4月20日 NHK海外ネットワーク
日本に年間15万トンにのぼる牛肉を輸出しているアメリカ。
国別の輸出先で日本は第3位である。
農家や農業団体の間からは日本の市場開放を求める声が高まっている。
南部テキサス州の畜産農家 ゲリー・フリッツさんは日本などに向け年間8万頭の肉牛を出荷している。
4月 日本とオーストラリアが牛肉の関税の引き下げで大筋合意したばかりとあって
今回のTPP交渉がアメリカ産牛肉が日本市場での巻き返しにつながれば
とフリッツさんは期待している。
(畜産農家 げいー・フリッツさん)
「何とかして早く決着してほしい。
市場を開拓してどんどん売りたい。」
いまフリッツさんを悩ませているのが干ばつの影響による牧草等のエサ代の値上がりである。
生産コストが上がり収益を圧迫しているためもっと販売先を増やす必要があると感じている。
現在アメリカから日本に輸出される牛肉にかけられている関税は38,5%。
この関税が撤廃されれば
自分の牛1頭あたりの売り上げが日本円で1万円近く増えるとフリッツさんは期待している。
(畜産農家 ゲリー・フリッツさん)
「牛肉を生産するにはコストがかかる。
何をするにも費用が必要。
日本に販売し続けるため関税撤廃を働きかけてほしい。」
一方の日本。
去年4月 牛肉を含む農産物5項目については関税撤廃の例外とするよう
衆参両委員会が決議した。
外国からの安い農産物の輸入が増えれば日本の農業が打撃を受けると懸念している。
4月17日 畜産や酪農などが盛んな北海道からは
オバマ大統領の日本訪問を前に農業団体が農林水産省を訪れ緊急の要請書を手渡した。
(JA北海道中央海 飛田稔章会長)
「なし崩し的なことにならないように北海道 全国の農業を守ってほしい。」
地域の重要な産業を守るために農産物5項目を関税撤廃の例外とするよう強く求めた。
(高橋はるみ 北海道知事)
「守るべきものはしっかり守って
農林水産業の人たちが安心して持続的な経営を続けられるように
そういった形の交渉結果にしてほしいと言うのが強い思い。」
もともとTPPは関税撤廃を原則とする高い水準の自由化を目指す協定としてスタートした。
先に11か国が参加していたところに後から日本が参入してきた形で
アメリカがその原則を日本1国のために大きく曲げるつもりはない。
国内の事情もそれを許さない。
2国間交渉のようにお互いの要求の間を取って落としどころを探るというのではなく
どこまでTPPの原則である関税ゼロに近づけられるのか
というのがアメリカの考え方である。
もちろん日本側の事情に最低限の配慮は示すにしても
アメリカとしては安倍総理が厳しい政治決断も辞さない覚悟を決めたからこそTPPへの参加を表明したはずだとして
強い姿勢で交渉を進めている。
さらにオバマ政権にはTPPの妥結を急がなければならない事情もある。
3月 アメリカ西部オレゴン州で行われたデモ。
アメリカでは去年の秋ごろからTPPに反対する声が徐々に広がり始めた。
TPPで貿易の自由化が進めば安い外国製品の流入や企業の海外移転を招き国内の雇用が失われる
と労働組合などが訴えている。
去年11月 政権与党の民主党の下院議員が連名でオバマ大統領に送った書簡では
TPPがアメリカに深刻な打撃をもたらすとして反対の考えを伝えている。
書簡に名前を連ねたのは150人余。
民主党下院議員の4分の3にのぼる。
オバマ政権を支えるはずの与党の議員が反旗を翻した形である。
大勢の議員が反対する背景には今後のアメリカ政治を左右する議会の中間選挙を11月に控えていることがある。
民主党議員の多くは労働組合の支援を受けているため
選挙を前に貿易の自由化に反発する労働組合の声を無視できなくなっているのである。
(民主党の議員)
「皆さんには全く同感だ。
職を奪う自由貿易協定には慎重であるべきだ。」
いわば身内からもTPP反対の声にさらされているオバマ政権。
