8月29日 おはよう日本
宮崎県
ぬいぐるみが屋根の上で強い日差しを浴びている。
ぬいぐるみを洗うクリーニング店である。
店主の吉永定晴さん(61)はもともと布団が専門だったが
10年前からぬいぐるみのクリーニングも始めた。
ほとんど手作業で行う丁寧な仕事が口コミで広がり全国から依頼がやってくる。
(クリーニング店店主 吉永定晴さん)
「温泉に入れてる気分ですね。
きれいになった
こんなになるとは思わなかったとか言ってくれるのが一番うれしい。」
さまざまな思いが込められているぬいぐるみたち。
多い日には1日20個も届く。
梅雨が明け忙しさが増す8月。
炎天下のなか石けんを落とす作業。
大切なぬいぐるみをきれいにしたいという一心で汚れと向き合う。
(クリーニング店店主 吉永定晴さん)
「ぬいぐるみは気持ちいいでしょうね。」
脱水の後はいよいよ天日干し。
ぬいぐるみは機械を使って乾かすとプラスチックでできた鼻やひげの形が変わることがあるため
吉永さんは自然乾燥にこだわっている。
全国有数の日照時間を誇る宮崎県の気候はまさにうってつけである。
3日間かけじっくり乾燥させる。
強い日差しがぬいぐるみをふわふわにしてくれる。
(クリーニング店店主 吉永定晴さん)
「ぬいぐるみに関しては今がベストシーズン。
命の洗濯に来てもらっているようなもので
年季の入ったものが多いものですから。」
パンダは埼玉県に住む35歳の女性から送られてきた。
亡くなったお祖父さんから6歳の誕生日にプレゼントされた大切なパンダである。
パンダの持ち主は遠藤芙美子さん(35)。
9月に初めての出産を控えている。
生まれてくる子どもに遠藤さんが大事にしていたパンダをプレゼントするつもりである。
待ちに待ったパンダが返ってきた。
(遠藤芙美子さん)
「おじいちゃんも喜んでくれるんじゃないかな。
見守ってくれているというのを伝えたいです。」
(クリーニング店店主 吉永定晴さん)
「送られてくるぬいぐるみにはひとつひとつ違った思い出がある。
その人がもらった時の買った時の感動と同じような感動を
手元に届いたときに与えられるような仕事がしたい。」
吉永さんの手と宮崎の日差しできれいになったぬいぐるみ。
再び輝きを取り戻す。
8月27日 キャッチ!
紀元前3000年を発祥とする古代エジプト文明。
人々の生活を支え豊かな文明をはぐくんだのはナイル川。
全長約6,700㎞
世界一の長さを誇る。
ナイル川流域には多くの穀倉地帯が広がる。
肥沃な土壌と豊かな水で作られる米によって
これまで国民の胃袋は満たされてきた。
しかしいま代々この地で米を作ってきた人々は農業の継続に不安を抱いている。
その理由とは水不足である。
ナイル川流域に異変が起こっているのである。
(農家 ムハンマドさん)
「数年前より水が少ししか届かなくなった。
毎年 収穫が3分の1ずつ減っている。」
水不足の原因は急速に進む人口増加である。
エジプトは30歳未満の若者が3分の2を占める若い国で
人口は毎年100万人以上増えている。
急増し続ける国民の食糧をまかなうため
農産物の増産に向けて20年ほど前から女流の砂漠地帯で大規模な農地開発が進められている。
以前と比べて農地は約30%増えた。
さらに大統領は去年
170万ha 関東平野と同じ広さの農地を新たに開拓すると宣言した。
農地を増やし農産物の生産量が増えれば将来予想される食糧不足が解決すると思われた。
ところが重大な水不足の問題が浮上したのである。
実はエジプトは周辺国と取り決めを行っており
ナイル川から利用できる水の総量は毎年一定である。
政府が農地を拡大しその新しい農地にも水を回すようになった結果
従来からある農地に届く水が減少するという矛盾が生じている。
水不足に対処するために限られた水を効率的に使いたい。
エジプト政府が支援を依頼したのが日本のJICA国際協力機構である。
派遣された専門家とともに水を公平に分け合う仕組みづくりに取り組んでいる。
JICAが指導し去年から始めたのが農業用水の水量の計測である。
その結果 用水路の上流にある農家が必要なだけ水を使うために
下流の農家に必要な量の水が届いていないことがわかった。
そこで村ごとに使ってもよい水の量を相談して決めた。
(JICA・国際協力機構 井上裕さん)
「今までは水位で目安はあったが
観測して具体的な水の量を示すことができた。」
また上流の農家たちは稲作を減らし
水が少なくてすむトウモロコシ栽培を取り入れるなど作付を工夫することにした。
(農家)
「今年は米を栽培していないから水の利用は少なくなった。
みんなで水を節約するようにした。」
さらに下流に下ると水不足は別の問題を引き起こしていた。
米の品質の低下である。
その原因は水質の汚染。
かつて農村は農業用水をナイル川から必要なだけ引いていた。
しかしほかの新しい農地にも水が回されるようになったため供給される水量は徐々に制限されていった。
そこで農村は必要量を確保するためにやむなく生活排水から農業用水を引いて不足分を補うようになったのである。
稲作農家のアワドさんは
排水を使えば米の質は落ちるが使わなければ農業そのものを継続できないと言う。
ここでも日本の技術が役立てられている。
この夏 実験的に導入されたのが小型の排水処理施設である。
この施設によって排水は浄化され
農業用水として十分に利用できる水質にまで改善された。
(農家 アワドさん)
「この村の問題を解決してもらって幸せです。」
そしていま今後技術指導に頼るだけでなく住民自身も動き出した。
アワドさんは小さな村までゴミ収集をしない政府に代わって
毎週各世帯を回ってゴミを回収している。
これは住民がゴミ捨て場に困って川にゴミを捨てるためのものである。
また水をきれいに使うには自分1人だけでなく住民全体で何ができるか話し合った。
アワドさんの食卓には今日も自分の田んぼで採れた米が並ぶ。
(農家 アワドさん)
「水の一滴は命そのもの。
子どもたちにも水の大切さを教えていきたい。」