9月3日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
対立が剥げエしくなる米中の貿易摩擦。
アメリカは去年7月340億ドル分に25%の関税を上乗せしたのに続き
160億ドル
2,000億ドルと
3回に分けて中国からの輸入品3,500億ドル分に関税を上乗せしてきた。
これに対し中国側は対抗措置として
大豆や食品などアメリカからの輸入品1,100億ドル分の関税を引き上げた。
そして第4弾としてトランプ政権は
日用品を含む1,100億ドル分を対象に15%の関税上乗せ措置を発動した。
アメリカ政府が発表している一連の関税措置。
4人家族の負担が年間約25万円増加するという試算も出ている。
(市民)
「大統領は悪い決断をしています。
子どもがいるので値上げは望みません。
「出費が増えるので関税には反対です。」
しかし関税の直撃を受ける企業の間では商品の価格に転嫁する動きが拡大するとみられている。
ニューヨークに本社がある創業50年のベビー用品メーカー。
人件費が安く抑えられる中国で完成品を生産しているためほとんどの商品が中国製である。
社長の ジョセフ・シャミーさん。
材料の調達の見直しなどを検討してきたが
どうしても関税の上昇分を吸収できないとして9月から1割程度の値上げに踏み切った。
(ベビー用品メーカー社長 ジョセフ・シャミーさん)
「もともと利益が少ないので値上げするしかありません。
多くの人にとって悲惨なことです。」
ベビーカーにも12月に15%の関税が上乗せされるため
値上げが検討されている。
こうした企業に対してトランプ大統領は
(トランプ大統領 )
「アメリカ企業のいくつかは中国から撤退することになる。」
関税の負担が気に入らなければ中国での生産をアメリカに戻すよう求めているのである。
しかしシャミー社長は
中国には会社が所有する大規模な試験施設もあるため
移転ともなれば大きな損失が生じると反発している。
(ベビー用品メーカー社長 ジョセフ・シャミーさん)
「生産を突然他国に移すのは非常に難しいです。
中国との関係を断ち切れば
良質な製品を手ごろな価格で販売できなくなるでしょう。」
貿易摩擦で対立を深めるアメリカと中国。
今この対立がアメリカで行われてきた文化交流にも普及している。
南部ルイジアナ州のザビエル大学にある中国語の教育機関「孔子学院」。
孔子学院は中国政府が15年前
中国の言語や文化を世界に広める目的で設立した機関で
アメリカでも大学の校舎を借りる形で100校近くが運営されている。
(生徒)
「漢字に興味があります。
勉強を続けて中国語を使いたいです。」
ところがアメリカの議会が孔子学院の活動が
“中国共産党の思想を広めている”と疑い始めたのである。
(共和党 ロムニー上院議員)
「孔子学院は中国政府の政治活動の一環で
アメリカの子どもたちを洗脳しているのではないか。」
議会は貿易摩擦が激化した去年の夏から実態調査を実施。
中国政府がアメリカの大学の教育や運営に介入していると指摘した。
議会で成立した今年度の国防権限法には
“孔子学院を受け入れる大学には補助金を出さない”と規定された。
それ以降アリゾナやオレゴンなど10の大学が
資金を確保できないとして孔子学院の閉鎖を決めている。
(ザビエル大学 孔子学院担当 江さん)
「孔子学院の存続を強く支持し擁護します。
我々は中国語教育の伝統を残していきたいだけなのです。」
5月には共和党の一部の議員が
中国とのかかわりが深い研究者や留学生のビザ発給を禁止する法案を提出している。
関税の負担を強いられている経営者たちの中にも
トランプ政権が中国に貿易上の改革を求める姿勢自体には賛成している声が多い。
アメリカ国内で中国に対する不信感を口にする人が増えていると感じる。
GDPでアメリカ企業の設備投資や輸出がマイナスに転じたり
ダウ平均株価が8月に今年最大の下落幅を記録するなど
景気に不安要素も出てきている。
中国側にアメリカ産の大量の農産品の購入や国営企業への補助金の見直しなどの要求を
できるだけ急いでのませたいと考えていると思われる。
このあとアメリカの景気が後退して大統領の人気に影響してくるようなことになれば
大統領として対中強硬路線の変更の可能性もある。
一方で中国はアメリカをWTOに提訴すると発表したように一歩も引かない構えを見せている。
しかも中国政府は最近“交渉には長い道のりがかかる”と言及した。
来年の大統領選挙でトランプ大統領が再選するか
それを見るまでは交渉を進めるつもりはないのではないかという見方もある。
この異例ともいえる関税の掛け合いが経済にどのような影響を与えるのか
それを受けて両国がどんな戦略にでるのか
2つの大国の次の1手に注目である。