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生徒たちにとって、学校生活の時間のほとんどは授業です。そして、道徳とか学活の授業もありますが、多くは教科授業です。
教科の授業の中でこそ、生徒どうしのかかわりあいをのばしていくことができます。
もちろん、それぞれの教科には教科の目標があり、学びあいや人間関係をつくることが目的になっているのではありません。
中学校では昔は、知識伝達講義型の授業が多く、授業者が一方的に説明し、生徒同士の関わり合いがほとんどない授業もありました。
しかし学びあいを重視するいまの授業では、教科の目標実現のための授業で、生徒たちはクラスメートとかかわりあうことになります。
このような授業を毎日、毎時間くりかえしていくことで、生徒たちは相手のよさを感じ、人とのかかわり方を学習することになります。
たとえば、社会の授業で江戸時代の田沼意次の改革を学習するとき、この年貢だけに頼る財政を商品流通から利益をあげる改革がどんな影響を与えたかを考えるとき、おのおのが史料を使い、いろいろな考え方をします。
ある生徒は今後の経済発展のきっかけになったと評価します。また、別の生徒は、わいろが起こり、百姓一揆につながり、幕藩体制が揺らぎだしたと考えます。
それらの意見をグループなどで、相手に伝え、自分の考えを深めていきます。
このような話し合い・学びあい活動のある授業で育った生徒たちの人間関係は、とても親密で、やわらかいものになります。
学級が始まったころのクラスの人間関係は、信頼関係にまで育っていないので、ぎくしゃくしています。友だちとうまくかかわれない生徒も多くいます。
でもそのうちに、かかわりあうことで学びが深まっていくことを徐々に知るようになります。
こうなると、生徒同士の仲間関係は、たんに自己主張するものから、相手の考えや意見も聞いてみようという、しっとりとした関係にかわっていくのです。
しっとりした関係とは、クラスメートの意見や考え・主張を否定せず、聴き合うので、安心感のある人間関係のことです。
体育祭や文化祭などの学校行事で仲間づくりをする面もありますが、一日の大半を占める教科授業の積み重ねで仲間関係は豊かになっていくのです。
その積み重ねとは、1時間1時間の小さな積み重ねから生まれてくるものです。でも、教師が意識して継続していくと、確実に厚くなってきます。
このような授業の営みは、世間一般にはあまり理解されていないことがあります。
学校関係者なら、仲間関係を紡ぎだすという授業の効用を知っています。
授業を行う教員の役割は、そのような毎日の積み重ねを、授業を通して築いていくことです。
新型コロナウイルス対策のための休校措置で、オンライン授業が始まりました。やってみると、これでも授業ができるということで、今後もなんらかの形で続いていくことが予測できます。
それは、授業のやり方の一つとして定着していけばいいですが、生徒同士が顔を突き合わせ、相手の様子を見ながら話し合うとか、その変化の様子を授業者が観察し、さらに学びを深める問いを出したりするのは、教室での対面授業でないとできないことです。
今回、文科省は学校再開にあたって、「感染リスクの高い教科活動」は行わないという基準を出しました。
その活動には長時間、近い距離で向き合うグループ活動、実験、観察、家庭科での実習、合唱、楽器演奏、密集した運動などが挙げられています。
児童生徒は、これらの活動による学びを体の中に染み込ませていきます。
テレワークでできる仕事も世の中にはあります。人の働き方で言えば、さまざまな形態はじっさいに可能であるでしょう。
でも、教育活動として行う授業は、リモートではできない動的な、ダイナミックな活動を含んでいるのであり、子どもたちの将来の社会参加力を育むという大きな意味があります。