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天道が徐々に天道らしく

2017-05-28 07:30:00 | 編集手帳

5月20日 編集手帳

 

 孔子の優れた弟子、
顔回(がんかい)は赤貧のうちに死んだ。
大悪人の盗跖(とうせき)は天寿を全うした。
『史記』のなかで司馬遷は問うている。
〈天道は是か非か〉。
天は必ず正しいか、
と。

少年事件の被害者遺族に、
その問いは切実だったろう。
かつては加害少年の人権に配慮するあまり、
被害者の遺族は少年審判を傍聴することさえ許されなかった。
天道が徐々に天道らしく改められたのには、
その人の地道な献身があずかって大きい。

「人生を終えて、
 あの子のもとに行ったとき、
 胸を張って報告できるように」。
そう考えて犯罪被害者の人権を訴えてきたという。

土(は)師(せ)守さん(61)の話を、
きのうの本紙で読んだ。
神戸市須磨区の連続児童殺傷事件で殺害された土師淳(じゅん)君(当時11歳)の父親である。
「淳に導かれて、ここまでやってこられた」と。
今月24日で、
事件から20年になる。

31歳になり、
何の仕事に就いていたか。
どんな恋をしていたか。
『翼をください』が好きだったという。
♪ この大空に翼を広げ 飛んで行きたいよ(詞・山上路夫、歌・赤い鳥)。
5月の空の高みにまだ声変わりをしていない少年の、
幻の声を聴く。

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