11月13日 キャッチ!
去年9月にアボット政権が発足して以来
日本とオーストラリアは様々な分野で協力関係を拡大している。
アボット首相は就任した翌月にさっそく安倍総理大臣と首脳会談を行い
“日本はアジアの親友”と明言し日本との関係改善に前向きな姿勢を示した。
今年4月に訪日を果たすと
「経済や安全保障の分野で日本との協力関係を拡大」することで安倍総理大臣と一致。
7月には安倍総理大臣がオーストラリアを訪問し
懸案だったEPA経済連携協定の署名に至るなど2国間の関係は確実に深まっている。
そうしたなかオーストラリアの新型潜水艦の導入をめぐり日本の技術協力の可能性がにわかに浮上。
オーストラリア国内では反発の声も上がり
日本との協力関係を拡大させてきたアボット首相は難しい判断を迫られている。
11月1日 オーストラリア南西部アルバニーでのイベント。
オーストラリア軍とニュージーランド軍が第一次世界大戦の戦地に兵士を派遣してから100年を記念して開かれた。
当時約3万人の兵士を送るために40隻近くの艦艇がこの港を出発した。
船団の護衛には旧日本軍の“伊吹”が就いていた。
この日のイベントに参加した艦艇の中には海上自衛隊の護衛艦の姿もあった。
日本の参加を積極的に進めた地元の人がいる。
前アルバニー市長のミルトン・エバンスさんである。
祖父などが第1次大戦で中東などに赴いたというエバンスさん。
当時の兵士たちが務めを果たしたことに日本の貢献が大きいとして
その歴史を語り継ぐためにもイベントへの参加は必要だったと振り返る。
(前アルバニー市長 ミルトン・エバンスさん)
「オーストラリアの船団を導いた“伊吹”の重要性は歴史が示しています。
“伊吹”の名前はほかの船と共に公園の手すりに刻まれています。」
オーストラリアにとって記念のイベントは日豪関係の良好さを象徴するものにもなった。
アボット首相と安倍総理大臣との個人的な信頼もあって関係を深化させている日本とオーストラリア。
いま協力の分野を安全保障の面にまで広げ始めている。
10月に行われた江渡防衛相とジョンストン国防相の会談でオーストラリア側は
2020年代の導入を計画している潜水艦について日本の技術を取り入れられないか協力を求めた。
オーストラリアが現在保有している潜水艦6隻はスウェーデンなどの協力を得て国内で初めて建造された。
ところが初期の段階から音が大きいことなど様々なトラブルに見舞われた。
中国の海洋進出の活発化など安全保障の環境の変化から海軍力強化を目指すオーストラリア。
アボット政権は日本の潜水艦技術をどこまで求めているかは明らかにしていない。
しかしオーストラリア国内では日本で製造された潜水艦を購入するのではないかと伝えられている。
これを受けて造船業界は産業の衰退につながるとして大反発。
潜水艦は国内で造るとしたアボット首相の公約に違反するとして非難している。
抗議集会に参加した野党の指導者は第2次世界大戦で日本と戦ったことを引き合いに出した。
(労働党 ショーテン党首)
「政府は忘れたのか?
第2次世界大戦で366隻もの船が日本に沈められたことを!
船や潜水艦は国を愛する我々が造るべきだ!」
海軍の元幹部で2隻の潜水艦に乗った経験のあるピーター・ブリッグス氏は
太平洋とインド洋という2つの海に面したオーストラリアは
日本の潜水艦技術で十分かどうか検討しなければならないと指摘している。
(海軍元幹部 ピーター・ブリッグス氏)
「日本の潜水艦は日本での運用には適しているのでしょうが
オーストラリアが求める性能からすると航行距離や速度が足りません。」
11月10日 オーストラリア南部フリーマントルで開かれた潜水艦に関するセミナーでは
外国で建造される場合にはリスクがあると指摘された。
(戦略政策研究所 アンドリュー・デイビース氏)
「言葉や文化の違いから重大な混乱を引き起こす恐れがある。
日本からの潜水艦の輸入はオーストラリアにとって困難な挑戦だ。」
また外交の専門家は異論が出ている問題だからこそ十分な議論が必要だといる。
(ローウィー研究所 ローリー・メドカーフ氏)
「国内の反対や官僚体制を考慮に入れると日本との協力は容易ではありません。
プラスとマイナスの両面があることをアボット英検も理解しているでしょう。」
国内の反発を押し切って安全保障で日本との協力拡大に踏み切れるのか。
アボット政権は難しい判断を迫られている。
今回のオーストラリアの新型潜水艦をめぐる動きは日本側にとっても大きな意味がある。
日本政府は4月
武器や技術の輸出を原則禁止する武器輸出三原則を見直し
新たに防衛装備移転三原則を導入。
紛争当事国でなければ厳格な審査のもと武器や技術などの海外への移転を認めることにした。
仮に潜水艦をオーストラリアに輸出することになれば
方針転換後
武器の完成品移転の初めてのケースとなる。
オーストラリアが日本に協力を求めている潜水艦技術の内容は明らかになっていない。
その一方でドイツ企業が積極的に売り込みをかけているとも伝えられている。
オーストラリア政府の方針が示されるのは来年中に発表される国防白書。
安全保障をめぐる日本とオーストラリアの協力拡大はもとより
日本の武器移転の今後にも大きな影響を与えるこの問題に注目が集まりそうである。