新潟・山形の旅に持っていった
本。
行く前から読み始めて、旅行中は結局読まなくて(笑)、そして、最後の65冊全リストのところは読んでいない本のネタが分かってしまうとどうかと思ったので、読んだ本だけ読んでみました。
藤沢周平さんの作品の初期の頃はとても暗く、若かりし頃の藤沢さんは非常に困難な人生を歩んでいたと言われており、そのことが投影されている、というのはよく言われていますが、実際、周囲の人の話しや本人のエッセイを読むと大変なご苦労だったとお察しします。
教員として、非常に生徒たちに慕われて、恐らく、何事もなければそのまま教員を最後まで続けていた方なのではないのかと思いますが、結核になり、療養所へ。
恐らく、藤沢さんの人生でこの療養所ほど、いろいろな人たちに出会う機会はなかったのではないかと思う。
療養生活は真っ暗なものではなく、ここでの生活を時に楽しんで、そして、小説を書こうという意図があったのかはわからないけれど、いろいろな人間の観察をする機会になった場ではなかろうか?
療養という接点がなかれば、出会うことがなかったかもしれない人々と日々生活を共にすることで、藤沢作品にはいろいろなタイプの人間が、リアルに描かれている。
小説で知性と品のある文章から、藤沢さんとまったく違うような実際にいそうな市井の人々の心理描写や行動を描くのは、すごいなぁ、と思っていたんですね。苦労を糧にする人というのはこういう方なんだなぁ、と思う。
結核の手術をして、社会復帰するにあたり、教職員に復帰しようとするけれど、断られ、東京で記者の仕事を始める。
結婚をされて、子供が生まれるが、奥様と死別。すでに療養生活で、非常に苦労されているのに、こんなに苦難が待ち受けているものかと絶句。
再婚、直木賞受賞、仕事を辞めて、文筆業に専念。人気作家に。
教師を辞めても、東京に出ても、人気作家になっても藤沢さんは教え子たちとの縁が続き、ずっと彼らの成長を見守り続ける、そういう私たちの知らない人柄もこの本で書かれています。