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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

卯の花や山蛍袋が咲きだして、縮緬山椒を作る雨上がりの午後(妻女山里山通信)

2015-06-05 | アウトドア・ネイチャーフォト
 真っ白な卯の花(ウツギ)の花が咲き出すと、そろそろ梅雨が近いなと感じます。長野シニア大学の二日間の講座も無事にやり終えて一安心。休憩時間や終了後には、質問攻めになるほど皆さんの向学心が強く、お陰様で大好評でした。驚きや笑いが取れたのは良かったのですが、同時に里山の危機を話さなければならなかったことには、正直複雑な想いもありました。しかし、ネオニコチノイド系農薬やグリホサート系農薬、そして放射能の問題は、避けて通ることができません。受講生の関心も非常に高いものがありました。

 ウツギの花を見ると、多くの方は「卯の花の匂う垣根に~」という『夏は来ぬ』の歌を思い出すでしょう。この歌は、万葉学で知られる歌人、佐佐木信綱(1872~1963)の作詞です。卯の花に匂いはあまりないので、これは純白の花の色が映える様をいうのでしょう。古語では視覚的に映えることもにほうと言いましたから。
「霍公鳥(ほととぎす) 来鳴き響(どよ)もす 卯の花の 共にや来しと 問はましものを」万葉集
 ホトトギスのキョッキョッキョッ!という森中に響き渡る激しい鳴き声は、確かに凄いものがありますが、ウツギの花と一緒に来たのかい?と問いかける万葉人の自然や季節の移ろいに対する感性や心根の優しさが伝わってきます。
 ヤマホタルブクロの群生地が、妻女山展望台の裏にあります。毎年、梅雨明け頃に除草されてしまうのですが、毎年咲き誇ります。キキョウ科なので、根茎が残っていれば大丈夫なのでしょう。
 ヤブヘビイチゴの真っ赤な実があちこちに。無毒ですが、無味で美味しくはありません。ただ、熱や咳、喉の痛みや痔などに効く薬草です。抗がん活性作用もあるそうです。似ているヘビイチゴの実は艶がなく淡い色です。
「蟒蛇(うわばみ)の 喰う様可笑し 蛇苺」 林風
蛇は食べませんけどね。

 ゴールデンウィークには、貝母(編笠百合)が咲き誇っていた陣場平。ずいぶん緑が濃くなりました。気になるのは、昨年も除草した帰化植物のオオブタクサやヨウシュヤマゴボウが見られることです。今年も、6月下旬に妻女山里山デザイン・プロジェクトの面々で、除草作業をする予定です。

 貝母の実。中は、枯れているのが貝母。既に種が散布されているものも多く見られました。月末までには、全て溶けて消えるでしょう。その頃には、オオムラサキのオスが舞い始めます。
 右はイボタノキ。ウラゴマダラシジミの食草なんですが、林道脇にあるものは、よく梅雨明けの除草で切られてしまいます。貴重なシジミチョウの卵が、何百と一度に失われてしまいます。

 その近くの枝にぶら下がっていた、スズメガ科のエゾスズメです。幼虫の食草は、オニグルミの葉なんですが、この近くに何本もあるのです。薄暗い林下だったので、あまりやらないのですがフラッシュを焚いてみました。左が実際の色彩です。ずいぶんと色が変わるものです。まあ、これが私がフラッシュを使わない理由なんですが。それにしても綺麗なフォルムと色合いです。

 ウスバシロチョウも、ほとんどが姿を消しました。これはメスかな、メスなら交尾板がついているかなと思ったのですが、翅を閉じてくれないので確認できませんでした。せっかくと実山椒を摘みました。ちりめん山椒を作るためです。トゲがあるし、実が小さいので集めるのは結構根気が要ります。信州の方言(実は古語)でいうと、ずくがないとできません。
 右ができあがり。京都の土産の様に佃煮ではありません。煮物です。一度しか茹でこぼさないので、食べるとジンジン痺れます。これがいいのです。私の大好物です。ただ福一以降、安全なチリメンジャコやコウナゴを手に入れるのが非常に難しくなりました。無責任な極悪企業盗電を呪います。

 帰りに妻女山展望台へ寄ると、鳶(トビ・トンビ)が、畑地の獲物(野ねずみやもぐら、時には蛇や蛙)を求めて旋回していました。この日はノスリは見ませんでした。羽や体の模様や形も違いますが、鳴き声もトンビは「ぴ~ひょろろ」で、ノスリは「ぴ~え~」という感じです。

