昨今の酪農を取り巻く情勢は,牛乳の消費低迷や輸入飼料の高止まり等厳しさを増しています。当農業改良普及センターでは,こうした状況下においても酪農家にやる気を醸成するとともに酪農技術の向上と効率的な経営管理の実践による所得の向上を図ることを目的に,白石刈田地区酪農組合連合会と共催の酪農講演会(農業経営セミナー )を平成23年2月8日に大河原合同庁舎で開催しました。当日は酪農家を中心に58名の参加でした。
講師は,みやぎの酪農農業協同組合の飯塚倫康指導課長と渥美牛群管理サービスの渥美孝雄獣医師のお二人です。
飯塚先生からは,「酪農を巡る現状と対策~生き残る酪農家となるために」と題して牛乳・乳製品を巡る国境措置,乳業業界の動きや消費動向等国内外の酪農を取り巻く現状から始まり「あなたの牛舎には埋蔵金が」をキーフレーズに元気な仙南の酪農を目指したお話がありました。
渥美先生からは,「受精卵を活用した酪農家の経営戦略」と題して,牛の受精卵移植(ET,体内受精卵・体外受精卵利用) 技術は年々進歩しており,現在では受胎率は一般的な人工授精(AI)に匹敵する段階に達しており,その技術のメリットとして乳牛の腹を借りた高価格が期待できる黒毛和種の素牛づくり,酪農における優良後継牛づくりや高気温下の夏場での受胎率向上等があるというお話がありました。
さらに渥美先生は,黒毛和種の素牛づくりを業務の中心に据えつつも,酪農における優良後継牛づくりや経膣採卵技術(OPU)を用いた体外受精卵の利用を広げていきたいとのことでした。
また飯塚先生,渥美先生のお二人とも受精卵移植等の高度技術の利用の前提として,労働力に見合う適切な飼養規模・牛の快適な飼養環境の確保・繁殖栄養管理・ストレス防止等の基本技術の大切さを強調されていました。
参加者の中には,既に受精卵移植に取り組んでいる,或いは今後の取り組みを考えている関心の高い酪農家が多く,熱心に耳を傾け,これからの経営戦略に参考になったようでした。
〈連絡先〉大河原農業改良普及センター 先進技術第一班
TEL:0224-53-3496 FAX:0224-53-3138