今回の世界選手権はコロナ禍の中、有観客、歓声okで、例年より日本人ファンが少ないため(←悪い意味で捉えられたくないのですが)ヨーロッパの反応をダイレクトに感じました。日本の国境を振っている観客もよく見れば、欧州の方が多く映っていました。彼らの選手達の成長を楽しみ、どの国のスケーターにも同様に温かな反応が嬉しかったです。
宇野選手
SP今季最高の出来。
ジャンプの回転がいつもより早く感じる。この美しいプログラムが彼の世界王者プログラムとなってくれたことが嬉しい。宮本賢二さんが宇野昌磨というアーティスティック・アスリートのマスターピースと呼ぶに相応しい仕事をしてくれたことが嬉しい。
どの場面を切り取っても美しいこのプログラム、今回私は100点満点中、98点だと思います。演技自体は120点ですが、衣装が私のお気に入りのグレーではなかったこと、最後の腕を胸に当てる振り付けをすぐやめてしまったこと(ガッツポーズ自体は見ていてこちらも嬉しい)あの、胸に手を当てる振り付けは素晴らしい芸術作品を見た後の観客のため息の余韻のためのものでもあるのです。友野選手が溜めがなかったことを指摘してくれて、嬉しい。
FS
4LOと4Sを綺麗に決め、4Tのあと少し足が引っかかったように見えた時はヒヤッとしましたが、落ち着いていました。
3Aはその印象を払拭するような美しさ、3連続がうまくいかなくても、思わず照れ笑いが出る心の余裕。1つ1つのジャンプが決まるたび、大きな歓声がおき、フランスの観客もまた宇野選手というスケーターの成長を見守ってきてくれたのだと思いました。
最後のステップで宇野選手の見せ場はここでもあると知っているという観客の歓声が嬉しい。
最後のポーズはステファンも一緒。
コーチになる前から宇野昌磨というスケーターを愛してくれたステファン。そのステファンに世界王者のコーチ兼コリオグラファーの称号というこれ以上ないお返し。
それとこのボレロの衣装はおニューですか?前も来ていましたか?ボレロがよりボレロっぽいです。
(洋服の名前のボレロの方の意味)演技も素晴らしかったせいか、今回の衣装の方がより好きかも。
小塚元選手が引退した時にもう競技フィギュアスケートを見るのはいいかな、と思っていたのですが、宇野選手だけは気になって、宇野選手だけは演技を見続けてきました。
宇野選手の努力や彼が観客に与えてくれた芸術的プログラムにこのようなご褒美が与えられ日がきてくれて嬉しいです。
記者会見でも、そういったプログラムに対する質問や感想があったのも嬉しかった。
宇野選手はノービスの頃から注目されるほどの表現力のあるスケーターなのに、こうしてタイトルを取った後にステファンや高橋大輔選手を目標する、という謙虚さ。ステファンや髙橋選手も本当に喜んでいることでしょう。
鍵山選手
このSPいいですね。ジャンプやスピンの要素だけではない、楽しいプログラム。彼の若さにも合っている。
金メダルが見えるところにあったと思うのですが、鍵山選手も高難易度のパッケージ。なかなか、いろいろなコントロールが難しかったのかな?と思います。なんにせよ、鍵山選手の前途は揚々に思えます。
友野選手
SP
誰もが予想しなかっただろうピンチヒッターで素晴らしい演技。友野選手も表現まで大事にしていて、世界選手権のSPトップ3が日本独占なんて日本選手の層の厚さに誇らしいやら、驚きやら。
FS
高難易度のジャンプが詰まったプログラム。決まらないジャンプもある中、友野選手はネガティブな気持ちをおくびにも出さず、表情も表現も観客を楽しませてくれる楽しいプログラムを演じきってくれました。これって、すごいこと!観客がそのことをわかっていて、楽しんでくれていて嬉しかったな。
ゾウ選手
SP
印象がよいプログラムでした。
