日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

鶴竜の桜鯛

2014-04-06 20:00:00 | 編集手帳
3月26日 編集手帳

哲学者デカルトの
( 我思う、 ゆえに我あり〉。
それをもじって、
〈我を去る。ゆえに我あり〉。
英文学者の 外山滋比古(とやましげひこ) さんがある随筆に 綴(つづ) った言葉である.

目立とうとせず、
自己主張を控え、
周囲の景色に溶け込むことで逆に、
その人の存在感が重みを増す…という意味だろう。
テレビカメラの前に立てば、
誰もが面白いことの一つも言わねば気の済まない「我が、我が」のご時世である。
我を去る人には、
めったにお目にかかれない.

あえて探せば大相撲のモンゴル出身、
鶴竜関(28)はその一人である。
きょう、
第71代横綱に昇進する.

白鵬のように闘志を表情にみなぎらすわけでもない。
引退した朝青龍のように土俵の外で話題を振りまくわけでもない。
土俵の砂をなめそうな独特の仕切りで客席を沸かせる日馬富士のように、
しぐさの華があるわけでもない。
地味にコツコツを積み重ね、
ゆえにこの日の我あり。
師匠はもちろんのこと、
ファンの感慨もひとしおに違いない.

「 故郷(くに) になしと抱く鶴竜の 桜鯛(さくらだい)」(変哲)。
照れくさそうに、
ちょっとぎこちなく、
桜鯛色に染めた笑顔がきょうは見られることだろう。
コメント

日中関係を守り抜く気迫

2014-04-06 18:00:00 | 編集手帳
3月24日 編集手帳

歴史を巡る中国の激しい日本批判が続く中、
十数年前に、
北京の中南海で聞いた言葉を思い出している。
「中国は、
 歴史で日本国民を刺激してはならない。
 日本は、
 歴史を忘れてはならない」。

日本人記者団を相手に、
当時の首相、
朱鎔基氏は確かにそう語った。
眉がつり上がり、
「鉄腕」、
「剛腕」などの異名をとった宰相の口調は穏やかだった。

その頃の中国のトップ、
江沢民国家主席は、
国内では愛国・反日教育を推進し、
日本には謝罪を求め続けていた。
ところが、
朱氏は、
「歴史」を振り回す中国自身をも戒めたのだ。
発言は、
共産党内外で批判されたという。

2年後、
小泉首相が靖国神社に参拝した。
今度は、
江氏側近の実力者で、
党中央組織部長だった曽慶紅氏が予定通りに訪日し、
日本で「妨害と雑音を排除し、
両国関係を一層発展させなければならない」と話した。

今のところ、
中国の指導者から、
大事な日中関係を守りぬこうとする気迫ある声は聞こえてこない。
党指導部内で進行中という、
習近平国家主席への権力集中と関係はあるのか。
やがてくる雪解けを信じつつも、不安を消せない。
コメント