3月3日 海外ネットワーク
中国では5日から、
向こう一年の政策を話し合う全国人民代表大会(全人代)が開かれる。
今回の全人代は現在の体制が有終の美を飾るために
どのような方針を打ちだすのかが焦点である。
しかし内外の関心はすでに
半年先の共産党大会に向けた次の指導部の体制に移っている。
5年に一度開かれる中国共産党大会で晴れに舞台に立つ9人の男性は、
党最高指導部の政治局常務委員である。
“中国13億人の国民を率いる9人”と呼ばれている。
中国社会の隅々にまで強力な統制力を誇る共産党。
その巨大な組織のトップに位置するのが政治局常務委員の9人。
胡錦濤総書記を筆頭に9人の序列も厳密に定められている。
今年秋の共産党大会で胡錦濤氏は引退。
次の世代のリーダーとして来年には
習近平氏(58)が次の国家主席に、
李克強氏(56)が首相にそれぞれ就任するとみられている。
他のメンバーは年齢などを理由に全て引退するとみられ、
残る7つの椅子をめぐるせめぎあいが起きている。
中国では権力が交代する時、
激しい権力闘争が繰り広げられてきた。
今回注目される勢力のひとつは習氏が代表格である太子党。
太子とは中国語でプリンスを意味する。
かつての党幹部の子どもなど既得権益層に近いグループとされている。
もうひとつのグループが
党の青年組織である共産主義青年団である。
李克強氏はこちらのグループで、
地方勤務を経験してきたたたき上げの人材が多くいる。
7つの椅子をどちらが多く占めるのか、
ふたつのグループによるポスト争いに国の内外から注目が集まっている。
ところが先月、党の中央を揺るがすような出来事が起きた。
舞台となったのは四川省成都。
ジャイアントパンダの生息地として知られ世界中から多くの観光客が集まる。
旧正月の終わる2月6日、
成都にあるアメリカ総領事館に1人の男性が駆け込んだ。
重慶の王立軍副市長である。
重慶は人口約3千万の中国最大の都市。
重慶のトップを勤めるのが習近平氏に近い太子党の有力者の簿熙来書記で、
先の共産党大会で最高指導部の政治局常務委員会入りが有力視されてきた。
アメリカ総領事館に駆け込んだ王氏は簿書記の右腕ともいえる人物だった。
地方政府の高官がアメリカへの亡命を試みたのではないか、
そうだとすると簿氏の昇格にも影響を与えかねないと騒ぎになった。
重慶で公安部門のトップだった王氏は
暴力団の撲滅や汚職の摘発の先頭に立ってきた。
中国本土のメディアがほとんど伝えない中、
報道規制を受けない香港のメディアは今回の騒ぎの背景を推測する記事を伝えた。
薄氏の側近の王氏が汚職捜査対象となりアメリカに助けを求めたが拒まれた、
というものである。
“重慶市によると王氏は北京にいて過労で体調を崩し
治療のため休暇に入ったと説明している。
この表現は通常、政治的粛正を意味する”(香港ATV)
中国の高官は記者会見で
王氏を監視下に置き調べていることを初めて明らかにした。
重慶の市民たちは今回の騒ぎの行方に強い関心を持っている。
有力候補と見られていた薄氏のお膝元で起きた騒動は、
秋の党大会に向けた熾烈なポスト争いの一端をうかがわせる元となっている。
注目の的と成っている簿熙来は全人代に先立って会議の場に姿を見せ
ひとまず健在ぶりを示した。
周近平氏と李克強氏を除く残り7つの椅子をめぐっては
有力な政治局員の間でせめぎあいが続いている。
“かぎ”を握ると見られるのは7月下旬ごろから開かれる非公式会議。
党指導部のほか江沢民前国家主席なども出席する可能性があり
党の重要人事などを話し合う。
この会議に向けて駆け引きが激しさを増すと見られる。
習近平氏は革命世代の息子ということで軍部と関係が深く
このため日本に対しては強硬な姿勢をとるのではないかという見方もある。
尖閣諸島の領有権をめぐる対立や
歴史認識の問題などでは
日本には一歩も妥協しないという姿勢をとり続けると思われる。
しかし一方で、
環境汚染対策や省エネなどの取り組みで
日本から協力を得る必要があるという認識も持っているとみられ
大枠では日中関係を良好に保つことを前提に
国内の対日感情も考慮しながら慎重に対日外交を進めていくと見られる。