
私の家では、私が20歳過ぎまで、稲作をしていました。
私の子どもの頃の稲作は、機械を導入する前には、家族総出で田植えや稲刈りをしました。
さて、稲作は人育てと同じだと、私は考えます。
ほかの作物は、土に直接種を植えます。しかし、コメは田植えをします。
稲はそれほど強い植物ではありません。種を地面に直接まくと、雑草などに負けてしまいます。
成長の早さでは、雑草のほうが圧倒的に稲よりまさっています。
また、雑草に栄養分をとられてしまい、実(米)をつけられなくなります。つけたとしても痩せた実しかできません。
だから、「6歳」になるまでは、ほかの草に邪魔されないように、苗代という田んぼに離して、大事に保護して育てます。
そして、青い葉が6枚出た頃(6歳)に、苗代から田んぼ(水田)に植えかえます。これが田植えです。
苗代から稲の苗を抜くとき、抜き加減が大切です。雑に引き抜くと、根が痛み枯れてしまいます。
でも、丁寧に抜き過ぎると、弱い稲になり、田んぼの雑草にやられ、実をつけなくなります。
つまり、ある程度、根が傷つくように抜くのが、お百姓さんのコツです。
私の祖父は、苗代をつくっていましたが、おそらくそのコツを心得ていたのだと思います。
コメづくりは、奥が深いと思うのです。
傷ついた根を自分で回復させ、立ち直った稲はしっかり育ち、秋には大きな稲穂をつけます。
小さな頃には、保護をするが、ある程度大きくなっら、困難なことにも出会わせる。
その困難の程度が重要なのです。
私は、自分の少年の頃を思い出すと、稲作はまさに中学生までの子育てと同じだと、しみじみと思うのです。