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セウォル号の無能の人よ

2014-04-26 08:15:00 | 編集手帳
4月22日 編集手帳

文字が乱れている。
〈ハイヒールを脱いで下さい/おちついて下さい/身のまわりの用意をして下さい…〉。
そのメモは東京・羽田の日本航空「安全啓発センター」に展示されている。

29年前の8月、
日航機が群馬・御巣鷹の尾根に墜落した事故で客室乗務員がつづった遺品のメモである。
死の戦慄が充満する機内でおのが恐怖心を押し殺し、
不時着する場合に備えて旅客を安全に誘導するべく、
機内放送の要点を書き留めたらしい。

何という違いだろう。
韓国南西部・ 珍島チンド 沖で沈没した旅客船、
セウォル号の船長(68)である。

航路の難所で休憩し、
入社半年の3等航海士に操船を任せる。
案内放送で旅客に船内待機を命じ、
自分は最初の救助船に乗る。
救助船の乗船者名簿に「一般人」と記入する。治療を受けた病院では、
濡れた紙幣をオンドル(床暖房)で乾かしていたとか。
韓国メディアの報道に「ウソでしょ」とつぶやいた人もあろう。
遺族は泣くに泣けまい。

良寛和尚の漢詩の一節を思い出す。
〈無能  飽酔(ほうすい)す 太平の春〉。
お客の命など知ったことかと、
わが身ひとつの天下太平に酔いしれた無能の人よ。
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