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先日、わたしは『この世界の片隅に』というミュージカルを、新しくできたSKYシアターMBSへ観にいきました。
客席からの視界は前の列の席と席の間になるような配席構造になっており、とにかく音響設備の素晴らしさが画期的な劇場でした。
そのことはともかく、いまわたしの中に残っているもので、観た演劇について目に見えるものは何も残っていません。
あの劇が演じられていた空間を思い出し、「よかった」という感想が残っているだけです。
そのように、芸術家のなかでも、役者や俳優は残せるものがありません。
音楽家や画家なら、創作物として作品が残りますが、役者や俳優ほそのときそのときの観客のリアクションがあるだけで、創作物として残るものはなにもありません。
もちろんビデオに録画すれば、録画物は残るのですが、それはそのときのコピーに過ぎません。
この見方でいくと、役者や俳優は人間と人間の間の空気のようなものを作る仕事であると言えます。
観客も、セリフよりも役者が醸し出す空気に引き込まれるのです。
世の中は移り変わっても、役者や俳優がつくり出している空気や本質的なものは変わらないのでしょう。
情報が洪水のようにあふれるいまの社会や多忙な日々のなかでも、不動のものとして役者や俳優は存在するのです。
それが、演劇が他の芸術とは異なる特質なのです。
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