4月27日 キャッチ!
イランの首都テヘランでは
西洋美術の展示会が開かれているが
そこで見ることができるのがピカソ作「画家とモデル」。
有名な作品群の1つで評価額は100億円は下らない。
このピカソの作品を含む展示会のすべての作品は
イランの美術館が所有しているものである。
春の訪れとともに古来の暦で新年を迎えたイラン。
首都テヘランの中心部にあるテヘラン現代美術館は19世紀以降の作品 約3,300点を所有している。
新年の連休中は普段の2倍の人手を記録した。
西洋美術の傑作30点を集めた展示会が始まったのである。
これらの作品がイランで同時に展示されるのは初めてである。
ゴーギャン作「頭のかたちをした花瓶と日本の版画のある静物」。
日本の浮世絵への強い興味がうかがえる。
ポロック作「インディアンレッドの地の壁画」。
抽象表現の有名なジャクソン・ポロックの最高傑作とも言われる。
評価額は約270億円。
日本でも5年前に展示された。
この他にもアンディ・ウォーホルなどの作品が並んでいるが
全てこの美術館の所蔵品である。
(来場者)
「本当に驚きました。
イランに本物があることを誇りに思います。」
「こんなに近くで見たのは初めてです。
最高の気分です。」
“東洋随一の傑作コレクション”とも評される美術館所蔵の西洋美術作品は約1,500点。
その起源はイスラム革命の前にまでさかのぼる。
当時イランでは親米の王政が西洋化を推し進めていた。
豊富な原油収入を財源にファラ王妃は洋画などの収集を開始。
総額数千億円ともいわれるコレクションを中心とする美術館を
1977年に完成させた。
ところがその2年後 イスラム革命が勃発。
王族は国外逃亡を強いられ
コレクションは2002年までの23年間
地下の収蔵庫に封印されることになったのである。
展示会を訪れる人々の様子に目を細める男性がいる。
フィル―ズ・シャフバジさんは革命のとき美術館の運転手だった。
学芸員らも逃亡したため急きょ収蔵庫の管理を任された。
(フィル―ズ・シャフバジさん)
「ここを下ったところが収蔵庫です。
重要な施設なので限られた人しか入れません。」
革命の混乱が続くなか
地下の収蔵庫に自ら入り
中から鍵をかけて過ごす日々が続いたと言う。
当初シャフバジさんは収蔵庫の番人が務まるか不安だった。
作品の状態を保つために入室や作品の貸し出しを厳しく制限する必要があるからである。
(フィル―ズ・シャフバジさん)
「何も怖がることはないと自分で自分を落ち着かせていました。」
そんなシャフバジさんの支えとなったのはほかならぬ作品の数々だった。
始めは作者さえも分からなかったが
専門書などを通じて作品の価値を知るにつれ
コレクションを全力で守るという決意が強まったと言う。
(フィル―ズ・シャフバジさん)
「当時の館長からやっかいな客に作品を見せろと脅かされても
身の危険を顧みず中に入れませんでした。
ライオンのようになって守ったのです。」
定年までの約30年間収蔵庫内の作品は失われることなく
自らの役目を務めあげたシャフバジさん。
その後は
作品に関する様々な逸話も知る“生き字引”としてカタログなどの作成を手伝っている。
(フィル―ズ・シャフバジさん)
「作品は世界の共有財産です。
世界中の人に見てほしいと願っています。
それが自分たちと芸術のためになるのです。」
シャフバジさんの願いがかなったのが
6月以降ローマなどでの展示会が計画されている西洋美術コレクション。
イランと海外を結ぶ架け橋となることが期待されている。