2月13日 読売新聞編集手帳
日本銀行本店など数々の名建築を残した辰野金吾は、
「国立銀行と中央駅と議院を造り上げることが建築家の本懐」と語っていたという。
三つ目は果たせなかったものの、
日銀に続いて東京駅も造った。
同じ赤レンガのアムステルダム中央駅がモデルと言われたりするが、
あまり似ていない。
むしろ、皇室用の正面玄関を中心として左右に大ホールを配したあたり、
次に手がけたかった議事堂を意識したようにも見える。
空襲で両翼の円いドーム屋根と3階部分を失っていた駅舎が今、
大正初めの創建時の姿に復元されつつある。
内も外も灰色のシートで覆われて殺風景な状態が続くなぁと思っていたら先日、
“参院”側のシートが一部取り払われ、
玉ネギ形の壮麗な円屋根が一つ、姿を現した。
戦後ずっと見慣れた三角屋根とは、かなりイメージが違う。
皇居と東京駅を結ぶ行幸(ぎょうこう)通りも広い遊歩道に再整備されており、
重厚な駅舎が復活すれば、
首都のメーンストリートらしい景観を成すことだろう。
さなぎが衣を脱ぐような変身ぶりに目をこらしつつ、
明治の建築家が抱いた国づくりの熱き思いを想像している。