5月11日 おはよう日本
地震で被害を受け1年が経った熊本城。
城内の各地で応急的な工事が進められている。
熊本市に滋賀県から派遣された滋賀県教育委員会文化財保護課 北原治さん。
崩れた石垣の復旧に向けた調査に4月から加わった。
(北原治さん)
「思っていた以上に被災状況がひどいので本当に大変だと感じている。」
戦国武将 加藤清正が築いた熊本城。
地震で
国の重要文化財に指定されている13の建物すべてに被害が出た。
石垣は表面積の30%にあたる23,600㎡で崩落などが確認されている。
力を結集して復旧を支援しようと
文化庁が全国に専門家を募った。
(文化庁担当者)
「専門職員の皆様の今後の活躍が
全国的にも注目されている文化財の復興に直結する。」
北原さんは城跡の発掘や復元
それに修復に25年間携わってきた。
業績の1つが
400年余前 織田信長が築いた安土城の跡の調査と復元である。
北原さんが加わる滋賀県のチームは
平成元年から20年かけ崩れた石垣や石段を積み直した。
発掘調査で出土した石の形を見極め
パズルのように元どおりに組み合わせた。
ほぼ当時の石材だけで石垣を復元した。
まず取りかかったのはもともとあった場所を割り出すための石の特徴の調査である。
崩れた石垣から運びだされ並べられた石材は8,000個にのぼる。
最終的には2万個以上を元に戻すことが必要になると見られている。
北原さんは元の位置の見当をつけるための手がかりがないか隅々まで点検していた。
(北原治さん)
「この面が表の面です。
なぜわかるかというと表面にこけや
他のところに比べて風化しているので黒くなっている。
こういうところを探し出して表の部分がどれか
まず確認する。」
石の表面の痕跡はどれも実際に積み上げる際の重要な情報である。
それぞれの特徴を1つずつカルテとしてまとめていく。
膨大な手間がかかるが確実に復旧させるには必要な行程だという。
(北原治さん)
「1つ分からない石材があるとそこから上の積み直しができなくなるので
1つ1つ確実にやっていけば組み上がらないものではない。」
北原さんは
石を切り出す際にくさびを打ち込んだ“矢穴”と言われる跡も重視している。
崩れる前の石垣の写真には石の下の部分に矢穴が写っている。
記録に残る画像と照らし合わせ
石材に残る矢穴の位置が一致すれば場所が特定できる可能性が高まる。
(北原治さん)
「道のりは本当にまだまだ先の話だとは思うが行き着けないものではないと思う。
元の姿
本来の熊本城に戻すことが我々の仕事だと思う。」
城を支える石垣の復元に向け
北原さんは確実に道筋をつけていくという決意でのぞんでいる。
城を管理する熊本市は
今年度中に全体の復旧に向けた基本計画をまとめる方針で
北原さんは
石垣の全体像をつかむ調査を急いでいきたいと話している。