白堊スポーツ - since 2004.09.18

母校・盛岡一高や岩手のスポーツ情報、読書感想、盛岡風景などをお伝えします。

悪魔のいる天国ー星新一

2019年02月18日 | 読書

評価3

ショートショート36編。私のお薦め。

・こん
妻があることにショックを受けて「こん」と言ったきり話が出来なくなった。主人はてっきりキツネツキになってしまったと思ったのだが、医者の治療で治ってみると「・・・ど浮気したら承知しないわよ!」お後がよろしいようで(笑)。

・ピーターパンの島
現実しか見なくなってしまった未来では妖精や怪物など空想に浸る子どもたちは異端児として隔離される。そして、その子どもたちは海賊船で島に連れて行かれ・・・ショートショートの中の長編のおぞましい結末にゾッとする。

・告白
いつもの発作におそわれた男は粉薬を飲んで一息ついた。そこへ花屋の娘がやって来たので、男はからかおうと思って「私はあなたが好きだ。好きだと言ってくれ、言ってくれないのならこの劇薬を飲むぞ」と娘に告げる。と、その時、2度目の発作がやって来たので(劇薬とウソをついたいつもの)粉薬を飲む。すると娘はこう告げる「私のことをこんなに思ってくれてうれしいわ!大丈夫よ、その劇薬は胃薬とすり替えておいたから!どんとはれ・・・

山女日記ー湊かなえ

2019年02月17日 | 読書

評価5

いろいろな悩みを背負った女性たちが、山に登ることで自分なりの小さな光を見出して行く過程を描いた連作長編。いやー傑作!また山に行きたくなった!イヤミスの女王の幅広さに感服。さすが山ガール・湊かなえさん!

・妙高山
デパート勤務の律子はアウトドアフェアでダナーの登山靴に一目ぼれ。同期の由美と日本百名山の妙高山~火打山縦走に出発。結婚に悩む律子と不倫中の由美の掛け合い、和菓子の食事風景が楽しい。

・火打山
見合い会場で知り合った登山マニアの男性に誘われるまま山に入った美津子はどう見ても山には不似合な現代女性。でも一つも呼吸を乱すことなく男性の背中を追う。何故なら・・・途中で出会う妙高コンビとのやり取りが楽しい。

・槍ヶ岳
30代の私は、集団行動に嫌気がさし大学の登山部を辞めOLになった今も単独行だ。途中出会ったおじさん、おばさんコンビとはからずも一緒に山頂を目指すことになったその葛藤が手に取るようにわかる。おばさんの言動にかなりイライラ。

・利尻山
35歳独身の宮川希美は医者の妻におさまりしっかり者の姉に「結婚しろ」と説教をされることを覚悟の上、姉妹で山頂を目指す。しかし、山頂直前の正念場で姉から意外な告白を受けるのだった。心温まる姉妹の話。

・白馬岳
まだ離婚問題に結論を出しかねていた姉(利尻山で登場)は小学5年生の七花と妹・希美を伴って白馬岳へ向い、初登山の七花の逞しさに未来への希望を見出すのだった。

・金時山
(妙高山で登場した)律子、由美とデパート同期の舞子の目標は富士山登山だったが、恋人の大輔に誘われるまま登ったのは箱根の金太郎伝説発祥の地・金時山。富士山の眺望でも有名な山頂で舞子は「最高の登山デビューじゃないか」と感激する。

・トンガリロ
(姉と「利尻山」に登った)希美の友人・立花柚月がニュージーランド北島にあるトンガリロ国立公園のトレッキングツアーに参加した。同行するのは(「火打山」の主人公)神崎夫妻とここまでの短編に少しだけ登場した脇役たち。柚月は15年前の結ばれなかった恋人と見た風景にこれからの希望を感じる。

・カラフェスに行こう
どうにかして山仲間を作りたい引っ込み思案の(「利尻山」の)希美が一念発起、ヤマケイ涸沢フェスティバルに出かける。山仲間を見つけてついに雨女解消!

卒業ー東野圭吾

2019年02月16日 | 読書

評価3

刑事・加賀恭一郎シリーズ第一作目。恭一郎はまだ大学生。恭一郎とその恋人・沙都子の親友・祥子、波香が謎の死を遂げる。自殺か他殺か、アパートの密室、高校恩師の茶室での事件を追う二人に衝撃の真実が・・・

剣道の試合、茶会を中心に展開するストーリーに新鮮味を感じるものの、茶会でのトリックがあまりにも難解で途中何ページも読み飛ばして読書放棄寸前だった(笑)。結果的には真犯人を知りたくて読了したが、作者の若い頃の作品なので謎解きに終始した感があり人物の掘り下げも浅い。親友が亡くなったにしては登場人物があまりにも淡々とし過ぎでかなりの違和感。

東條英機処刑の日ー猪瀬直樹

2019年02月13日 | 読書

評価5

「ジミーの誕生日の件、心配です」

昭和23年12月初頭に書かれた子爵婦人の日記の謎を追いながら占領期の昭和史を探る猪瀬直樹の力作!ポツダム宣言受諾、現・明仁天皇の疎開生活と避難作戦、日本降伏、宮城占拠事件、米軍の占領政策、東京裁判、A級戦犯7名の絞首刑、憲法草案等々、興味深い内容満載!いろいろな分野を掘り下げる道標になるだろう一冊。

みなさんは知っているだろうか?

東京裁判でのA級戦犯が起訴された日が昭和天皇の誕生日(4月29日)であることを。東京裁判が開廷(昭和21年)した日と新憲法が施行(昭和22年)された日が5月3日であることを。東條英機ら7人のA級戦犯が処刑された日(昭和23年)が現・天皇の誕生日の12月23日であることを・・・占領期における不思議な日付の符号である。

キャロリングー有川浩

2019年02月11日 | 読書

評価4

クリスマスに倒産することが決まった子供服メーカーに勤める主人公・大和俊介は同僚の折原柊子との恋愛に終止符を打つ。そんな中、会社で並行営業していた学童に通っていた田所航平(小6)の心は両親の離婚問題で揺れていた。幼い頃に同じような境遇にいた大和は航平の「両親の離婚を止めたい」という願いを叶えるため、柊子とともに航平の父親を訪ねる。そこへ、父親の勤務する整骨院の借金問題、詐欺、誘拐と難問が重なり一挙に怒涛の展開に・・・

久し振りの有川浩作品は恋愛小説、サスペンス、家族小説のエキス満載!さすがの中年(初老)男も最後はウルっとなってしもうたのでした~♪やるな~有川浩!