そよ風つうしん

小さな自然の発見をご紹介してきましたが、転居で環境が激変。内容を一部変更し日々の雑感を綴ったりもしています

静かに心の支えとなってくれる詩を

2022年01月24日 | 心に残っている言葉
上皇后美智子さまがお若い頃から愛され、ご自身で英訳なさって世界に広がっていったという素晴しい詩です。

この詩は、終戦後3年という時期に発表されています。
戦争で多くを失った深い悲しみの中にある人々の心と、そこに降りつむ雪の静けさの中で、希望を失わず生き抜けと、あたたかく励ましてくれる豊かさを感じる詩だと思います。

戦後という時期でなくても、様々な悲しみ苦しみの多い今の世に、静かな励ましを送ってくれる詩ではないでしょうか。

>『AERA』(朝日新聞社 2019.1.21刊)より

     


      降りつむ
              永瀬清子

かなしみの国に雪が降りつむ

かなしみを糧として生きよと雪が降りつむ

失いつくしたものの上に雪が降りつむ

その山河の上に

そのうすきシャツの上に

そのみなし子のみだれたる頭髪の上に

四方の潮騒いよよ高く雪が降りつむ

夜も昼もなく

長いかなしみの音楽のごとく

哭きさけびの心を鎮めよと雪が降りつむ

ひよどりや狐の巣にこもるごとく

かなしみにこもれと

地に強い草の葉の冬を越すごとく

冬を越せよと

その下からやがてよき春の立ちあがれと雪が降りつむ

無限にふかい空からしずかにしずかに

非情のやさしさをもって雪が降りつむ

かなしみの国に雪が降りつむ



コメント (4)
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