棄老伝説で有名な姥捨山は、観月の名所。鏡台山に月が昇る様は古代より詠われ、広重の浮世絵『信濃 更科田毎月 鏡台山』は、江戸後期の名作です。その鏡台山から北に延びる戸神山脈の一端が、第四次川中島合戦の折に上杉謙信が本陣としたと伝わる妻女山。現在の妻女山は旧赤坂山で、本来の妻女山はその上の斎場山なのですが、その斎場山から謙信が陣城を築いたと伝わる陣場平を経由して天城山(手城山・てしろやま)を中心に十字に尾根が延びています。
今回は、久しぶりにフィールドワークを兼ねて鞍骨城跡手前まで辿ってみました。今秋は異常に暖かい日が続き、里山の紅葉は遅れています。そのためか地温がまだ高めで霜もおりていないため、羽虫の発生が凄くブユに刺されまくりです。鞍骨山への途中で、ムラサキシメジのシロへ立ち寄ってみました。数日前の雨でたくさん出ているかと思えば、小さいものが数本あっただけでした。ムキタケとシイタケのポイントへ行くと、何かが齧(かじ)った跡が。ニホンカモシカです。
ニホンカモシカの食べるものは、非常に多岐に渡っていて、草本や木の葉はもちろん、木の芽、樹皮から、冬は枯葉やシダ類も食べます。キノコは、妻女山山系にあるものは、ムキタケとシイタケ以外にはヒラタケにも食痕が見られます。ムラサキシメジとクリタケ、ジコボウ(ハナイグチ)には、今まで食痕を見た事がありません。山菜は、フキとタラノメは食べますが、ハリギリやコシアブラを食べた痕跡はまだ見ていません。彼らにとって有毒なものが含まれているのかもしれません。食べられる物はなにか、母親の真似をして覚えて行くのでしょう。
尾根筋に出ると珊瑚のような紅色のものが一面に落ちています。クマノミズキの紺色の実がついた小枝です。房状の真っ赤な実は、有毒のマムシグサ。ヒヨドリジョウゴ、ヒョウタンボクなど、秋の赤い実は有毒のものが多いので要注意です。もちろんニホンカモシカも食べません。
鞍骨城跡手前の二条の堀切から林道へ下ります。近くには水の平といって、水が染み出る場所があり、イノシシやクマのヌタ場(泥浴場)となっています。20分ほどで林道に下ると、小尾根を回るカーブに黒い物体が見えました。ニホンカモシカです。微動だにせずこちらをジッと見ています。15mほどで、クロだと分かりました。妻女山山系をテリトリートする母子三頭の子供の一頭です。主に妻女山から天城山の東の斜面を縄張りとし、もう一頭の子シロは西側を縄張りとしています。母親は更に奥の方へ移ったようですが、鞍骨城跡一帯を縄張りとしていた父親と見られるオスは、遺骸の目撃情報があることから、数年前に死んだようです。
ゆっくりと10m位まで近づいても反応がありません。こちらをジッと見ています。そして気がつきました。その時、いつもと違いサングラスのゴーグルをしていたことに。相手からはこちらの目が見えないのです。ニホンカモシカは大変好奇心が強いので、なんじゃありゃ!?状態だったのでしょう。何度も出会っているので私の事は覚えているのかもしれません。だから逃げないのでしょうが、やはり様子がおかしいと思っているのでしょうか。
6m位まで近づいて立ち止まりました。これくらいが限界距離。写真を撮ると、なんだあんたか、とでもいうように左へ行きかけました。「ちょっと待って!」と声をかけると止まります。しばらくすると向きを変え、そのままゆっくりと下へ消えて行きました。この山系は放射性物質の汚染がほとんどないと思われるので大丈夫でしょうが、群馬県境のニホンカモシカは、高濃度汚染のものを食べて、人知れず亡くなっていく個体もいるのかも知れません。
林道を進むと、日溜まりにたくさんチョウが舞っていました。イカリモンガという蛾の仲間でした。アワコガネギクで盛んに吸蜜していました。そこへ、ひとまわり大きなチョウが飛来して林道に留まりました。皇帝と呼ばれるルリタテハです。