 畑に寄ってカモミールを摘みました。煮だしてカモミール・アイスティーを作ります。昔は苦手な味だったのですが、ある日突然好きになりました。今では、これの焼酎割りもよく飲みます。アマポーラも、今が盛りと咲いていますが、畑の方まで広がっていくのが頭痛の種です。
 昨年は、半分が凍みて溶けてしまったので、今年はやや多めに作ったスナップエンドウなんですが。成り過ぎて困っています。もちろん無農薬無化学肥料です。講座で3日ほど収穫をさぼっていたら、えらいことになっていました。パンパンに膨れてグリーンピースの様です。こうなると一度茹でたり蒸したりしないと使えません。しばらくスナップエンドウ三昧の日々が続きそうです。和洋中華エスニックと、なんにでも使える便利な食材ですが、ちょっとアイデアが尽きてきました。夏野菜の種も先日の雨で発芽しましたが、お湿りが足りない。まとまった雨が欲しいところです。
 そして、親戚から淡竹(はちく)が採れたから取りに来てと電話。淡竹は一度茹でこぼすだけでいいので調理が簡単。鯖の水煮の缶詰(福一以前に買ったもの)と味噌煮にするのは、この季節の信州の郷土料理。なかなか美味しくできました。もちろん筍ご飯も。筍のフライも美味です。

 雨が降るというので、急遽仕事を中止してニンジン、モロッコインゲン、トウモロコシ、フェジョン・プレッタ(ブラジルの豆)、エンサイ、ゴーヤを蒔きました。午後になってまとまった雨が降り出しました。まさに恵みの雨です。雨があがったら、向こう隣のTさんの畑にノスリが来るかもしれません。カメラをセッティングして待ちましょうか。

6月3日、長野市松代町清野大村地区の人家近くに子熊が出没。淡竹の筍を食べに来たと思われます。近くに母熊もいるはず。筍が採れる間は要注意。今週末に鞍骨山へ行く人や林道ツーリングの人は、熊鈴・ホイッスルなど必携です。淡竹は、ここだけでなく鏡台山周辺の山麓にはたくさんあります。他の山も含め注意が必要です。

ネオニコチノイド系・グリホサート系農薬の恐怖
 金沢大学教授山田敏郎さんは、「ネオニコは、毒性が強く分解しにくく、『農薬』というより『農毒』に近い。このまま使い続け、ミツバチがいなくなれば農業だけでなく生態系に大きな影響を与える。ネオニコの危険性を多くの人に知ってもらいたい」と語っているのです。生態系には、もちろん人間も当然含まれます。
 群馬県前橋市で、松枯れ病対策としてネオニコチノイド系殺虫剤が使用されるようになった2003年以降、ネオニコチノイド系殺虫剤が原因と思われる頭痛、吐き気、めまい、物忘れなどの自覚症状や、頻脈・除脈等の心電図異常がみられる患者が急増しています。なんと日本のネオニコチノイド系農薬の残留基準は、欧米よりも緩い基準値(日本は、アメリカの10倍、欧州の100倍近い)。(青山内科小児科医院 青山美子医師)
 ネオニコチノイド剤の使用が増え始めた2006年頃から、農薬散布時に自覚症状を訴える患者が増加。中毒患者には、神経への毒性とみられる動悸、手の震え、物忘れ、うつ焦燥感等のほか、免疫系の異常によると考えられる喘息・じんましんなどのアレルギー性疾患、皮膚真菌症・風邪がこじれるなどの症状も多くみられます。日本では、果物の摂食、次いで茶飲料の摂取、農薬散布などの環境曝露と野菜からの摂取も多い。受診した患者では、果物やお茶の大量摂取群に頻脈が見られ、治療の一環で摂取を中止させると頻脈が消失します。(東京女子医科大学東医療センター麻酔科医師 平久美子氏)
 ネオニコチノイド系農薬の人体への影響として、空中散布や残留した食品の多量摂取による心機能不全や異常な興奮、衝動性、記憶障害など、急性ニコチン中毒に似た症状が報告されています。
また、ネオニコチノイド系は胎盤を通過して脳にも移行しやすいことから、胎児・小児などの脳の機能の発達を阻害する可能性が懸念されます。(東京都神経科学総合研究所 黒田洋一郎氏):ダイオキシン国際会議ニュースレターより抜粋


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