陣場平の貝母(ばいも:和名はアミガサユリ)は下から半分ほどがしぼみました。明日は28度とかの予報なので見納めになるでしょう。
今日は、昨日の信毎の朝刊を見たと言って40人ほどが訪れてくれました。県外からも。貝母を見てから鞍骨山へ向かった人達もいた様です。信毎一面の威力は凄いですね。周りの緑も賑やかになってきました。午後は強風になることが多いのでおにぎりを持って午前中に来ることをお勧めします。
スマホの人が多くて下向きに咲く貝母の撮影には苦労していました。横向きに咲いている花を紹介してあげました。薬草ですがかなり強い毒草であることや、15年の開発と保全の話もしました。今年の貝母は数回のなごり雪のために、やや草丈が低いのですが、それでも最も高いものは128センチありました。
東の端にはズミが満開です。昔、りんごの台木として使われました。シジュウカラが盛んに鳴いています。
まだ咲いている貝母の花。雌しべの根本には糸巻き形の6角形の実ができています。この実は6月末には3センチぐらいになります。枯れると蒴果といってホウセンカの様に種を弾き飛ばします。その時、東風(こち)が吹くことが多いので、貝母は西へと増えていきます。種から発芽して花が咲くまでは7、8年かかります。
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」丈部(はせつかべ・はせべ)真麻呂(万葉集)
これが貝母のことであるという説があります。丈部真麻呂は、遠江国山名郡(現在の静岡県袋井市)で徴兵され九州に派遣され国境警備にあたった兵士・防人(さきもり)でした。
意味は、季節ごとに花は咲くのに、どうして母という花は咲かないのだろうか(咲くのだったら摘み取って共に行くのに)。防人というのは、21歳から60歳までの健康な男子が徴兵されました。任期は三年で、延長もされたそうです。食料・武器は自弁で帰郷は一人で帰るため、途中で野垂れ死ぬ者も少なくなかったとか。人民には重い負担になったようです。
陣場平の上の入り口の20mぐらい下に咲くウワミズザクラ(上溝桜)が満開になりました。
遠目ではとても桜に見えませんが、こうしてアップにすると小さな桜だと分かります。
15年前に藪を切り払い灌木を切ったら、昔あったアカネ(茜)が出るようになりました。
あちこちでサンショウ(山椒)の若葉が。摘んで佃煮を作るには、2〜3時間摘まないとだめですね。木の芽和えなどにするなら30分も摘めばいいでしょう。
上の入り口から入るとゴヨウアケビ(五葉木通)の花が見られます。
貝母の花に隠れて山蕗の花。もう結実しています。
クヌギの幼木に、ナラメリンゴフシ(楢芽林檎五倍子)。ナラリンゴタマバチによって作られた虫コブ(虫えい・ゴール)です。ナラメリンゴタマバチ(雌)が交尾後、コナラの根に楢根玉五倍子(ナラネタマフシ)を作ります。そこから冬に羽化した雌が単性生殖でコナラの冬芽に産卵し、それがこのような五倍子(フシ)を形成するのです。形成されたフシは卵の揺りかごであり幼虫になっては餌となります。コナラの冬芽をこんな風に変形させてしまうのですから恐るべしかなナラリンゴタマバチ。タマバチのタマとは、このリンゴ状のフシのことです。
虫コブは古くから利用されてきました。マタタビはマタタビミミタマバエの作る虫コブができて初めて価値あるマタタビ酒になります。また、ヌルデ(白膠木)の若芽や若葉などにヌルデシロアブラムシが寄生してできる虫こぶ(ヌルデミミフシ)は、お歯黒、染め物、薬、インク、占いなどに使われてきました。特に染料は、空五倍子色という伝統色で、古代より(正倉院にあり)珍重されてきました。
春型のアゲハも舞い始めました。ヒメオドリコソウで吸蜜しています。食草の山椒の木が多いのも見られる理由でしょう。冬越しのルリタテハも。貝母が咲き終わっても里山の魅力は続きます。樫の木のベンチに腰掛けて鳥のさえずりを聴いているだけでストレスは雲散霧消します。
陣場平の上の入り口。小道を入ってすぐ右の足元にハナヤスリの群生地があります。小さな水芭蕉の様な葉がそれです。希少なシダ類です。
堂平大塚古墳へ下る道の脇にキジムシロ(雉筵)が咲いていました。春に咲くバラ科の黄色い花は、キジムシロ、ミツバツチグリ、ツルキンバイ、クサイチゴ、ヘビイチゴなど皆似ていて同定に苦労します。
妻女山松代招魂社の八重桜も満開になりました。この花弁で桜茶が作れます。