回転不足(今はこういう言い方しないのかな)の点数の低さって大っ嫌い。こちらの印象に水をさされた気持ち。少なくとも、解説が演技中にその事をあえて指摘してくれなかったおかげでプログラム自体楽しむことができて良かったです。私は言葉数は控えめで全選手に温かな目線でコメントする解説が好みです。
坂本選手
坂本選手がなかなか結果を出せなかった頃、なんとなく、ぼんやりと、でも、今の競技が求めていることって、坂本選手みたいなスケートだよな?と思ったことがあって、そういうぼんやりとした直感って正しかったりするもんです。
突然、優勝候補として注目されるのはどれほどのプレッシャーだったでしょう。
演技前の表情で大きすぎるプレッシャーと闘っているのが分かります。
それでも、すべての要素を素晴らしい質で、世界選手権という場でも圧倒的なスピードで、2つのプログラムをクリーンに決めてくれました。
NHK杯の後のスケーターさんいらっしゃい、で、坂本さんが荒川さんに少し小さくなりながら、表現のことを問うた時(きっと、コーチ達から厳しく指導を受けているに違いない)、荒川さんがよくできてるよ、と誉めた言葉で坂本選手が花を咲かせたような笑顔を見せ、努力が実ってきていると遠慮がちに語ったのが印象的で、大勢の観客やテレビの前で荒川さんという存在に肯定してもらえるというのは現役アスリートにとって、ポジティブな影響を与えるのだ、と思ったものです。
その後も振付師のリショー氏はフランス人であり、今シーズンは坂本選手に全方向から追い風が吹いていると思わされた年でした。もちろん、実力に呼応した追い風です。金メダル、おめでとう。
樋口選手
FS
樋口選手も有力なメダル候補だとわかっていたと思います。ジャンプが決まらず、気落ちしそうな彼女を観客が鼓舞してくれました、全方位に温かな観客にありがとうと申し上げたい。
この曲をよく捉えていて、歯切れのよい動きはロシェット元選手を彷彿とさせ、好感が持てます。
河辺選手
NHK杯.全日本、いい選手だと思いました。
大舞台でなかなか実力を発揮出来なかったのは、かつての荒川さんも同じでした。シニアの競技生活はまだまだこれから、始まったばかりです。
三浦・木原組
正直、スケートアメリカの彼らの演技を見た時、デュハメル&ラダフォード組のようなすべてのエレメンツの質の良さに驚き(メーガンはコーチだった、なるほど)他のペアスケーターの演技を見ていないのに、世界選手権でメダルを取れる組だと思いました。
そして、今回、やはり他のペアの演技を見ていないのに、金メダル候補だと思っていました。
怖いのは、彼らが実際にその雰囲気に気付いていつも通りの演技が出来なくなってしまうこと。
五輪ではうまくセーブできていましたが、今回は金メダルが具体的に見えすぎる位置でプレッシャーが大きかったのだと思います。
spもFSも彼の今シーズンを思えばいい出来と言えませんでした。三浦選手の表情がこちらまで伝わってきて…。世界選手権のメダルを取るにふさわしいスケーターがそのメダルを取ることなく現役を終えていくのを何人も見てきたので、兎にも角にも、その実力のあるりくりゅうの手にメダルが納まったのは嬉しいです。来シーズンはもっと強くなることを信じています。
それにしても、木原選手の笑顔は観客を魅了していると思う。
ちなみに、木原選手が、ハオ・ジャン選手に技術的なアドバイスを求め、場所と時間を別に設けて教えて下さった、という話に感動しました。
中国の選手でも教え子でもない選手なのに、なんて素敵な方なのでしょう。ノブレス・オブリッジのような、世界トップレベルペアだった彼は世界のペアの普及も彼の役割のひとつと思った行動だと思います。高橋成美さんが、かつてのパートナーを絶賛するのも、ペア普及という日本のペア第一人者としての自覚からくるものだと思います。