
わが国での家族の姿は近年、大きく変わってきています。ひとり暮らしが増えました。
学生や若い世代に限らず、30代、40代、50代……そして独居老人。わが国では、いまや世帯の数でいえば、単身生活者は二人以上が同居する家族を上回っています。
その結果、いまの時代、人々の生活様式は「個人化」してきています。
そして二人以上で構成される家庭にも「個人化」が入り込んでいます。子どもや老人は個室が当たり前だし、夫婦がそれぞれ自分だけの部屋を望むことも珍しくないそうです。
家族が日々の暮らしのために、お互いが協力しなくてはならないことが、昔よりずっと減っています。
食事を用意するのに、すべて、材料から煮炊きすることはあまりありません。服を布から裁縫することもなくなりました。
そして、家族の誰かに「お手伝い」をしてもらう必要も少なくなりました。
「個人化」は衣食に限りません。子育ては保育所や学童保育、教育は学校や塾と、家庭の外に頼る割合が増えました。
また、いまの時代、子どもが家庭で「お手伝い」を見つけるのはかなり難しくなっています。電化製品が家事の大半をやってくれます。洗濯は全自動洗濯機が、お皿洗いは食洗器がやってくれることも珍しくありません。つまり子どもの仕事があまり家庭の中にないわけです。
その結果、家族といっしょに住んではいるが、極端な場合、家族の中の共同的なつながりは「バラバラ」という状況が生まれてきています。
このような状況は、自分だけの時間や空間を大事にし、他人よりは何よりもまず自分に関心が向くという傾向を加速させます。
社会学の研究者はこのことを「私事化」(=privatization プライバタイゼーション)と呼んでいます。
そこで、こういった時代であるからこそ、家庭の中で子どもと親が一緒にできる活動(キャンプやバーベキューなどでもいい)を見つけましょう。
あるいは地域の人と子どもがいっしょに取り組める活動(ボランティア活動など)に子どもたちが参加するよう意図的に誘ってみてください。
ある人が言いました。人は社会的存在である。つまり、人は人によってのみ、人となるのです。つまり人とかかわりあうことで、自らを成長させることができるのです。多くの人々で知恵を集め、次の社会を担う子どもたちの豊かな成長を育みましょう。