妻女山への登り口にクサノオウ(瘡の王)が咲き始めました。毒草なので触らないでください。小学生の遠足コースなので、引率の先生にアドバイスしたことがあります。これからイカリソウやアマドコロ、ホタルカズラが咲き、ウスバシロチョウが舞い始めます。これからオオスズメバチの女王が巣作りのために飛び始めるので、黒い服は避けてください。
翌26日は最高気温が28度の予報。早めに登ってノイバラやヤマフジの除去作業をしました。やはり信毎を見たと言って登ってきた人が30人以上。鞍骨山へ向かった人も大勢いました。例年の見頃は4月10日から20日頃という話や、当ブログで開花情報を出していることなどをお話しました。みなさんが帰った頃にサンコウチョウが鳴き出したのは残念でしたが。堂平大塚古墳では猛毒のレンゲツツジが咲き出しました。これからKさんが植えたリュウキュウツツジや色々なツツジが咲き出します。ホタルカズラも咲き出した様です。
貝母を見に来た女性にオオスズメバチの女王蜂が暫くの間まとわりつきました。これは化粧品や香水、柔軟剤やシャンプーの甘い香りに惹きつけられたのです。山に来る際は、無臭が原則。ミントやハッカの香りは虫が嫌います。防虫スプレーや手作りの防虫オイルを塗ってくるといいでしょう。前記した様に黒い服や黒髪もハチに狙われます。まとわりつかれたら絶対に声を上げたり手で払ったりしては駄目です。刺されます。おとなしくジッとしていること。やがて去ります。
■ 「村上春樹さんのピーター・キャットを中心とした70年代のクロニクル」というムサビの美大生時代に彼のジャズ喫茶でアルバイトしていた当時のブログは世界中からアクセスがあります。この文章をクリックで見られます。ロンドンに5週間住んでいて、Queenのフレデイ・マーキュリーの恋人のメアリー・オースチンが勤めていたBIBAの店で当時の私の恋人が彼女からジャケットを買った話。70年代の美大生の赤裸々な人生が見られます。
●インスタグラムはこちらをクリック。ツイッターはこちらをクリック。YouTubeはこちらをクリック。米子大瀑布、絶滅危惧種のナミルリモンハナバチ・キバネツノトンボ・北信流など。これからどんどんアップしていきます。。
もう一つの古いチャンネルはこちら。76本のトレッキングやネイチャーフォト(昆虫や粘菌など)、ブラジル・アマゾン・アンデスのスライドショー。
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。講演は一人1000円✕10人、60分が最低基準です。掲載の写真は有料でお貸しします。他のカットも豊富にあります。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
今日は、昨日の信毎の朝刊を見たと言って40人ほどが訪れてくれました。県外からも。貝母を見てから鞍骨山へ向かった人達もいた様です。信毎一面の威力は凄いですね。周りの緑も賑やかになってきました。午後は強風になることが多いのでおにぎりを持って午前中に来ることをお勧めします。
スマホの人が多くて下向きに咲く貝母の撮影には苦労していました。横向きに咲いている花を紹介してあげました。薬草ですがかなり強い毒草であることや、15年の開発と保全の話もしました。今年の貝母は数回のなごり雪のために、やや草丈が低いのですが、それでも最も高いものは128センチありました。
東の端にはズミが満開です。昔、りんごの台木として使われました。シジュウカラが盛んに鳴いています。
まだ咲いている貝母の花。雌しべの根本には糸巻き形の6角形の実ができています。この実は6月末には3センチぐらいになります。枯れると蒴果といってホウセンカの様に種を弾き飛ばします。その時、東風(こち)が吹くことが多いので、貝母は西へと増えていきます。種から発芽して花が咲くまでは7、8年かかります。
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」丈部(はせつかべ・はせべ)真麻呂(万葉集)
これが貝母のことであるという説があります。丈部真麻呂は、遠江国山名郡(現在の静岡県袋井市)で徴兵され九州に派遣され国境警備にあたった兵士・防人(さきもり)でした。
意味は、季節ごとに花は咲くのに、どうして母という花は咲かないのだろうか(咲くのだったら摘み取って共に行くのに)。防人というのは、21歳から60歳までの健康な男子が徴兵されました。任期は三年で、延長もされたそうです。食料・武器は自弁で帰郷は一人で帰るため、途中で野垂れ死ぬ者も少なくなかったとか。人民には重い負担になったようです。
