この度、
9月5日より ギャラリー枝香庵 「わたしの中の村上春樹 Ⅲ」に出展いたします。
私が選んだ物語は短編小説「めくらやなぎと、眠る女」です。
主人公は、耳の“聞こえ”の不自由な親戚の子の通院に同行する最中、
白昼夢のようにかつての女友達の作り話を思い出します。
それは「めくらやなぎ」という気味の悪い植物から出てきた蝿が、
眠る女の耳から身体の中に入り肉を喰らう…という話。
短編でありながら、現在と過去と、その過去の人物の作り話とが層状に交錯する複雑な物語です。
この中で私は「耳」に着目しました。
私自身、左耳の聞こえがおかしい時があります(低音障害型難聴)。
「聞こえがおかしい」というのは単に「聞こえにくい」のではなく、
私の場合は空間そのものが歪んで感じられるためとても不安な状態に陥ります。
私たちが立つこの空間というのは人それぞれに違う、なんて不安定なものなのでしょうか。
この物語に痛く共感し作品にすることができましたが、
少し怖い絵になってしまいました(いつものことかもしれませんが…)。
お忙しいことと存じますが、是非ともご覧頂けましたら幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
「眠り姫」33.2×23.8cm,墨・和紙,2019,亀井三千代