燃料価格の急騰がもたらす、日本漁業の窮状を訴えるため、15日、漁協が全国一斉に休漁した。
これに対して17日の読売社説は概略次のように述べている。
漁船の燃料となる重油価格は、この5年で約3倍にになり、操業コストに占める燃料費の比率は3割を超える。「省エネ努力ももはや限界だ」と主張し、政府に対して、燃料費の補てんなどの直接的な補助を求めている。
だが、原油高に苦しんでいるのは漁師だけではない。農家や運輸業界も同様だ。厳しい財政事情を考えれば、税金のばらまきにつながってしまう燃料費への直接補助は困難だろう。
複数の漁船が輪番で計画的に出漁する場合、残った船への休漁補償などには、国の支援が検討されてもいい。その場合でも、漁業の構造改革につなげていくことを前提とすべきだ。
日本の漁業界も、国の支援を求める根拠として、漁業の体質をどう強化していくのか、青写真を示す必要がある。
一斉休漁は、流通業者や消費者も、魚消費のあり方を見直す契機になる。特に、流通システムにはメスを入れなければならない。
魚の価格はセリで決まり、燃料費の上昇分を転嫁しにくい。しかも、流通業者は、売れ残って捨てる魚のコストまで、流通経費に上乗せしている。
100円の魚が売れても、60円はスーパーの取り分で、漁師の収入は24円だけだ。経費を差し引けば、もうけはいくらも出ない。
これでは燃料費が高騰すれば、たちまち赤字になるのも無理はない。流通の効率化や計画的な仕入れを進めることで、漁師の取り分を増やす努力が必要だ。
[私の疑問](*注1)
・なぜ窮状を流通業者に訴えないのか
先ず漁協の全国ストのニュースを聞いて直ぐ違和感を持ったのは、漁協の訴える先が政府とは見当違いではないかと思ったからだ。(*注2)
一つには読売の社説が指摘したように、燃料の高騰の影響を受けているのは漁業だけでないので、赤字財政に悩む政府が漁業だけを特別扱いにする訳に行かないことだ。(事実、政府はその方向に動いている。)
もう一つは、市場経済で動いている日本だから、燃料高騰で赤字になるならその売り手先と交渉すれば良いのに何故しないのか、もし交渉が旨く行かなかったのなら、デモは政府だけでなく何故、大手流通業界にもデモらないのかと言う事だ。
・独特の海産物の流通システム
然しその点について今度のストに関しての、マスコミの解説で漁業独特の漁業者と流通業者のやり方と、売り物が魚介類と言う完全な「なま物」であることに問題があることに気づかされた。
普通の売り買いは互いの担当者が対等の立場(といっても普通は売る方が下手に出ることが多いが)売買価格を決めるのが普通だ。
然し魚介類の値段はセリで仲買人や小売業者によって決まる。
漁業者はその市場に品物を持ち込むだけて、「燃料の高騰でそんな値段では赤字になる」など自分の意志を反映できない。
だからそれが気に入らなければ、いきなり全国ストとなる。(なんてどう考えてもおかしい。)
この状況は農産物も同じだが、最近は農業者が自分の店を持ったり、通信販売などで直接消費者と接触することで、途中のマージンを省いて生き残りを図っているがなま物を扱う漁業ではそれも難しいのかも知れない。
もう一つは圧倒的な購買力を持つ大手スーパーの力だ。
彼らから見れば地方の漁協などは弱小業者だ。
だから「100円の魚が売れても、60円はスーパーの取り分で、漁師の収入は24円だけ」と言う様な無茶な商談が成立することになる。
・考えてみればおかしなスーパーの魚介類の売り場
普通の市場の魚屋さんでは品物が揃っているのは朝の内だけで、夕方になると殆ど棚はがらがらになっているのに比して、スーパーでは午後5時頃に行っても、魚介類もそれを使った寿司なども朝ほどはないにしても、ある程度並んでいる。
その日売れ残ったものはどうしているのだろうか。
新聞によればその処分費用もスーパーの取り分の60円の中に入れているそうだが、そんな費用も漁業者の犠牲で処理されているのだろうか。
第一に今のエコ時代に棚を常時埋めるために、余計に仕入れ売れ残りを捨てるなど通用するのだろうか。
そんなことで、ただでさえ枯渇しかかっている漁業資源を浪費して良いのだろうか。
それとも「あのスーパーの魚は古いから行かない」と、家内が良く言うように売れ残りをまた冷凍し、翌日また解凍して棚に並べるのだろうか。
勿論、何時行っても魚介類の揃っているスーパーは、消費者、特に兼業主婦にとってはありがたいことだが、消費者側も考える余地があるような気がするのだが。
・漁業関係者の経営感覚の欠如?
漁業の構造改革、漁業関係者を苦しめている魚介類の流通システムの改善、海洋資源の保全、豊漁貧乏の問題、漁船数の適正化、一部で行われ居る魚介類の養殖の拡大などなど、今までの取れるだけ取る、後は他人任せからの脱却を図るなど、漁業関係の経営改善が何故進まないのだろうか。
彼らが経営感覚を持っていたら、今度の全国ストで燃料価格上昇の補てんよりも、政府に流通システムの改善を訴えると思うのだが。
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*注1:私は経済や農村問題について永い間関心を持っており、それなりの意見を持っていましたので、素人の癖に厚かましく「私の意見」を書いてきました。
正直に言って、今度の漁協の一斉ストで始めて漁業と流通の問題を知りました。
そんな私が偉そうに[私の意見]を書くのも気が引けるので[私の疑問]の点を並べてみました。
それで多分認識違いや勘違いも多いと思いますので、どうぞご遠慮なくご指摘、ご指導下さるようお願い致します。
*注2:政府の責任
洞爺湖サミットでアフリカ諸国などが、諸悪の根源である原油の高騰をもたらしている投機資金の規制を求め、日本も内心そう思って居たはずで、しかもEUなどもそれに賛成していることを知っていた。
然し、福田さんや政府関係者は、投機資金規制に腰の引けた米国に遠慮して、サミットでこの件を一言も口に出さなかった。
漁協はその政府の責任を追求すれば、国民に漁協の立場をより深く理解して貰えたと思うのだが。