11月23日 NHK海外ネットワーク
イランの核交渉問題は10年越しの大詰めを迎えている。
イランと欧米など関係6か国はウィーンで閣僚級の交渉を続けていて合意の期限は24日である。
34年前からイランと国交を断絶しているアメリカもケリー国務長官が現地に入り
歴史的な合意を目指してぎりぎりの調整に当たっている。
世界中の企業がいま熱い視線をおくるイラン。
資源が豊富で人口7600万の巨大な市場である。
10月首都テヘランで開催された見本市では経済制裁の解除を見越して各国から209の企業が参加。
その数は去年より30%増えた。
産業機械や医療機器など様々な製品が展示ブースに並び
複数の日本企業も参加した。
(日本の産業機器メーカー 担当者)
「制裁解除になるのが近いと言うことで今回出展させていただいた。」
イランの経済界もこれまでにない期待を肌で感じると言う。
(イランの闘志が顧問会社 社長)
「イランに投資したいという外国人投資家が急激に増えている。」
イランが持つ市場としても魅力。
ヨーロッパでは核協議の進展を後押しする声の高まりにまでつながっている。
(投資フォーラム主催者)
「我々としてはイランの核問題の先を見据えてビジネスの力で外交を動かしたい。」
10月にロンドンで開かれたイランへの投資や貿易に関するフォーラム。
イラン大統領府も後押ししヨーロッパでは初めて開催された。
核開発をめぐるイランとの交渉の当事国であるイギリスとフランスの元外相も参加。
経済界が政治を動かす時が来たとして制裁の解除を求めて声を挙げるべきだとまで述べた。
(イギリス ストロー元外相)
「ビジネス界が圧力をかければ制裁解除に向けた動きも大きくなる。」
欧米などがイランとの関係改善に前向きなのは経済面の期待だけではない。
ここにきてイスラム国との戦いもイランへの接近を後押しする要因となっている。
イスラム国はイスラム教スンニ派の組織でイラクやシリアで勢力を伸ばしている。
イランはシーア派。
同様に国内で多数派のイラクのシーア派ともつながりがある。
イランはイスラム国の存在は自らにとっても脅威だと受け止め
イラクやシリアでのイスラム国との戦闘にひそかに加わっていることが次第に明らかになってきている。
イスラム国との戦闘を続けているイラクのシーア派民兵組織のパレード。
イスラム国と書かれた瓦を叩き割って気勢を上げる。
(パレードに参加した民兵組織のリーダーの1人 アブザハラ氏)
「イスラム国はイスラムを冒とくしている。
奴らはイスラムの組織ではない。」
アブザハラ氏は自分たちとイランとのつながりを明らかにした。
今年8月イスラム国との間で激しい戦闘になったと証言する。
そうした戦闘でアブザハラ氏の民兵組織は手助けを受けたのである。
(アブザハラ氏)
「イランはイスラム国の侵入ルートなどの情報を提供し支援してくれた。」
さらにイランがイスラム国との戦いに戦闘員を送り込んでいるという証言も得られた。
爆発物を作る特殊工作員の男性は
イスラム国と戦うため爆発物を作る訓練をイランで受けたと言う。
(特殊工作員)
「シリアでの戦闘にはイラン人が200~300人は参加している。
我々はイスラム国をせん滅させるまで戦う。」
イランと欧米などとの協議は核開発をめぐる交渉ではあるが
経済やイスラム国との戦いなど中東情勢全体にも大きな影響を与える可能性がある。
11月16日 NHK海外ネットワーク
約700万人が暮らすミャンマー最大の都市ヤンゴン。
電線による事故が相次ぐミャンマー。
今年6月には古くなって切れた電線が落下。
2人がこの電線に触れ感電して亡くなった。
(目撃者)
「雨が激しく降り電線が切れた。
よけようとする人に当たった。」
「みんなパニックになって逃げた。
振り向いたら犠牲者がいた。
感電して激しく震えている人もいた。
まるで地獄のようだった。」
ヤンゴンではこうした死傷者が出た事故が今年だけで100件以上起きた。
事故が多発するのは町中に張り巡らされた電線に問題があるからである。
日本の電線は電気が通る金属部分がカバーで覆われていて触れても感電しないようになっている。
しかしミャンマーの電線は金属がむき出しになっているいわゆる裸電線である。
さらに電線と電柱のつなぎ目部分が弱いため電線が切れやすい。
現地に技術指導を行う日本の専門家は
裸電線は別の問題を起こす原因にもなっていると指摘する。
金属線を電線にひっかけ違法に電気を引き込む“電気泥棒”。
無造作に枝分かれした電線は重みが増しますます切れやすくなる。
(JICA 西野稔さん)
「誰がどこに接続しているかよくわからない状態。
誰でも電線をひっかけに行くことができる。
電気をとっている人はいると思う。」
脆弱な配電設備の影響でミャンマーでは頻繁に停電が起きる。
ヤンゴンでは年間200件以上停電が起きる地域もある。
アジア最後のフロンティアと呼ばれ注目をあびるミャンマー。
しかし長年続いた軍事政権のもとインフラを整備するための資金や専門の人材が不足していたことが問題の背景にある。
電力が安定して供給される環境を作り日本企業の進出を後押ししたい
日本の大手商社と電気工事会社が連携して現地で技術者の育成に乗り出した。
20代の若者を中心に40人を指導している。
日本から来た技術者が電気が流れる仕組みや仕事の心構えなど安全管理の基本から丁寧に教えている。
(学生)
「日本の先生たちは早く的確な仕事をしていてすごい。
とても貴重な経験をしているので頑張って勉強したい。」
(住友商事 ヤンゴン事務所 渡辺達也課長)
「電気がなければ事業そのものが立ち行かないと認識しているので
将来我々のビジネスにも間接的に跳ね返ってくると思う。」
開発ラッシュに沸くミャンマー。
しかし企業が安心して進出できるようになるまでにはまだまっだ時間がかかりそうである。