わたしは、大学で教員志望の学生が受講する教員採用試験対策の講座を担当しています。
教員採用試験は、どの自治体もふつう大学4年の夏に実施します。
そのため、対策講座には現在大学3年の学生が多く受講します。
その講座の中で、採用試験で実施される面接の練習もあります。
面接の中で面接官からよく尋ねられる質問として、「あなたは学生時代にどんな活動に力を入れてきましたか?」があります。
これは面接での質問の中でもいわゆる「鉄板質問」です。
必ずといっていいほど聞かれるので、受験生はあらかじめ回答を考えておくものです。
しかし、この質問をされたとき、とまどう学生も少なくないようです。
なぜなら今の大学3年生は感染防止のため、入学と同時にオンライン授業が始まりました。
ずっとキャンパスにも入れず、サークル活動もできず、同級生や先輩とも知り合う機会がない2年間を過ごしてきた人たちです。
言うならば「フルコロナ学年」の学生です。
「大学時代にどんな活動をしてきたか」と問われても、なんて答えればいいの?
このようなとまどいを感じる学生が多いのです。
たしかに、とくに大学3年生にとっては切実な問題です。
しかし、わたしは次のようにアドバイスをしています。
採用側が見たいのは、結果よりもコロナ禍にどう対応しようとしたかという過程であり、その学生の主体的な態度です。
困難に直面しても、制限のある学生生活やサークル活動にどう対応しようとしたかを率直に答えればいいと伝えています。
今後、教育では予測不可能なことが起こりえます。あらたな感染症が発生したり、大きな災害に遭遇するかもしれません。
児童生徒の安全やいのちにかかわる困難に出会うかもしれません。
その困難に直面したとき、屈せず対応し児童生徒を支援する教師が求められているのです。
その視点で、3年間の大学生活をふりかえり自らの経験を掘り下げていきます。
すると、たとえば
「実家にいる時間が多くあったので、おばあちゃんの家に毎日介護に通った。
病気がちだったので、よくなってくれるように父といっしに四国八十八ヶ所まわりをしました。」
このような経験を語ってくれた学生がいました。
これとて、「よくなってほしい」という強い思いで起こした行動であり、教師として必要な資質です。
自分はコロナ禍で何もできなかったのではなく、何かをやってきたのです。
その点では、人にとってすべてのものごとに無駄なことや無意味なことはあまりないのだと思います。
自分を見つめると、自分のしてきた経験に意味づけができます。
ただ、コロナ禍で学生は他者と話す機会や時間が減りました。
ですから、客観的に見る視点や他者から見た視点が必要となります。
だから、こちらも対話を重視して、学生が自分を見つめることのできるサポートをしていく必要を自覚するのです。
過去こそはすべてであり、未来はまだ何もないゼロです。
過去の経験を見つめると、現在につながります。
そのつながりをみたとき、その人に未来は開けてくるのではないでしょうか。
若い世代に対して、
人生や仕事の先輩としての暖かい励みになる文章に
、お人柄が出ておられますね~♪
私も読んで、ε-(´∀`*)ホッさせていただきました。
自分の就きたい仕事に真っ直ぐに向き合っている学生さんには、自分が何か役に立てたらと思います。