箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

中学生に届く話とは

2020年05月08日 07時35分00秒 | 教育・子育てあれこれ



学校では、生徒に向けて話をすることが教師にはよくあります。


今は新型コロナウイルス感染防止のため、話すときは放送を使用することも多いですが、いずれ先には、話し手と聞き手が向き合う対面型が戻ってきます。


学級担任がクラスで、学年主任が学年集会で、校長が全校生徒に対して話すなど、じつにたくさんの機会があります。

 

私も、中学生に校長の話をよくしました。


中学生は思春期の子であり、おとなの話を聴いて、「うん、わかった」「そうなんだ」とまっすぐに話を受け取らないことは多いものです。

 

思春期の子は大人からの「こうしなさい」という話は押しつけと感じ、押しつけられるのを嫌がる年齢です。


ときとして話の内容のよしあしより、自分自身が納得するかしないかで「聞くべき話」か「聞かなくていい話」かを判断します。

 

しかし、大人から子どもにする「いい話」は、子どもの「心のとりで」を崩し、水がスポンジにしみこむように受け入れられ、心に溶け込んでいくものだと思います。

 

その「いい話」は、つぎのポイントのどれかを含んでいるのではないかと考え、実践してきました。

 

【ポイント】

 

① 生徒が「自分も同じだ」と共感する話


[2017年6月16日 朝礼講話]

「一日の終わりに フッと力を抜いた時 今日一日をふりかえるというか、思い出してしまう。

悔やんだり、自分が情けなくなったり ごめんなさいと思ったりする


ささいなこと大きいことがいろいろとあり、思わず、ため息が出てしまう。


みなさんは、このように、後になって自分のことを思い出してクヨクヨすることはありませんか? 

わたしはしょっちゅうあります

 

あの人に、あのとき、こんなふうに言ってしまった。こう言えばよかったのかな。なぜちゃんと言えなかったのだろう。


どうすれば後悔しなくて済むのか。


私は「照れないこと」だと


照れたから、力を出し切れなかったりする。照れたから、チャンスを逃

照れたから、うまく言葉で表現できなかったりする。照れたから、すなおに「ありがとう」と言えなかったりする

・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

② 深く感動する話


[2018年7月20日1学期終業式講話]

東日本大地震で、母親を亡くした岩手県陸前高田市の高校生・瑠璃さんが悲しみのどん底から立ち上がった。



(平成23年4月12日朝日新聞の写真)



彼女は、自宅のあった場所で亡き母のため一人で「負けないで」を演奏したという「亡き母へのトランペット」の話を朗読して、生徒に読み語りをした

 

③ 予期していなかったことに驚き、「なるほど」と思えるもの


[2018年3月19日1・2年合唱祭での講評]

「ピザ好きの兄が、いつも宅配ピザを弟と分けあわなければならないことに不満を持っていました。


そこで、兄は両親と弟が出かけているある日、おこづかいをはたいて、ピザを注文しました。届いたピザをほおばりました。


でも何かが違っていたのです。いつもはあんなにおいしいピザが、なぜかおいしくない。


そこに弟が帰ってきました。『あっ、ピザだ!』『うん、お兄ちゃんが頼んだ』 そして兄は言いました。『いっしょに食べよう』


二人で食べるピザは、いつものおいしいピザに戻りました。」


ここから「ハーモニーを分けあえば楽しみ」という気づきを引き出す。

 

④ しっくりとしていないイメージや感覚を言葉にして明確にする話


[2016年4月8日1学期始業式]

4月8日という日は、入学式・始業式の日であり、「節目の日」であることを、実際に竹の節目の実物を見せ、その意味を話す。


また、同時に過去をリセットできる機会でもある。過去こそがすべてである


未来はまだ何もないゼロの状態であり、昨年度は、学習のことや友だちのこと、学校生活で悩んだ人、苦しんだ人がいるかもしれない


それは無駄にはなっていない。なぜならその悩みや苦しみを経験して、あなたという「いのち」がここに今あること。これがどれほど大切なことかと、私はつくづく思


 

このように、中学生の視野を広げたり、興味関心を引き出したり、腑に落ちて納得する話をすれば、中学生は、おとなからの話を楽しみにするようになります。

 



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