選挙が近づけば近づくほどアメリカ国内でTPPへの支持を取り付けることは難しくなるだろうと専門家は指摘する。
(米ホワイトハウス 元経済政策担当 マシュー・グッドマン氏)
「有権者は貿易自由化が弊害をもたらすのではと懸念を抱いている。
今回の日本訪問でオバマ大統領が安倍首相とTPPで合意に至らなければ
次のチャンスは中間選挙が終わるまで来ないだろう。
アメリカの議会はいかなる貿易の問題も真剣に話し合おうとしないのは明らかだ。」
オバマ政権は
TPPが単なる貿易協定ではなく外交戦略上極めて重要で失敗するわけにはいかない
という考えである。
その戦略上の意義とは
中国が存在感を増すアジア太平洋地域に日米主導で経済秩序をつくることである。
そのなかには知的財産の保護や投資のルールも含まれる。
またTPPはオバマ外交の重要課題であるアジア重視の政策に欠かせない柱でもある。
しかしこの“アジア重視の政策”には実態を伴っていないのではという疑問の声が出ている。
その実績を強調するためにもTPP交渉の妥結が不可欠となっている。
今回の交渉がまとまらなかった場合
首脳会談が明確な期限というわけではないので
そこで早期妥結に向けた両首脳の強い決意が示され
時をおかずに日米の合意が図られれば大きな影響はないとみられる。
ただ今後の交渉で双方の隔たりが縮まらず合意できない事態となれば
交渉の勢いは急速に失われ長期化が避けられない。
TPPは日米両国が安全保障にとどまらず経済や化学など幅広い分野での戦略的な同盟関係を強化するうえでも柱である。
この戦略的に重要なTPPがとん挫すればアメリカのアジア重視の制作だけでなく日米同盟にも影を落とす恐れがある。
さらに警戒する必要があるのはアメリカ国内や他のTPP参加国の間で
保護主義から抜け出せない日本のせいで交渉が失敗したと批判が高まる恐れがある。
日本にとってもアメリカにとっても交渉の失敗は避けたいシナリオである。
日本に年間15万トンにのぼる牛肉を輸出しているアメリカ。
国別の輸出先で日本は第3位である。
農家や農業団体の間からは日本の市場開放を求める声が高まっている。
南部テキサス州の畜産農家 ゲリー・フリッツさんは日本などに向け年間8万頭の肉牛を出荷している。
4月 日本とオーストラリアが牛肉の関税の引き下げで大筋合意したばかりとあって
今回のTPP交渉がアメリカ産牛肉が日本市場での巻き返しにつながれば
とフリッツさんは期待している。
(畜産農家 げいー・フリッツさん)
「何とかして早く決着してほしい。
市場を開拓してどんどん売りたい。」
いまフリッツさんを悩ませているのが干ばつの影響による牧草等のエサ代の値上がりである。
生産コストが上がり収益を圧迫しているためもっと販売先を増やす必要があると感じている。
現在アメリカから日本に輸出される牛肉にかけられている関税は38,5%。
この関税が撤廃されれば
自分の牛1頭あたりの売り上げが日本円で1万円近く増えるとフリッツさんは期待している。
(畜産農家 ゲリー・フリッツさん)
「牛肉を生産するにはコストがかかる。
何をするにも費用が必要。
日本に販売し続けるため関税撤廃を働きかけてほしい。」
一方の日本。
去年4月 牛肉を含む農産物5項目については関税撤廃の例外とするよう
衆参両委員会が決議した。
外国からの安い農産物の輸入が増えれば日本の農業が打撃を受けると懸念している。
4月17日 畜産や酪農などが盛んな北海道からは
オバマ大統領の日本訪問を前に農業団体が農林水産省を訪れ緊急の要請書を手渡した。
(JA北海道中央海 飛田稔章会長)
「なし崩し的なことにならないように北海道 全国の農業を守ってほしい。」
地域の重要な産業を守るために農産物5項目を関税撤廃の例外とするよう強く求めた。
(高橋はるみ 北海道知事)
「守るべきものはしっかり守って
