4月11日 編集手帳
きのうの午後、
都内を走る電車の座席に腰かけていると、
若い男女の二人連れが前に立った。
新人同士が組になって営業に回る途中、
といった風情である。
車内によく聞こえる声で男性が話す。
「もっと会社の近くに住みたいんですけどね。
レンマのほうとか」。
レンマ。
さてどのあたりだろう。
「えーと、ネリマ(練馬)?」。
ひと呼吸の間があって、
女性が聞いた。
「あ、そう、ネリマ」と答えた男性の声は少し小さくなっている。
抑揚に関西風の響きがある。
地名の読み方はむずかしい。
関東育ちの人が大阪で暮らしはじめれば、
「 放出(はなてん)」や「 道修町(どしょうまち)」をきっと「ホウシュツ」「ドウシュウチョウ」と読んでしまうことだろう。
サラリーマン川柳に、
〈電話口「 何様なにさま ですか?」と聞く新人〉という句があったのを思い出す。
それは誇張としても、
社会に出たばかりの若い人にとっては、
電話の応対から酒席の作法、
果ては地名の読み方ひとつに至るまで、
ときに内心赤面しながら学んでいく季節に違いない。
「レンマ」という幻の地名を聞いて、
脳裏に「錬磨」の文字が浮かんだ。
一日一日、
磨かれて強くなる。
きのうの午後、
都内を走る電車の座席に腰かけていると、
若い男女の二人連れが前に立った。
新人同士が組になって営業に回る途中、
といった風情である。
車内によく聞こえる声で男性が話す。
「もっと会社の近くに住みたいんですけどね。
レンマのほうとか」。
レンマ。
さてどのあたりだろう。
「えーと、ネリマ(練馬)?」。
ひと呼吸の間があって、
女性が聞いた。
「あ、そう、ネリマ」と答えた男性の声は少し小さくなっている。
抑揚に関西風の響きがある。
地名の読み方はむずかしい。
関東育ちの人が大阪で暮らしはじめれば、
「 放出(はなてん)」や「 道修町(どしょうまち)」をきっと「ホウシュツ」「ドウシュウチョウ」と読んでしまうことだろう。
サラリーマン川柳に、
〈電話口「 何様なにさま ですか?」と聞く新人〉という句があったのを思い出す。
それは誇張としても、
社会に出たばかりの若い人にとっては、
電話の応対から酒席の作法、
果ては地名の読み方ひとつに至るまで、
ときに内心赤面しながら学んでいく季節に違いない。
「レンマ」という幻の地名を聞いて、
脳裏に「錬磨」の文字が浮かんだ。
一日一日、
磨かれて強くなる。