父の容態について、
急変するから気をつけてと、
医者をはじめいろいろな人から言われている。
父は肺がんだが、何より身体が思うようにならない。
頸はもうほとんど動かせない。
それはとてもつらそうだ。
昨日は熱が出て、痰もからみ、
水を飲むのもやっとだった。
母親が外出した間、父と二人だけの時間を過ごす。
水が飲みたいとのことなので
少しずつ飲ませる。
ゆっくり飲み込むがすぐに痰がからむ。
息苦しそうに見えた。
のどが痰でガラガラ鳴っている。
ちゃんと呼吸はできているのだろうか??
呼びかけにも応じない。
今、死んだらどうしよう・・・
怖くなった。
やがて母が戻る。こんなの大したことではない、大丈夫だという。
少しは安心したものの
実は自分がパニックだったことに気づく。
あるとき「死とは何だと思うか?」という問いに、
私は「無だと思う」と答えた。
すると、その人は「僕は移行だと思う」と言った。
そのときは何となく、そういう考えもあるのかな、と
漠然と受け入れたが、
今、父を前にしてその言葉が重く思い出される。
生と死の間を往き来しているように見えるのだ。
それは、移行だ。