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薔薇の下で“竜虎”相まみえたはずなのに

2012-03-04 11:09:50 | 編集手帳



  3月2日付 読売新聞編集手帳


  古代ローマには、
  天井に薔薇(ばら)の花を飾った部屋で交わす会話は秘密にする
  習わしがあったという。
  英語の「アンダー・ザ・ローズ」(薔薇の下で)には
  「内緒で、秘密に」の意味がある。

  「薔薇」の濁点を取れば「腹」になる。
  ヤジの濁りに邪魔されない場所で消費増税などをテーブルに載せ、
  腹を割って話したのかどうか。
  ご両人は否定しているが、
  野田佳彦首相と谷垣禎一自民党総裁が先月25日、
  極秘に会談したと報じられている。

  フランスの元駐日大使で詩人のポール・クローデルに短い薔薇の詩がある。
  〈薔薇曰(いわ)く 
   われをまもるもの 
   そは刺(とげ)にあらずして 
   匂(におい)〉(山内義雄訳)。

  野党の協力なしに法案の成立は期しがたい。
  谷垣氏は谷垣氏で、
  政権の足を引っ張るだけでは
  自民党への支持が広がらないのを承知しているはずである。
  「刺」を不毛に刺し合う関係から、
  手を携えて政策の花を咲かせ、
  芳しい「匂」を共同制作する関係に移る兆しだとすれば、
  極秘会談は咎(とが)めることでもない。

  それにしても、
  である。
  薔薇の下で“竜虎”の巨頭が相まみえた…
  という感じがいっこうにしないのは不思議である。
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