛等で、しばらく病院通いが続きました。まともな食事をとらないと創作の仕事はできない、と痛切に実感しました。
今日は1年ぶり、第2回目の取材。仁科先生は、1回しか会っていない私に「真弓ちゃん、アレルギーは大丈夫?」ときさくに声をかけ、「そろそろ花粉が・・・」と答えると、即座に「さつまいもよ、さつまいも!」と、今回のレシピの一つ『さつまいもとリンゴの重ね煮』を実演してくださいました。
さつまいものビタミンCは熱に比較的強く、アレルギーに効くそうです。先生は若い頃、お母様から“お袋の知恵”として教わって以来、30年以上、さつまいものおかげでアレルギーらしき症状を起こしたことがまったくないとのこと。レシピはホームページで公開する前に、私がここで勝手に書くわけにはいきませんが、かいつまんで紹介すれば、さつまいもとりんごを5ミリ程度の厚さに切って、鍋に重ねて並べ、水・バター・砂糖・少々の塩で煮込むという、いたってシンプルなもの。おかずにもデザートにもなりそうです。
先生は、取材用とは別に、朝食にぴったりの創作玉子焼きを教えてくれました。フライパンに溶き卵を流し、半熟になったら、ざく切りのエノキだけ、みかんの小口切り、カットチーズ3~4切れを乗せ、卵でくるんでオムレツ風に仕上げるというもの。調味料は一切不要で、みかんの酸味とチーズの塩味だけで十分。しそ、青のり、粉茶など香りのあるものを彩りトッピングにしてもよいそうです。
『さつまいもとリンゴの重ね煮』もお土産にたくさん用意してくれました。去年に比べ、痩せこけた私を見て、先生なりに気を遣ってくださったのかもしれません。
先週お会いした林隆三さんの「自分が好きで楽しんでやらないと、人を楽しませることはできない」という言葉を思い出しました。料理レシピの原稿を書く自分が、悲惨な食生活で不健康だったらお話になりませんよね。そんなライターが書く原稿は欺瞞以外の何物でもありません。
改めて宣言するまでもありませんが、今回のレシピは、自分が作って食べて楽しんでから書こうと思っています。