ルリタテハは、瑠璃立羽と書く様に、群青の翅に瑠璃色の帯があるタテハチョウ科の美しい蝶です。翅の裏は樹皮模様で、木の枝に留まると擬態で見えなくなることもあります。ルリタテハは、成虫で越冬するため、早春から明るい森の縁や林道上を飛び始めます。幼虫の食草はサルトリイバラ科のサルトリイバラ、ユリ科のホトトギス類、ユリ類などで、成虫は腐果や樹液など。夏の樹液バーで、オオムラサキやカブトムシと一緒に樹液を吸うのがよく見られます。英名は、Blue Admral(青い提督)ですが、留まっている時に胸を反らして威張る様に見えるからでしょうか。このリンクの最後のカットを見るとなるほど思えるかもしれません。今日見たチョウは、このまま越冬し春を迎えます。
クマノミズキの紺色の実に続いて見つけたのは、やはり紺色のアオツヅラフジ(青葛藤)の実。「山がつの 垣ほに延える アオツヅラ 人はくれども ことづてもなし」と古今集に詠われたように、その薬効から古くから利用されていたようです。但し名称には異論もあり、カミエビ(神の海老蔓)が本名で、アオツヅラフジは誤りだとする説もあるようです(by牧野富太郎博士)。これは神経痛の薬になるので薬酒に入れます。
半袖でいいような暖かい日が続いたので虫達も活性が高く、まるで夏の林道のようでしたが、まもなく霜が降りて木々は落葉し山は静かになります。
★ネイチャーフォトのスライドショーやムービーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌や森のあんずのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
★新信州郷土料理は、MORI MORI RECIPE(モリモリ レシピ)をご覧ください。山菜・キノコ料理、内臓料理、ブラジル料理、エスニック、中華の込み入った料理などの「男の料理レシピ集」です。特に本格的なアンチョビーの作り方を載せているのは、当サイトだけだと思います。手作りオイルサーディン、手作りソーセージもお薦めです。山菜料理も豊富です。豆料理もたくさんあります。
今回は、久しぶりにフィールドワークを兼ねて鞍骨城跡手前まで辿ってみました。今秋は異常に暖かい日が続き、里山の紅葉は遅れています。そのためか地温がまだ高めで霜もおりていないため、羽虫の発生が凄くブユに刺されまくりです。鞍骨山への途中で、ムラサキシメジのシロへ立ち寄ってみました。数日前の雨でたくさん出ているかと思えば、小さいものが数本あっただけでした。ムキタケとシイタケのポイントへ行くと、何かが齧(かじ)った跡が。ニホンカモシカです。
ニホンカモシカの食べるものは、非常に多岐に渡っていて、草本や木の葉はもちろん、木の芽、樹皮から、冬は枯葉やシダ類も食べます。キノコは、妻女山山系にあるものは、ムキタケとシイタケ以外にはヒラタケにも食痕が見られます。ムラサキシメジとクリタケ、ジコボウ(ハナイグチ)には、今まで食痕を見た事がありません。山菜は、フキとタラノメは食べますが、ハリギリやコシアブラを食べた痕跡はまだ見ていません。彼らにとって有毒なものが含まれているのかもしれません。食べられる物はなにか、母親の真似をして覚えて行くのでしょう。
尾根筋に出ると珊瑚のような紅色のものが一面に落ちています。クマノミズキの紺色の実がついた小枝です。房状の真っ赤な実は、有毒のマムシグサ。ヒヨドリジョウゴ、ヒョウタンボクなど、秋の赤い実は有毒のものが多いので要注意です。もちろんニホンカモシカも食べません。
