8月26日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
常夏の国シンガポールでは
近年
急激な気温上昇に見舞われている。
1年間の平均気温は
去年までの10年で
世界平均の約2倍にあたる0,25℃も上昇。
エアコンの室外機から排出される熱などによるヒートアイランド現象の影響が大きく
シンガポール政府は危機感を強めている。
(シンガポール リー・シェンロン首相)
「我々だけで温暖化は止められないが
手助けはできる。
このままでは子や孫の世代が我々の行動を恥じることになる。」
今年の夏
シンガポール政府は気温上昇に対する危機感を一層強めている。
政府も指摘している気温上昇の大きな要因は
エアコンの使用によって屋外に放出される熱い空気である。
1年を通して屋外の気温が35℃を超える日もある常夏のシンガポール。
商業施設でも
多くの人が住む公営住宅でも
エアコンは欠かせない。
シンガポールの電力消費でエアコンが占める割合は約50%。
去年の電気使用量は2005年の約1,5倍に増加し
エアコンの使用も急激に増えているとみられる。
気温を押し上げているエアコンの使用をどう減らすか。
政府が進めている解決策の1つがマリーナ・ベイ地区の地下25mにある。
国営の電力会社が13年前から導入している巨大な冷却システムである。
0℃に近い冷たい水が貯められたタンク。
水が暑さをしのぐのに役立つという。
タンクで冷やした水をポンプを使って
1秒間に4,2トン
周辺のビル群の配管に循環させている。
このシステムを使うことでエアコンの使用を大幅に控えることが出来
月に10億円もの電気代の節約を実現した。
いまでは当初の2倍にあたる23のビルで導入されていて
今後は公営住宅向けのシステムも設置する計画である。
(シンガポール ディストリクト・クーリング クーCEO)
「エネルギーの節約や効率的な利用は
温暖化対策の上で非常に重要です。
冷水で地域全体を冷やせばエアコンの使用も減ります。」
気温の上昇によるエアコンの使用増加と
それに伴う高い電気代は
庶民にとって大きな悩みになっている。
そうしたなか
住まいに手を加えることによってエアコンの使用を減らす試みに注目が集まっている。
建築士のチューさん。
10年ほど前から室内の気温を下げる工夫を凝らしたリフォームを実践してきた。
「部屋の壁をなくし
空間を1つにしました。」
注目したのは
風の通り道の確保である。
部屋の風通しを良くすることで体感温度を下げようというのである。
トイレや風呂などでも
壁やドアの上の部分は風が通るようにしてある。
(建築士 チューさん)
「大きな窓からは風が自然に入ってきます。
風を感じられる空間が生まれるように考えて設計しています。」
さらに家具の下にキャスターを取り付け自由に動かせるようにすることで
風通しはさらに良くなるという。
チューさんがこのアイデアに行きついたのは
毎週訪れる自宅近くの市場。
「いい風が吹いていて暑さを感じません。」
建物内の上に仕切りがなく
風通しがいいので
涼しさが保たれているのである。
また
その構造の原点はマレー半島の古い住宅にあった。
暑さをしのぐための昔の知恵を
チューさんは公営住宅のリフォームに取り入れたのである。
チューさんの試みは口コミで広がり
これまでに500件余を手掛けた。
(住民)
「エアコンより扇風機を使います。
窓を開ければいつでも風通しがよくて
部屋の中がとても涼しくなりました。」
チューさんは今後も古くからの知恵を生かし
暑さとの付き合い方を模索していくという。
(建築士 チューさん)
「暑いことを受け入れ
正面から向き合うことが必要です。
自然の風を楽しむことで
温暖化対策につながればと思います。」