陣場平の上の入り口の20mぐらい下に咲くウワミズザクラ(上溝桜)が満開になりました。
遠目ではとても桜に見えませんが、こうしてアップにすると小さな桜だと分かります。
15年前に藪を切り払い灌木を切ったら、昔あったアカネ(茜)が出るようになりました。
あちこちでサンショウ(山椒)の若葉が。摘んで佃煮を作るには、2〜3時間摘まないとだめですね。木の芽和えなどにするなら30分も摘めばいいでしょう。
上の入り口から入るとゴヨウアケビ(五葉木通)の花が見られます。
貝母の花に隠れて山蕗の花。もう結実しています。
クヌギの幼木に、ナラメリンゴフシ(楢芽林檎五倍子)。ナラリンゴタマバチによって作られた虫コブ(虫えい・ゴール)です。ナラメリンゴタマバチ(雌)が交尾後、コナラの根に楢根玉五倍子(ナラネタマフシ)を作ります。そこから冬に羽化した雌が単性生殖でコナラの冬芽に産卵し、それがこのような五倍子(フシ)を形成するのです。形成されたフシは卵の揺りかごであり幼虫になっては餌となります。コナラの冬芽をこんな風に変形させてしまうのですから恐るべしかなナラリンゴタマバチ。タマバチのタマとは、このリンゴ状のフシのことです。
虫コブは古くから利用されてきました。マタタビはマタタビミミタマバエの作る虫コブができて初めて価値あるマタタビ酒になります。また、ヌルデ(白膠木)の若芽や若葉などにヌルデシロアブラムシが寄生してできる虫こぶ(ヌルデミミフシ)は、お歯黒、染め物、薬、インク、占いなどに使われてきました。特に染料は、空五倍子色という伝統色で、古代より(正倉院にあり)珍重されてきました。
春型のアゲハも舞い始めました。ヒメオドリコソウで吸蜜しています。食草の山椒の木が多いのも見られる理由でしょう。冬越しのルリタテハも。貝母が咲き終わっても里山の魅力は続きます。樫の木のベンチに腰掛けて鳥のさえずりを聴いているだけでストレスは雲散霧消します。
陣場平の上の入り口。小道を入ってすぐ右の足元にハナヤスリの群生地があります。小さな水芭蕉の様な葉がそれです。希少なシダ類です。
堂平大塚古墳へ下る道の脇にキジムシロ(雉筵)が咲いていました。春に咲くバラ科の黄色い花は、キジムシロ、ミツバツチグリ、ツルキンバイ、クサイチゴ、ヘビイチゴなど皆似ていて同定に苦労します。
妻女山松代招魂社の八重桜も満開になりました。この花弁で桜茶が作れます。
妻女山への登り口にクサノオウ(瘡の王)が咲き始めました。毒草なので触らないでください。小学生の遠足コースなので、引率の先生にアドバイスしたことがあります。これからイカリソウやアマドコロ、ホタルカズラが咲き、ウスバシロチョウが舞い始めます。これからオオスズメバチの女王が巣作りのために飛び始めるので、黒い服は避けてください。
翌26日は最高気温が28度の予報。早めに登ってノイバラやヤマフジの除去作業をしました。やはり信毎を見たと言って登ってきた人が30人以上。鞍骨山へ向かった人も大勢いました。例年の見頃は4月10日から20日頃という話や、当ブログで開花情報を出していることなどをお話しました。みなさんが帰った頃にサンコウチョウが鳴き出したのは残念でしたが。堂平大塚古墳では猛毒のレンゲツツジが咲き出しました。これからKさんが植えたリュウキュウツツジや色々なツツジが咲き出します。ホタルカズラも咲き出した様です。
貝母を見に来た女性にオオスズメバチの女王蜂が暫くの間まとわりつきました。これは化粧品や香水、柔軟剤やシャンプーの甘い香りに惹きつけられたのです。山に来る際は、無臭が原則。ミントやハッカの香りは虫が嫌います。防虫スプレーや手作りの防虫オイルを塗ってくるといいでしょう。前記した様に黒い服や黒髪もハチに狙われます。まとわりつかれたら絶対に声を上げたり手で払ったりしては駄目です。刺されます。おとなしくジッとしていること。やがて去ります。
■ 「村上春樹さんのピーター・キャットを中心とした70年代のクロニクル」というムサビの美大生時代に彼のジャズ喫茶でアルバイトしていた当時のブログは世界中からアクセスがあります。この文章をクリックで見られます。ロンドンに5週間住んでいて、Queenのフレデイ・マーキュリーの恋人のメアリー・オースチンが勤めていたBIBAの店で当時の私の恋人が彼女からジャケットを買った話。70年代の美大生の赤裸々な人生が見られます。
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