鞍骨城跡手前の二条の堀切から林道へ下ります。近くには水の平といって、水が染み出る場所があり、イノシシやクマのヌタ場(泥浴場)となっています。20分ほどで林道に下ると、小尾根を回るカーブに黒い物体が見えました。ニホンカモシカです。微動だにせずこちらをジッと見ています。15mほどで、クロだと分かりました。妻女山山系をテリトリートする母子三頭の子供の一頭です。主に妻女山から天城山の東の斜面を縄張りとし、もう一頭の子シロは西側を縄張りとしています。母親は更に奥の方へ移ったようですが、鞍骨城跡一帯を縄張りとしていた父親と見られるオスは、遺骸の目撃情報があることから、数年前に死んだようです。
ゆっくりと10m位まで近づいても反応がありません。こちらをジッと見ています。そして気がつきました。その時、いつもと違いサングラスのゴーグルをしていたことに。相手からはこちらの目が見えないのです。ニホンカモシカは大変好奇心が強いので、なんじゃありゃ!?状態だったのでしょう。何度も出会っているので私の事は覚えているのかもしれません。だから逃げないのでしょうが、やはり様子がおかしいと思っているのでしょうか。
6m位まで近づいて立ち止まりました。これくらいが限界距離。写真を撮ると、なんだあんたか、とでもいうように左へ行きかけました。「ちょっと待って!」と声をかけると止まります。しばらくすると向きを変え、そのままゆっくりと下へ消えて行きました。この山系は放射性物質の汚染がほとんどないと思われるので大丈夫でしょうが、群馬県境のニホンカモシカは、高濃度汚染のものを食べて、人知れず亡くなっていく個体もいるのかも知れません。
林道を進むと、日溜まりにたくさんチョウが舞っていました。イカリモンガという蛾の仲間でした。アワコガネギクで盛んに吸蜜していました。そこへ、ひとまわり大きなチョウが飛来して林道に留まりました。皇帝と呼ばれるルリタテハです。
ルリタテハは、瑠璃立羽と書く様に、群青の翅に瑠璃色の帯があるタテハチョウ科の美しい蝶です。翅の裏は樹皮模様で、木の枝に留まると擬態で見えなくなることもあります。ルリタテハは、成虫で越冬するため、早春から明るい森の縁や林道上を飛び始めます。幼虫の食草はサルトリイバラ科のサルトリイバラ、ユリ科のホトトギス類、ユリ類などで、成虫は腐果や樹液など。夏の樹液バーで、オオムラサキやカブトムシと一緒に樹液を吸うのがよく見られます。英名は、Blue Admral(青い提督)ですが、留まっている時に胸を反らして威張る様に見えるからでしょうか。このリンクの最後のカットを見るとなるほど思えるかもしれません。今日見たチョウは、このまま越冬し春を迎えます。
クマノミズキの紺色の実に続いて見つけたのは、やはり紺色のアオツヅラフジ(青葛藤)の実。「山がつの 垣ほに延える アオツヅラ 人はくれども ことづてもなし」と古今集に詠われたように、その薬効から古くから利用されていたようです。但し名称には異論もあり、カミエビ(神の海老蔓)が本名で、アオツヅラフジは誤りだとする説もあるようです(by牧野富太郎博士)。これは神経痛の薬になるので薬酒に入れます。
半袖でいいような暖かい日が続いたので虫達も活性が高く、まるで夏の林道のようでしたが、まもなく霜が降りて木々は落葉し山は静かになります。
★ネイチャーフォトのスライドショーやムービーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌や森のあんずのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
★新信州郷土料理は、MORI MORI RECIPE(モリモリ レシピ)をご覧ください。山菜・キノコ料理、内臓料理、ブラジル料理、エスニック、中華の込み入った料理などの「男の料理レシピ集」です。特に本格的なアンチョビーの作り方を載せているのは、当サイトだけだと思います。手作りオイルサーディン、手作りソーセージもお薦めです。山菜料理も豊富です。豆料理もたくさんあります。