子どもと一緒に行動していて、イライラすることはありませんか。子どももさまざまです。
三中生でも、職員室にやってくる子どもと話をしていると、じつによく気がつき、自分の疑問に思うことを、適切にタイミングよく聞いてくる子がいます。つい先日も、中1でここまで気がつき、質問できるとはすばらしいと、感心することがありました。
しかし、このような子どもばかりではありません。マイペースな子やこだわりの強い子に対しては、親には親のペースがあり、親のペースでものごとを進められないとき、イライラします。
「それぞれペースがあるのだから」とはいっても、急いでいるときはそうも言っておられません。
マイペースな子やこだわりの強い子について、次のような生徒たちに出会ったことがあります。
中学3年生を連れて、秋の校外学習へ行った時のことです。行先は、今はもうなくなりましたが、ポートピアランド。生徒はランド内を、フリーパスで1日、グループで自由に回り、乗り物に乗ることができました。
集合時間は午後2時30分でした。2時10分ごろから私たち教職員は、ランドの奥からゲートに向かい、生徒を追い出しにかかっていきました。私は、ジェットコースターの前を通りかかったとき、5人の男子グループが並んでいるのを見かけました。
自分の腕時計の時刻を見ながら、「今から、乗ったら集合時間に間に合わない。いますぐ、並ぶのをやめて集合場所へ行きなさい。」と言いました。でも、生徒たちの視線は歓声の聞こえるジェットコースターに釘付けになっています。
こちらもイライラしてきて、「聞こえていないのか! 戻れと言ってるやろ!」と声を荒げます。しかし、生徒たちはスルーして、やっと順番が回ってきたジェットコースターに乗りこんでしまいました。
けっきょく、ジェットコースターが戻ってきてから、5人の生徒と走って、集合場所のゲートまでたどり着いたのは2時32分ごろでした。
こういったことは、大人と子どもの間ではよくあります。おとなと子どもでは、同じ空間・場所にいても、見ているものが違う場合がよくあります。
私は、時計を見ていました。でも、生徒たちはジェットコースターを見ていました。生徒は、ジェットコースターが目前に見えると、時間が迫っていること自体がどこかへいってしまいました。
それまでは時間を気にしながら、戻る準備をしていたのでしょうが、ジェットコースターが目に入ると、時計が見えなくなってしまった。もちろん5人の生徒の中には、程度の差はあったでしょうが、集団心理が働きみんなが同じ行動をとったのだと思います。
おとなにはおとなの見えているものがあり、子どもには子どもの見えているものがあります。おとなは結構広い角度・視野で見ますので、たしかにおとなの見ているものの方が、子どもの見ているものよりも正しいのかもしれません。
しかし、子どもは目の前に新しいことが出てきたら、それまでのことが見えなくなってしまうことがあります。
そんなときは、いったん子どもが見ているものにあわせてコミュニケーションをとるとうまくいくことがあります。子どもが見ているものに、おとなが合わせ、子どもの気持ちが納得するまでいっしょに見ることをします。そして、その後に「時間」へ視点を戻します。
子どもは自分の気持ちが満たされれば、おとなの気持ちにあわせてくれます。ちがうものを見ていたとしても、先に子どもが納得すれば、おとなに合わせてくれるのです。子どもの「納得」は、子どもの次の行動につながります。