CubとSRと

ただの日記

教科書の目指すところ

2024年05月01日 | 心の持ち様
書評 BOOKREVIEW
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 暗くて惨めな江戸時代ではなかった。世界的アーティストが輩出した文化大国だった
  国家のグランドデザインを描いた偉人、世界の発明をなした日本人に焦点

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『検定合格 新しい歴史教科書(市販版)』(自由社)
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 新しい歴史教科書をつくる会の『中学歴史』の最新市販本である。
 今度は一発で検定合格。それなりに苦心のあとが滲み出ている。
 旧版の表紙は中央に縄文土偶の合掌土偶、金閣寺や和同開珎がデザインに配されていた。今回は二宮金次郎と縄文建築が中軸に置かれ、伊勢神宮の式年遷宮の写真、中扉に国宝となった五つの縄文土偶が並ぶ。

 中学生が国宝級の土偶を製作した縄文時代のことを客観的に知れば、日本古代史への誇りを持てるというものだろう。
 中学歴史教育は日本人に誇りを持たせることが本筋であるべきで、これまでのようにひたすら江戸時代は暗い時代だったとか、戦前は軍国主義だったとかの過剰な、自虐的な記述は控えられた。
 そして日本のグランドデザイナーとして、聖徳太子、井上毅、渋沢栄一らを取り上げ、また命がけで元寇の侵略から祖国をまもった鎌倉武士を力説する。

 従来の暗い日本史はマッカーサーが塗り替えていった置き土産である。
 主権を回復し独立を果たしたのに日本の歴史教育の現場は、或る強迫観念に支配されてきた。マルクス主義の進歩史観をなかなか克服できなかったのも、現場教師、教育委員会そして日教組が改革を阻んだからだ。
 文科省もまるで意欲がなく、左翼教科書は間違いだらけでも検定を通し、ちゃんとした教科書には難癖をつけるばかりだった。
 日本の神話は捏造だったとか、欠史八代とか、縄文時代は世界に取り残されていた非文明だったとか、まちがった記述の教科書が検定合格だったのである。

 自由社の教科書は、脳幹に染みついて自虐史観をただし、教育基本法にあるように「わが国と郷土を愛する態度を扶養し、歴史に対する愛情を深める(学習指導要領)。GHQのおしつけた太平洋戦争史観も、ちゃんと「大東亜戦争」に改められ、「大東亜戦争(太平洋戦争)」となった。

 コミンテルンの秘密指令もちゃんと旧版から紹介されていて、つぎの説明がある。
 「コミンテルンがいちはやく中国共産党をつくり、革命運動を強力に指導しました。蒋介石は北伐の途上にあった1926年に、モスクワが指示した次の秘密文書を入手しました。
 『あらゆる方法を用いて国民大衆による外国人排斥をひきおこさなければならない。この目的達成のためには各国と大衆とを武力衝突させなければならない。これによって各国の干渉を引き起こすことが出来たならば、さらに方法を選ばずそれを貫徹すべきである。たとえ略奪や多数の惨殺をもたらすものであってもかまわない』」。
 この司令の下に中国では盧溝橋事件を引き起こし、通州で多数の日本人を殺害し、上海租界空爆などを引き起こしたのだ。かくて日本は大陸に引き摺り込まれた。

 歴史は人物中心の英雄が基軸となって動く。
 暗かったのは江戸時代ではなく、従来の歴史教科書のほうである。

                     (宮崎正弘)

 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024)4月30日(火曜日)弐
        通巻第8234号より
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