箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

心の傷は、心でしか見えない

2020年05月09日 08時12分00秒 | 教育・子育てあれこれ


新型コロナウイルスに関係して医療に従事する人たちへの偏見や排除・差別が、いま問題となっています。

 

報道されている実例をあげます。


子どもの幼稚園で、ほかの保護者から「まさか病院に勤めているのではないよね」と言われて、戸を閉められた。


子どもが「(親が病院勤めだから)学校に来るな」と言われた。


訪問看護をしている女性看護師が、患者の家族とやりとりをするときに、鼻と口を覆いながら片手で処方箋を受け取られた。


女性看護師がいつも通っている美容院の予約をしようとしたら「病院で働いているのなら、いまは来ないでくれ」と断られた。

 

医療に従事する人たちは、感染するのではないかという危険を感じながら、患者さんのために「なんとか救いたい、助けたい」という高い使命感をもって職務にあたっています。

残念な思い、悔しい思いをしています。

 

こういった言動は医療に従事する人たちに対してだけではありません。

排外的な言動もあります。


横浜港のクルーズ船での感染者を受け入れた愛知県では、「中国人、韓国人を追い返せ」と中傷する声が寄せられました。


「外国につながる人たち」は、日本にいて「〇〇国へ帰れ」と言われることが、どれだけ心を深く傷つけられることか。


つまり、日本では自分の存在が認められない、存在が否定されていると感じてしまいます。どんな人にとっても、これほどつらいことはありません。

 

また他者をたたくことで、自らの不安を和らげようとする言動に出る人もいます。


・要請されているのに閉店しないパチンコ店に対して、ネット上の掲示板に「爆破する」という投稿が出ました。


「要請に従わないものは攻撃してもいいんだ」という、いわば「行政からのお墨付き」をもらったかのように、容赦ない攻撃とそれにのっかる人たち。

 

今回明らかになったできごとからみえてくる周囲の人びとからの心ない言動や暴力的な言動、当事者やマイノリティがいかに傷つくか。私たちはこの痛覚を高めないといけません。


 

学校でも、教職員は新型コロナウイルスに関連して人を傷つける言動が児童生徒から出ないかに留意する必要があります。

 

たとえば、「おかあさんが病院に勤めているんだから、近づかないで」と友だちから言われたりする危惧があります。

 

もしそのように言われたら、言われる子どもの心の傷は察して余りあるものがあります、



また、子ども同士ではなく、ときによっては、教師からの無神経な一言に、子どもが深く傷つくこともあります。


これは避けることができないのではなく、教師の資質を磨くことにより回避できることです。

 

教師は、学習指導に力を入れることは、第一義に求められる条件ですが、生徒の心情に想いを寄せることができることも、必ず必要になります。


 

も経験がありますが、10年ほど前まで中学校ではよくガラスが割れました。


あるとき、廊下でふざけていた生徒が教室のガラスに突っ込み、手をけっこう大きく切り、血を流していました。


ためらうことなく、救急車を呼びました。


ふつう、生徒が学校でけがをして、もしたくさん血を流していたら、救急車を呼びます。


でも、心に傷を負っている生徒は、そのようすが教師からは見えにくいのです。


「心の傷は、心でしかみえない。」


私はこの言葉を、尊敬する先輩の先生から教わりました。自校の教職員にも伝えました。


自分の感情のもとで発した言葉が、子どもの心にどう突き刺さるか、子どもがいかに傷つくかという感性が必要であり、この感じ方ができない人は教師になってはいけないとまで思います。


生徒の心の傷を心で見ようとする教職員であってほしいと、強く思います。




コメントを投稿