原油の価格がまた急騰した。
本日付けの読売新聞は概略次のように報じている。
・21日のニューヨーク商業取引所の原油先物相場は、供給不足への懸念から、投機資金の流入で急騰した。
・国際的な指標となるテキサス産軽質油の7月渡し価格は、同日夜の時間外電子取引で1バレル=135ドル台を突破して、135・04ドルをつけて史上最高値を更新した。
・また、OPECが「市場には十分に原油が供給されている」との声明を発表し、増産に消極的な姿勢を示したことも供給不足に対する懸念をあおった。
・また、米証券会社が今年後半の原油価格を140ドル台とする予想を発表し、著名投資家が年内に150ドルをつける可能性があるとの見方を示し、投機資金の流入を誘っている。
原油価格の上昇の原因は当初は需要と供給のアンバランスと考えられ、OPECに批判が集中したが最近は投機資金の流入がその主原因とされているようだ。
戦後は投機資金は時々世界経済に大きな影響を及ぼした。
その一つはアジア通貨危機であり、サブプライムローンであり今回の原油と食料品価格の異常上昇だ。
[暴走する投機資金]
アジア通貨危機
Wikipedia によれば、
・アジアのほとんどの国は固定相場制の中で金利を高めに誘導して利ざやを求める外国資本の流入を促し、資本を蓄積する一方で、輸出需要で経済成長するという成長システムを採用していた。
・しかし、1995年以降アメリカの長期景気回復による経常収支赤字下の経済政策として「強いドル政策」が採用され、ドルが高めに推移するようになった。
・これに連動して、アジア各国の通貨が上昇しためアジア諸国の輸出は伸び悩み、これらの国々に資本を投じていた投資家らは経済成長の持続可能性に疑問を抱く様になった。
・そこに目をつけたのがヘッジファンドだ。
・ヘッジファンドは通貨の空売りを仕掛け、買い支える事が出来ないアジア各国の通貨は変動相場制を導入せざるを得ない状況に追い込まれ、通貨価格が急激に下落した。
・そのためタイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどのASEAN諸国や香港、韓国などが猛烈な経済的の打撃を受けた。
・マレーシア政府は、通貨危機に資産のコントロールを始め次々と緊急対策を打ち出し、自由主義経済を信奉する米国からの批判と圧力を受けたが、遂にはヘッジファンドのお膝元の米国内でさえアジア経済への不安から、ダウジョーンズの工業は554ポイント(7.2%)の株価下落を記録した。ニューヨーク証券取引所は短い間ながら取引を停止した。通貨危機は消費者と信頼性の低下につながった。
サブプイラムローンへの投機
・米国の住宅バブルに眼を付けた投機資金は、日本から実質的な金利ゼロからの資金を調達して、米国のサブプライムローンに投資した。
これが言う所の 円キャリー取引 (円資金を借入れて相場商品や証券など一般には金融資産を保有し、一定期間後に資産を売却しその売却対価によって、資金を付利して返済し、差額により利益を得ようとすること)だ。
石油、食料品への投機
・住宅バブルが破裂して投機の対象を無くした、投機資金は石油資源の枯渇問題と急激な需要の上昇、石油不足に対応するための食糧品からのバイオ燃料の原料化、オーストラリアなどの干ばつによる食糧危機、それを危惧した食糧生産国の食糧の囲い込みなどに着目して石油、食料品への投機を集中させている。
しかもサブプライムローンへの破裂で米国経済悪化で下げられた低金利がこの投機に拍車を掛けているそうだ。
そしてこの産業、生活の基幹となる品物の価格の急騰は世界中に大きな影響を及ぼしている。
特に購買力の乏しい開発途上国では、人道問題までに発展しかかっている。
[自由主義市場経済の見直し]
ヘッジファンドが猛威を振るった時代には何らかの規制が必要だとの声が各国から上がったが、自由主義経済を信奉する米国の反対により沙汰止みになった。
報道によれば今回の原油価格暴騰に関して、米国でも投機資金へのなんらかの規制の必要性が問題になっているが、それが景気の急速の悪化に繋がりはしないかという慎重意見が多いそうだ。
私は素人考えだが、次のように完全に市場の成り行きに任せるのでなく、何らかの形での制限を加えるべきだと思う。
先物取引
今回問題となっている、先物取引は価格変動の影響を避けるための手段(リスクヘッジ)として利用されるのが本来の目的だ。
詰まり目的の品物を利用するとき、例えば、実際に購入する価格の価格が上がっても先物取引で清算してその分の利益で相殺する考え方だ。
それがその品物の大多数の利用者が投機資金による価格の異常上昇で困らされるのは本来の先物取引の目的とは全く異なっている。
従ってこのような事態にならぬように、そして本来の目的を達成するための何らかの制限が必要だと思う。
その方法は株式のように値幅や上限の制限とか、実物取引の制限、またはその制限をちらつかせるなど多くの方法がある筈だ。
株式取引
株式市場からの資金調達は勿論必要だが、次のようなことも考えられるのではないか。、
・企業の運営資金は今のような超低金利時代に何故株式市場に頼らねばならないのか。
・投機資金のようなあぶくの資金に頼る株式市場はそれでいくら平均株価が上がっても健全と言えるだろうか。
・一番大切な顧客は株式を公開して、新規に新しい分野に参入したりその規模を拡大しようとする企業と、株式の配当を期待してそれを購入する個人または企業ではないか。
・逆に一番困るのは投機の対象として不当に株式の値段を吊り上げ、売り抜ける人達や企業だろう。
それで株式市場の本来の目的を達成するためには、平均株価が下がっても、実質的な影響が出ないような、大切な顧客を優遇し、困った顧客を締め出すような施策が必要だと思う。
日本政府は国内のこれらの問題を解決するとともに、G8などで投機資金の暴走を防ぐための提案をして貰いたいものだ。
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