goo blog サービス終了のお知らせ 

日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

砂浜

2014-04-05 08:00:00 | 編集手帳
3月20日 編集手帳

吉井勇は帯を解き、
つらい恋を嘆いた。
〈夏の帯 砂(いさご)のうへにながながと解きてかこちぬ身さへ細ると〉。
高浜虚子は、
誰かが戯れに描いた模様に詩を感じた。
〈春の浜大いなる輪が画(か)いてある〉

歌謡曲では、
『 錆(さ)びたナイフ』のマドロスが恋の 亡骸(なきがら) を埋め、
『いい日旅立ち』の旅人は思い出づくりに枯れ木で「さよなら」と書く。
砂浜とは不思議なもので、
たたずむ人をなにがしかの感傷に誘わずにはおかない。

その風景が日本人の心のふるさとだからだろう。
砂浜に親しむ潮干狩りの季節を前に、
いささか気分の重くなる予測である。

温室効果ガスの削減対策を講じないと、
今世紀末には海面が60センチ上昇し、
日本の砂浜の最大85%が消失するという。
国立環境研究所など34の研究機関が発表した。
政府は温暖化の被害を軽減する「適応計画」をつくる予定でいる。
実効ある対策にせよと、
その尻を叩(く予測だろう。

〈石川や浜の 真砂(まさご)は尽きるとも
 世に盗人(ぬすびと)の種はつきまじ〉。
盗賊石川五右衛門の作と伝えられる歌は、
下の句にアクセントを置いて引用されることが多い。
いまは上の句の、
不穏な仮定が気にかかる。
コメント