箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

新年に寄せて

2020年01月02日 09時55分00秒 | 教育・子育てあれこれ


明けましておめでとうございます。

輝かしい新年を迎えて、みなさまのご健康とご多幸を願います。

さて、昨年は元号が新しくなり、めでたいということで、巷では大きな騒ぎとなったわが国でした。

しかし、その騒ぎを打ち消すかのような、大規模な自然災害に見舞われる年となりました。

くわえて少子高齢化の問題が明確になり、児童虐待、独居老人、介護問題、老老介護の問題が取り上げられました。

さらには、相対的貧困率がさらに上昇して、とくに一人親の母子家庭や単身女性に貧困が顕著に現れたり、子どもの貧困問題も深刻度を増しました。

また、文科省の打ち出した英語での外部テスト導入が頓挫したうえに、記述式問題も導入が見送られることが決まりました。

受験生を軽くみるのも、いいかげんにしてほしい。

文書問題、「身の丈発言」、それから今回の大学入試に関わるお粗末な制度設計。

日本社会のこれからに「先行投資」する側面が教育にはありますが、その方針を出す省がこのありさま・・・。

新年早々、ボヤキから始まり申し訳ないです。

ただ、今の中学生の将来を見通したとき、この日本はけっして明るい展望がもてる社会になっていないことは、教育関係者のみならず、保護者の方も意識しておく必要があります。


景気がよかった頃、わが国ではイケイケのムードでした。

人の生き方では「自己実現」が叫ばれました。そして、その流れで、教育では「好きなことを仕事にする」、夢の実現がさかんに言われました。

これは、1990年代に『好きを仕事にする本』が始まりかと思われますが、2003年には『13歳のハローワーク』が発刊され、ベストセラーとなりました。

それでは、今の時代に好きを仕事にして生活していけるのかといえは、残念ながら難しいと言わざるをえません。

たとえば、長距離トラックの運転手は、当時では、好きを仕事にした一つのケースでした。

フリーの運転手は、高い報酬をもらえる仕事を直接請け負うことができました。

1980年代には、配送業者がととのいましたが、バブル経済で作れば売れる好景気で、「トラック野郎」は高収入を手にしました。

しかし、運転手が増えすぎ、不景気が重なり、いまや好きでも高収入が望めなくなりました。

この例一つをとってみても、好きを仕事にしても、生活していきにくくなっているのが、令和の時代です。

では、いまの中学生が将来、社会に加わったとき、何で生きがいを得ることができるのでしょうか。

私は日本理化学工業(本社 川崎市)の大山泰弘さんの講演を聞いたことがあります。

日本理化学工業は、文具メーカーで、学校での必需品であるチョークをおもに製造します。

以前に、中央省庁が障害者雇用率を水増しして報告していたことが報道されましたが、この会社は、知的障害者を積極的に雇用しています。

生産ラインを支えているのは、知的障害者です。

川崎市と北海道の全従業員84名のうち、7割を超える62名が障害者です。

大山さんが言うには、日本理化学工業の考える、人間の究極の幸せとは、

① 人に愛されること

② 人から認められること

③ 人の役に立つこと

④ 人に必要とされること

だと言います。

日本理化学工業では、工場の休憩時間になると、障害のある人と障害のない人が、分け隔てなく談笑する空間になります。

離職率も低く、職場満足度の高い人がほとんどだと聞きます。



日本理化学工業から、私たちが学ぶことは、次の通りです。

好きなことやワークライフバランスとか収入も大切ですが、①から④が満たされれば、人は働く幸福感を得ることができるのでないかと、わたしは考えます。

やはり、人は人との関係の中で、仕事をして生きるものだと思います。

たしかに閉塞感の漂ういまの社会ですが、
中学生も将来、社会で働く際に、どんな職種に就いたとしても、人との関係で満足感や生きがいを得ることができることを知ってほしいですし、希望をもってそんな生き方をしてほしいと願います。

それがわたしの新年の所感です。








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