農林水産業の人たちが安心して持続的な経営を続けられるように
そういった形の交渉結果にしてほしいと言うのが強い思い。」
もともとTPPは関税撤廃を原則とする高い水準の自由化を目指す協定としてスタートした。
先に11か国が参加していたところに後から日本が参入してきた形で
アメリカがその原則を日本1国のために大きく曲げるつもりはない。
国内の事情もそれを許さない。
2国間交渉のようにお互いの要求の間を取って落としどころを探るというのではなく
どこまでTPPの原則である関税ゼロに近づけられるのか
というのがアメリカの考え方である。
もちろん日本側の事情に最低限の配慮は示すにしても
アメリカとしては安倍総理が厳しい政治決断も辞さない覚悟を決めたからこそTPPへの参加を表明したはずだとして
強い姿勢で交渉を進めている。
さらにオバマ政権にはTPPの妥結を急がなければならない事情もある。
3月 アメリカ西部オレゴン州で行われたデモ。
アメリカでは去年の秋ごろからTPPに反対する声が徐々に広がり始めた。
TPPで貿易の自由化が進めば安い外国製品の流入や企業の海外移転を招き国内の雇用が失われる
と労働組合などが訴えている。
去年11月 政権与党の民主党の下院議員が連名でオバマ大統領に送った書簡では
TPPがアメリカに深刻な打撃をもたらすとして反対の考えを伝えている。
書簡に名前を連ねたのは150人余。
民主党下院議員の4分の3にのぼる。
オバマ政権を支えるはずの与党の議員が反旗を翻した形である。
大勢の議員が反対する背景には今後のアメリカ政治を左右する議会の中間選挙を11月に控えていることがある。
民主党議員の多くは労働組合の支援を受けているため
選挙を前に貿易の自由化に反発する労働組合の声を無視できなくなっているのである。
(民主党の議員)
「皆さんには全く同感だ。
職を奪う自由貿易協定には慎重であるべきだ。」
いわば身内からもTPP反対の声にさらされているオバマ政権。
選挙が近づけば近づくほどアメリカ国内でTPPへの支持を取り付けることは難しくなるだろうと専門家は指摘する。
(米ホワイトハウス 元経済政策担当 マシュー・グッドマン氏)
「有権者は貿易自由化が弊害をもたらすのではと懸念を抱いている。
今回の日本訪問でオバマ大統領が安倍首相とTPPで合意に至らなければ
次のチャンスは中間選挙が終わるまで来ないだろう。
アメリカの議会はいかなる貿易の問題も真剣に話し合おうとしないのは明らかだ。」
オバマ政権は
TPPが単なる貿易協定ではなく外交戦略上極めて重要で失敗するわけにはいかない
という考えである。
その戦略上の意義とは
中国が存在感を増すアジア太平洋地域に日米主導で経済秩序をつくることである。
そのなかには知的財産の保護や投資のルールも含まれる。
またTPPはオバマ外交の重要課題であるアジア重視の政策に欠かせない柱でもある。
しかしこの“アジア重視の政策”には実態を伴っていないのではという疑問の声が出ている。
その実績を強調するためにもTPP交渉の妥結が不可欠となっている。
今回の交渉がまとまらなかった場合
首脳会談が明確な期限というわけではないので
そこで早期妥結に向けた両首脳の強い決意が示され
時をおかずに日米の合意が図られれば大きな影響はないとみられる。
ただ今後の交渉で双方の隔たりが縮まらず合意できない事態となれば
交渉の勢いは急速に失われ長期化が避けられない。
TPPは日米両国が安全保障にとどまらず経済や化学など幅広い分野での戦略的な同盟関係を強化するうえでも柱である。
この戦略的に重要なTPPがとん挫すればアメリカのアジア重視の制作だけでなく日米同盟にも影を落とす恐れがある。
さらに警戒する必要があるのはアメリカ国内や他のTPP参加国の間で
保護主義から抜け出せない日本のせいで交渉が失敗したと批判が高まる恐れがある。
日本にとってもアメリカにとっても交渉の失敗は避けたいシナリオである。