北信濃では5年ぶりの大雪が降りました。善光寺に比べても積雪の少ない妻女山ですが、さすがに30センチ近く積もりました。雪があがった晴天の午後にアニマル・トラッキングに出かけました。といっても所用帰りのわずか30分余りの時間ですが・・。アニマル・トラッキングとは、直訳すると動物の追跡ですが、主に足跡や食痕、糞などを手がかりに動物の追跡をし、その行動を推測することです。もし発見できれば観察する事もできます。
急坂のカーブでタイヤがスリップして登れないため下に駐車して登りました。妻女山松代招魂社の奥の駐車場に行くとバージンスノーの上に林道に向かって足跡がありました。二本の蹄の形からニホンカモシカのものと分かります。後ろにハの字に開いた副蹄(ふくてい)の跡があればイノシシです。深い雪だとニホンカモシカも副蹄の跡がつきますがハの字に開いていません。また、蹄がイノシシやシカよりやや開いています(岩場にも立てる)。足跡が乱れてその辺りを掘り返してあれば間違いなくイノシシです。
足跡を見ると分かりますが、山中を縦横無尽に歩き回っているわけではないということが分かります。獣道というものがあり、それに沿って餌を食べながら歩いているのです。それは母親から教わったり、何代もに渡って継承されてきた道なのです。ある秋のことですが、キノコ狩りの帰りにその獣道を歩いていると、前をニホンカモシカが歩いていました。ハッと思った時に向こうも振り返って気づきシュッと威嚇音を発して上の林道に逃げました。しかし、そのまま逃げずに上の林道からずっと私に付いて来て時々威嚇音を発するのです。「俺の道を勝手に歩くんじゃねえよ!」とでも言いたげでした。
駐車場の足跡をしばらく追ってみましたが、深い谷へ下りて向かいの尾根へと消えていました。今日は遇えないかなと、時間もないので諦めて変えることにしました。展望台を回り坂道を下りて行ったときのことです。背中に誰かの視線を感じました。振り返るとだれもいません。おかしいなと思って帰りかけてもう一度振り返って上を見ると、崖の上にニホンカモシカが一頭ジッと立ったまま私を見つめていました。カメラを向けて崖下に近づいても動きません。
ニホンカモシカは、積雪が多く座れない時はジッと立ったまま反芻します。これを「ニホンカモシカの寒立ち」、俗に「アオの寒立ち」といいます。アオとはマタギの人がカモシカを呼ぶ名で、青味がかった灰色の毛を称したものだと思われます。その毛は氈(かも)と呼ばれ、防水性と保温性が極めて高い為に珍重され、肉と共に恰好の狩猟の対象となったわけです。先日はシダ植物を食べているのを目撃しましたが、深い雪で埋もれてしまうと冬芽や樹皮を食べます。特に春に向かって栄養を溜め込んでいる冬芽は、餌の乏しい冬期のなによりのごちそうなんでしょう。
10分ほど観察していましたが、その間こちらを気にしつつもまったく動きませんでした。そして10分位してやっとゆっくりと動き出しましたが、招魂社の石碑の裏辺りで再び立ち止まりまた動かなくなりました。反芻動物が実際に消化吸収しているのは、植物そのものではなく共生微生物およびその代謝産物なので、厳密には草食動物ではなく菌食動物というべきという考え方もあります。第一胃から第四胃までを、ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラといいますが、焼き肉屋さんでおなじみですね。ちなみに内蔵料理は、私の得意分野で、「トリッパのトマト煮込み」なんていうのもあります。
そのまま5分ほどいたでしょうか、するとゆっくりと動きだしてうちの森がある方へと消えていきました。どうやらここが冬に寒立ちして反芻するために休息する場所と決めている様です。後日また来てみることにしました。何度も出会っているので私の顔も覚えたでしょう。警戒心も少しずつは薄くなってきたような気がします。最後に、
妻女山から奇妙山・皆神山・保基谷岳・松代城下を望むパノラマ写真を撮影して帰りました。
妻女山のニホンカモシカ 2は、次の記事で。
★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。ニホンカモシカの写真もこちらで。
急坂のカーブでタイヤがスリップして登れないため下に駐車して登りました。妻女山松代招魂社の奥の駐車場に行くとバージンスノーの上に林道に向かって足跡がありました。二本の蹄の形からニホンカモシカのものと分かります。後ろにハの字に開いた副蹄(ふくてい)の跡があればイノシシです。深い雪だとニホンカモシカも副蹄の跡がつきますがハの字に開いていません。また、蹄がイノシシやシカよりやや開いています(岩場にも立てる)。足跡が乱れてその辺りを掘り返してあれば間違いなくイノシシです。
足跡を見ると分かりますが、山中を縦横無尽に歩き回っているわけではないということが分かります。獣道というものがあり、それに沿って餌を食べながら歩いているのです。それは母親から教わったり、何代もに渡って継承されてきた道なのです。ある秋のことですが、キノコ狩りの帰りにその獣道を歩いていると、前をニホンカモシカが歩いていました。ハッと思った時に向こうも振り返って気づきシュッと威嚇音を発して上の林道に逃げました。しかし、そのまま逃げずに上の林道からずっと私に付いて来て時々威嚇音を発するのです。「俺の道を勝手に歩くんじゃねえよ!」とでも言いたげでした。
駐車場の足跡をしばらく追ってみましたが、深い谷へ下りて向かいの尾根へと消えていました。今日は遇えないかなと、時間もないので諦めて変えることにしました。展望台を回り坂道を下りて行ったときのことです。背中に誰かの視線を感じました。振り返るとだれもいません。おかしいなと思って帰りかけてもう一度振り返って上を見ると、崖の上にニホンカモシカが一頭ジッと立ったまま私を見つめていました。カメラを向けて崖下に近づいても動きません。
ニホンカモシカは、積雪が多く座れない時はジッと立ったまま反芻します。これを「ニホンカモシカの寒立ち」、俗に「アオの寒立ち」といいます。アオとはマタギの人がカモシカを呼ぶ名で、青味がかった灰色の毛を称したものだと思われます。その毛は氈(かも)と呼ばれ、防水性と保温性が極めて高い為に珍重され、肉と共に恰好の狩猟の対象となったわけです。先日はシダ植物を食べているのを目撃しましたが、深い雪で埋もれてしまうと冬芽や樹皮を食べます。特に春に向かって栄養を溜め込んでいる冬芽は、餌の乏しい冬期のなによりのごちそうなんでしょう。
10分ほど観察していましたが、その間こちらを気にしつつもまったく動きませんでした。そして10分位してやっとゆっくりと動き出しましたが、招魂社の石碑の裏辺りで再び立ち止まりまた動かなくなりました。反芻動物が実際に消化吸収しているのは、植物そのものではなく共生微生物およびその代謝産物なので、厳密には草食動物ではなく菌食動物というべきという考え方もあります。第一胃から第四胃までを、ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラといいますが、焼き肉屋さんでおなじみですね。ちなみに内蔵料理は、私の得意分野で、「トリッパのトマト煮込み」なんていうのもあります。
そのまま5分ほどいたでしょうか、するとゆっくりと動きだしてうちの森がある方へと消えていきました。どうやらここが冬に寒立ちして反芻するために休息する場所と決めている様です。後日また来てみることにしました。何度も出会っているので私の顔も覚えたでしょう。警戒心も少しずつは薄くなってきたような気がします。最後に、
妻女山から奇妙山・皆神山・保基谷岳・松代城下を望むパノラマ写真を撮影して帰りました。
妻女山のニホンカモシカ 2は、次の記事で。
★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。ニホンカモシカの写真もこちらで。