日本年金機構についての最終報告書が6月30日に提出された。
当日の夜のテレビ朝日の「報道ステーション」では「また社保庁改革案も骨抜きだ」と騒いでいた。
彼らの言う事も一理はあるが、下記のように現実問題を考えると一概に骨抜きで片づけられる問題でないのは事実だ。
これに関しての各紙の報道の中で最も厳しい批判記事を書いた産経ニュースの記事が指摘した問題点を記す。
・日本年金機構の正規職員数を現在よりも約2200人削減し、懲戒処分歴のある社会保険庁職員は正規採用しないなどしているが、定年退職者などを除き(*注1)実質的にリストラされる社保庁職員は約900人。正規職員の9割を社保庁移行組が占めることになり、厚生労働省案をベースに報告書をまとめた再生会議の手法の限界も浮き彫りとなった。
・組織再生には外部の血の導入が不可欠だが、外部採用数は全正規職員数1万880人のうち1000人。現在、民間から社保庁に任期付きで派遣されている職員の一部も外部枠採用の見通しで、厳密にはさらに少なく、再生イメージとはほど遠い内容となった
・民主党の長妻昭政調会長代理は「有期雇用などに身分が変わっても、同じ上司と部下のままならば、社保庁の組織文化は何も変わらない」、厚労省幹部を本省に戻さない「ノーリターンルール」についても「厚労省の出世負け組が骨を埋めるのであれば全く意味がない」と批判した。
・今後は、厚労相が任命する設立委員が、職員採用や有期雇用職員の退職金基準などを詳細を詰めるが、さらに中身が甘くならないよう、引き続き国民の厳しいチェックが必要だ。
「報道ステーション」によれば肝心の設立委員も改革担当の渡辺喜美さんは民間からの公募を主張していたのを、福田さんが自分が決めると言って退けたこと、実際の担当の町村官房長官は記者団の質問に「適任者を選ぶ」の返答を繰り返すなど、何だか雲行きが怪しいようだ。
[私が考える問題点]
札付きの職員も馘に出来ない現実
・馘を切れない札付きの職員も居なければ仕事の引き継ぎが出来ないし、またその人達の受け入れ先がないことだ。
特に縦割りの政府の人事組織では、他の省が優れた人ならとにかく彼らを受け入れる筈がなく、受け入れ先は厚生労働省だけに限られることだ。
また今までの厄介な仕事に加えて、新たにコンピューターの入力ミスの修正と正規の仕事以外の仕事が増えるばかり。
升添さんの姿が見えない
・札付きの職員は絶対に採用しないと言っていた升添さんが、一部から批判のある答申案が出た今になって顔をみせいないが、あれだけ威勢の良い発言を繰り返してきた彼が今どのような考えを持っているか聞きたいものだ。(7月2日午前現在)
民主党の対応
・それと年金機構問題問題を更に厄介にするのは、今回の改革案の対象になる職員は民主党の大きな支持母体である官公労に属していることだ。(*注2参照)
与党は公務員改革制度法案という総論的なテーマでは民主党の支援を得ても、今回のことで民主党がどう廻るのか判らない。
民主党も世論と今後とも協力を得たい支持母体の狭間に立って難しい選択を迫られるだろう。
職員のやる気と一体感
・正規職員、期間雇用の職員、企業から来た派遣社員、機構が直接雇用する派遣社員の混合組織で、政府の期待している、彼らのモラル、モチベーションをどのようにして上げたり、一体感を醸成できるか。
[私の提案]
経団連へ
・厚生年金保険料の半分は企業が持っているので、経団連は年金問題については大きな発言権を持っている筈だ。
それで経団連は企業の拠出した年金を護るために、
傘下企業から優秀な人材を派遣すること。
年金機構の重要なポストである経理部門などの長の地位を要求すること。
民間企業が合弁するとき、金の全てが通る派遣先の経理部の長を派遣側の人が占めるのが良くあることだ。
政府へ
・上記の提案は年金機構の運営の成功の成否にも関わっているので、是非実施すること。
・民間から派遣する人には一般の職員ばかりでなく管理部門の人を多くいれること。(*注3)
・民間企業で行われている自主管理・改善活動を取り入れて、機構の運営の改善するとともに傘下の職員のモチベーションや一体感のを上げる事。
・設立委員は町村さんの言う様に、厚生労働省やその族議員の圧力に負けない改革意欲のある「本当に適任の人」を選ぶこと、この選定に失敗すればまた自民党の支持率が落ちるのは間違いない。
升添さんへ
・自分の信念を年金機構改革でも通す事、そのためには自分の職を賭す覚悟を見せること
もし国民に人気のある升添さんが辞たら、ただでさえ支持率の低下に苦しむ自民党に取って死命を制することになりかねないので、彼の意見は無視できない筈だ。
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*注1:社保庁の発表では、19年度の自己都合退職者は過去最多の702人に達したそうだが、その中には今の社保庁に飽き足らない人、逆に言えば将来の年金機構に必要な意欲のある人達が抜ける影響は大きいと思う。
*注2:社保庁改革では民主党は現存の社保庁職員の継続使用を前提とする、社保庁を解体して業務を国税庁に統合した上「歳入庁」を内閣府の外局に設置する提案をしていた。
*注3:私たちは問題のある政府関係団体の改革のために、同団体に送り込まれた優秀な民間企業のトップクラスの人達が、厚いドアの総裁室に閉じこまれ、情報不足の中で何も出来なかった実例をあまりにも多く見てきた。
どんな優秀な人でも手足がなければなにも出来ないのだ。