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北京秋天の記憶

2014-11-09 08:30:00 | 編集手帳

11月9日 編集手帳

 

その青い空の記憶は消えない。
初めて過ごした北京の秋。
ねじが緩んで 時折ペダルが落ちる自転車をこぎ、
人民服の群れに交じって陽光まぶしい街を走った。
四半世紀ほど前のことだ。

人々の服装がカラフルになり、
自転車が少なく なるにつれ、
空は白く濁っていった。
高度成長と環境破壊を並走させてしまった日本の過ちを繰り返していた。
社会の空気は、
明らかに「豊かさ第一」だった。

共産党政権が大気汚染対策に血眼になったのは、
国の威信をかけた2008年北京五輪の時だ。
ナンバーが偶数か奇数かで自動車の通行を制限した。
汚染物質をまきちらす工場の操業をやめさせた。

祭りの後、
汚染は再び加速する。
近年、
発がん性のある微小粒子状物質(PM2・5)を含む「濃霧」で覆われる日が多 く、
市民の不安は、
昔日の比ではない。

10日に北京で始まるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前に、
党はまたも、
青空確保に躍起だ。
首脳一 同で高層ビル群に上ってみるのもいい。
運が良ければ、
名高い「北京秋天」を楽しめる。
水墨画のような景色なら、
中国の現実をひと目で理解できる。

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