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ひかり野へ

2014-04-12 11:20:00 | 編集手帳
4月1日 編集手帳

入社して初めて上司に叱責された場所は居酒屋である。
初任地の地方都市に赴任した夜、
支局長がごちそうしてくれた。
好きな物を飲め、
食え、
と気前がいい。

若いから、
ほろ酔い加減になっても腹がすく。
お言葉に甘えて丼物を頼んだところ、
「ばかやろう!」とカミナリが落ちた。
「飯は自分の銭で食うもんだ」。
飯も酒も同じコメ仲間なのにむずかしいものだな…と、
注文を取り消したのを覚えている。

学校では教えてくれないルールが世間にはある。
きょう社会に巣立つ人たちも、
戸惑いながら職場になじんでいくのだろう。

折しも消費増税と重なった。
朝の駅には運賃表の真新しい看板が掲げてある。
初月給までは昼食などのやりくりに手持ちの蓄えで苦労するかも知れないが、
旅立ちの日が日本経済を立て直す変わり目にめぐり合わせたと前向きに考えてみるのもいい。

叱責も挫折も揚力に変える心身の軽やかさが若い人の特権である。
〈ひかり野へ君なら 蝶に乗れるだろう〉( 折笠美秋 )。
丼物の夜から
茫々(ぼうぼう) 三十余年、
いまやモスラにでも乗らなくては宙を舞えぬ身を憂えつつ、
はなむけの言葉とする。
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